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あのまま考えていても埒があかないと食事をすると移動することになった。
クロッチェが持っていた魔王の力の欠片は別のところで取ってきたものでこの森にあったのとは違うからこの森に変化はなかったのでは? とクロッチェが言ってきてなるほど一理あるなと思った。
「あれ? でも、あたしが見つけた魔王の力の欠片を持って行った後って何かあったの?」
あたしが見つけたのはあの洞窟以外でも港だったり玲琴様のお兄さんのところから渡されたのだって何かしら変化があったんじゃないの?
「ああ、うん。母さんの実家は来年から観光地化するんだって」
「観光地?」
「うん。観光地」
一体何があったのか。
トールはそれ以上言わないし、シルシェさんたちも黙っているので分からない。
「気になるならまた来ればいいよ」
また行くのかぁ。玲琴様に騙し討ちのように魔王の力の欠片のところに連れてかれたけど、もう勇者たちに見つかってしまったからいつまでも玲琴様に腹を立てていても仕方ない。
「そうね、いつか行くわ」
「うん。その時には僕と色んな場所に観光に行こ」
「そうね。おいしい物たくさん奢ってちょうだい」
◇◇◇◇◇◇
やっぱり勇者が居ると全然違うわ。わんさかと出てくる魔獣の一太刀で倒すから騎士もシルシェさんもすることなくて暇そう。
唯一クロッチェだけが辺りを警戒してあっちこっちと視線をさ迷わせたり、魔獣が来るって教えてくれるから忙しそうだけど。
クミンさんの薬を飲んでから一週間ぐらい経つ。カナリアは起きたり眠ったりを繰り返しているけど、起きている時はボーッとしていて話になんない。
というか、モンスパルの聞き方がまどろっこしくてはっきり魔王と関係あるのか聞け! 何があなたの生まれについて他に知っている人は居ませんか? だ! それよりも聞くことは山程あるでしょうが!
今度カナリアが起きたらあたしが聞きに行こうかと思ったけどあたしはカナリアに近づいちゃ駄目なんだそう。
聖女とやらに何かあったらまずいんだそう。
そのわりにはその聖女とやらに逃げられたり、転んだことにも気付かずに走って行ってしまったけど?
それについては? と意地悪く聞いてやろうかとも思ったけど、それだとまたアマンダと喧嘩になりそうだから大人しくしていることにしたけど、聞く人を変えるか聞き方は変えた方がいいと思うのあたし。
それ以外は特に進展もなくただ森の中をさ迷っているだけ。
こんなに長く迷うことになるんだったら魔族が多い地に向かった方がよかったんじゃない? とは思うものの魔王の力の欠片があるんだったらこっち優先でよかったのかも?
どっちなんだろ? でも、ふかふかのベッドにあったかいお風呂が恋しくなって来ちゃったわ。
「あ」
「どうかしたの?」
そんなことを考えながら歩いていると見覚えのある生き物を発見する。
「あれってあたしのことを洞窟に飛ばした魔獣じゃない?」
「どこですか?」
トールに聞かれたから答えていると勇者が来た。地獄耳か。
まあ、いいやと思ってそのまま指差して教えてあげると勇者はその魔獣のところに行ってしまう。
「倒すのかな?」
「そうなんじゃない?」
「あの魔獣嫌いー」
「おらも」
「僕も無理」
倒すのかどうか話していると妖精たちも話に入ってきた。
どうやらあの魔獣は森に入った生き物に対してあたしにしたみたいに洞窟に飛ばして、あの龍みたいな魔獣に殺らせた後に残った肉とかを食べるっていうまどろっこしいやり方をして暮らしているとかで妖精たちからも嫌われているそう。
妖精たちの仲間もあの洞窟に誘き寄せられて戻って来なかった子も居るんだとかで思わずクロッチェと無事でよかったとお互いの身の安全に喜びあった。
「捕まえて来ました」
「えっ殺さないの?!」
ぐったりとしているリスみたいな魔獣を猫みたいに摘まんで戻ってきた勇者にびっくりして思わず勇者の顔を見る。相変わらず整った顔にビンタしたくなったけど今はその時じゃない落ち着けあたし。
「こいつの転移魔法を解析することが出来たら技術の進歩になる可能性もありますので」
すでに移動用の魔法陣があるのに? 不思議に思ったけど勇者と話すのが面倒臭くなってそれ以上は聞かなかった。
「でもー、それ森中にいっぱいいるよー」
「なら後で捕まえてもいいんじゃないの?!」
起き出してまたあの洞窟に飛ばされるとかされたくないわよ! 思わずトールの背中に隠れてあっちに行けと睨み付ける。
「それならばあたくしがこの魔獣の魔力を封じますわ」
「そんなこと出来るの?」
「あたくしが優秀だから出来るんですわよ!」
そんな特技があるのかとびっくりしてアマンダを見ればドヤ顔されたけどさっさと魔力を封じて安心させて欲しい。




