104
「ん?」
「どうかしたか?」
「あっちで何か聞こえなかった?」
空耳? それにしてははっきりと聞こえていたけど。
「いや?」
「じゃあ気のせいだったのかな」
「どうかいたしましたの?」
ノヴァの方が耳がいいみたいだから聞こえてないのだったら空耳の可能性の方が高いんじゃと思ったのにアマンダが声を掛けてきた。
「いや、リュリュが何か聞こえたって言うんだ」
「何か聞こえたのですか? あたくしには何も聞こえませんでしたけど、セルジオ、モンスパル」
「あ、あの空耳だったかもしんないし!」
「いいえ、この森にはあたくしたち以外にも取り込まれた人たちが居ますの。可能でしたらその方たちも助けてあげるべきですわ」
何か勇者の仲間っぽい発言をしているんだけど。アマンダの言葉に感心しているとあることを思い出した。
「あ、じゃあ、これって森に取り込まれた人のだったんだ」
がさごそと鞄の中から片方だけの靴を取り出す。
「何ですのそれ」
「ノヴァに会う前に森の中で見つけたの」
「何でそれ言わなかったんだ嬢ちゃん」
「忘れてた」
だって色々あったんだから仕方ないでしょ。
騎士とアマンダが呆れてるけど、今思い出したんだからいいじゃない。
「どの辺だった? って無理だな」
「無理ですわね」
「覚えてないわよ。それにこれがあった辺りは他に何もなかったわ」
ムッとしかけたけど、ここは迷いの森だから二人共あたしのことを馬鹿にしてるつもりはないんだって自分に言い聞かせてから返事をする。
「それじゃあ、今は聖女の嬢ちゃんが聞こえたって方だな。どっちだ」
「えっと、多分あっちの方」
あんまり自信はないけど、と何かしら聞こえてきた方を指差す。
「では、あっちに行きましょう」
「いいの?」
「どうせ手がかりはないのですもの。どちらへ行ったって同じですわ」
「なるほど」
カナリアも薬のお陰で落ち着いているように見えるしいいか。
本当はどこかで休ませてあげたいけどね。
何か聞こえた方に向かって居るとまた何か聞こえた。今度はみんなにも聞こえたらしくて立ち止まった。
「今の」
「あたくしにも聞こえましたわ」
「女の声だったよな?」
「クミンさん?」
「クミンはもっと低い」
でも、悲鳴とかなら高くなるんじゃない? とは思うものの、ノヴァはあたしよりもクミンさんと長く居たから分かるのかな?
「じゃあ、誰?」
「知らねえよ」
「とりあえず行きましょう」
「そうね」
魔獣に襲われている村人だといけないから走って行きたいと言われて走っているんだけどみんな速すぎる。モンスパルはカナリアを背負っているのにみんなに追い付けるとか体力凄すぎる。
あたしだって村に居た頃と比べたらかなり体力がついたと思っていたのに離されないように追いかけるのが必死よ。
「あっ……いったぁ」
前を行くみんなの背中を追いかけるのに必死で足元を見て居なかったせいで転んでしまった。
慌てて起き上がったがすでに離され気味だったのに今転んでしまったせいで完全に離れてしまったのか誰の姿も見えなくなってしまった。




