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「開けてくれ」
「怪我すんなよ」
「お前もな」
騎士とノヴァのやり取りを聞きながら一ヵ所だけ力を抜くとあっという間に枯れて行く。魔獣はそこを狙ったかのようにバキバキと音を立てて攻撃してきている。
これ先に攻撃しないとこっち側に魔獣がなだれ込んで来ちゃうんじゃないの? って思うが誰も動こうとしないので大丈夫か心配になってくる。
魔獣にやられて終わるとかあたし嫌よ。念のために戦う三人の後ろであたしたちとの間に種を植えておく。
「あれ? 神官さんは戦わないの?」
「……私は戦闘職ではありませんので」
勇者の仲間なんだからてっきり戦えると思っていたから。あ、でも、トールも勇者の仲間になったのに回復職だもんね。
「じゃあ、神官さんも回復出来るの?」
「モンスパルです……私は出来ません」
「あ、そうなの?」
じゃあ、この人何で一緒に行動してるんだろ? 補助とか?
「モンスパルはこの一行のまとめ役ですわ」
「えっ?!」
まとめ役驚いているけどこいつら本当に大丈夫なの?
「行くぞ」
「おう!」
そうこうしている内にノヴァと騎士が戦い始めた。
入り口が狭いからか魔獣たちが団子になって詰まっちゃってるから二人共やりやすいのかばっさばっさと切りまくっている。詰まらないように定期的に浄化して奥の魔獣が来やすいように、時々休憩のために下がってはって途中から単純作業と化したが中々減らない。
「本当に何もしてないの?」
「心当たりは全くありません」
じゃあ、何でこんなに襲われているのよ。
「それか彼らにとってここが大事な地とかなんじゃありませんの?」
「大事な地?」
人間とかで言う教会とか聖域みたいなもの?
「じゃあ、移動したら見逃してくれる?」
「分かりませんけど、その可能性はありますわ」
アマンダ凄いな魔法使いながらこっちの会話にも入れるなんて。
「あ、じゃあ、あの魔法陣は?!」
「あれは……使ってもいいのですけれど、勇者様以外にもトールたちもこの森に置いて行くことになりますわよ」
「それはやめよう」
みんなのところに魔獣が殺到するのもよくないし、勇者はどうでもいいけど、怪我人を置いてくのはもっとダメだ。
「でも、森には入り直せるでしょ?」
「それまでにやられてしまったらどうするんですの?!」
「シルシェとクミンは倒せねえと思うし、勇者はトール様と居るんだろ? しばらくはもつんじゃないのか?」
ノヴァも会話に加わってくる。魔獣はいいのかと思えば「休憩」とのこと。
「ですが、不確定要素はあまり持ち込みたくありませんわ」
その後ノヴァとあれこれ宥めすかしてようやく魔法陣を使わせることに成功したのは日がどっぷりと暮れてからだった。だけど、魔法陣は使えなかった。
「何で使えないのよ!!」
「そういう土地なんでしょ。あなたの異能でしたって使いにくいとおっしゃっていたじゃありませんの」
「そうだけど……」
異能と魔法は違うから通用するかなって思ったんだもの。
「だったら持って早くに言って欲しかったわ」
「あたくしも確証はありませんでしたもの。通常の魔法も少し威力が弱くていつも以上に魔力を使う気はしていましたけれど、魔法陣はまた別ですので」
「それほぼ気付いていますよね」
モンスパルさんがツッコミ入れている。
魔法陣で移動も出来ないのなら確かに出られないわね。
迷いの森から出られないんだったら最後どうなるんだろ。そう思ったけど、あんまり考えたくなくて思考を中断する。
「ここをまた突っ切ってくってのは?」
「技安全に囲まれた場所を捨てろと言うのですの?!」
「俺ももう一回あの中に飛び込むのはごめんだね」
アマンダとノヴァの二人に反対されてモンスパルさんには病人も居るんだしと言われて諦める他なかった。
「聖女の嬢ちゃんの異能がまだ余裕があるなら俺も移動はするべきじゃないと思う」
騎士の人まで反対だった。全員が反対なら諦めるか。
でっかいため息を吐いて保存食を取り出す。
「どんだけ食べ物あるんだ?」
「ちょっと、見ないでよ」
ノヴァがあたしの鞄の中身を見ようとして来るのでぐいぐいとノヴァを押しのける。
「あたくしも気になりましたわ。街であたくしたちが見張っていますから買い物もあまりさせていませんし」
「乙女の秘密よ! それより話してる暇あるのなら魔獣と戦ってよ!」
「あたくしまだ魔力の回復中でしてよ。魔法陣に魔力を注いだので余計に疲れていますの」
「じゃあ、休憩してたらいいじゃないの!」
クマのことはもうカナリアが話したとかじゃないの? それとも客に対しての守秘義務でもあるの?
いや、それだったらあたしのことこいつらにチクってないはずだからそれはないんだろうけど……。
鞄を守りつつもう食糧出さないわよ! と脅してクマの存在は守り通した。




