100
「何があったんですか?」
異能を使いながらカナリアを抱き止めている神官に向かって声を掛ける。
この神官血濡れだけど大丈夫? かと思ったらこれは魔獣の返り血なんだって。魔獣の返り血だとしても心臓に悪いので着替えて欲しいけど今そんなこと言っている場合じゃないわよね。
「カナリアが熱を出したまま意識が戻らないんです。薬草を出してください」
熱?
カナリアの額に触れると確かにかなり熱い。
熱さましの薬と他に使えそうな薬はどれだ。
「他に症状はありましたか?」
「よく分からなくて、この森に入ってしばらくしたら具合が悪そうにしていたので休むように言ったんですが……その後あの魔獣たちに襲われて」
なるほど。全く分からないことだけ分かった。
熱さましの薬を水で溶いて渡す。
「とりあえずこれを飲ませてください」
熱を下げなくちゃ。脇と首筋に濡らした布を押し当てる。後は──
ガンッ
「っ!」
あたしが柵のように生やした木に何かが当たってびっくりする。一応アマンダたちの様子が見られるようにと一ヵ所だけ開けていたけど、さっきよりアマンダの位置下がって来てない?
大丈夫なの?
「聖女様薬は飲ませましたよ。次は」
「えっ、あ、すみません」
外に気を取られ過ぎていた。
今はカナリアの様子を見るのが先だ。
「起きてカナリア」
頬をぺちぺちと叩いてみるが反応はなし。
ただ寝ちゃってるだけならいいんだけど、目を覚ますだけの体力が残ってなかったら問題だ。
この世界で看護師のような仕事はしたけど、一月かそこらじゃ大して身についてないし、あたしが相手にしていたのは怪我人ばっかりだ。
元々植物を育てるために薬草の知識もあったけど、それだって住んでいたところから離れたらそんなに役に立つこともあるが、植生がだいぶ違ってくるからあたしが知ってる知識が役に立つかは分からない。
こんな時にトールが居てくれたらと思うのに居ないのは残念だけどあたしがやれることはやろう。
かなりを毛布でくるみ神官の人には血が凄いから下がってもらっていると段々とあたしの柵に何かが当たる頻度が増している。
「何これ」
「アマンダ!」
「申し訳ありませんわ魔力が尽きてしまいましたの……」
ぐったりとしたアマンダを連れてセルジオとノヴァまでもが柵の中に現れたので慌てて最後の一ヵ所にも木を生やした。
「わ、わりぃ……」
「俺たちも疲れた……」
三人共戦ってたから仕方ないけど、あたしの異能だって維持するのこの森じゃ大変だって言うのに。
文句を言いたいが、三人共戦ってたから仕方ないと諦めて鞄から水と食糧を取り出して三人に渡す。
「お、わりぃな嬢ちゃん。ついでに酒はないか?」
「ないわよ」
前世の影響か今世では成人しているけどなんとなくハタチまでは飲む気になれないから買ってないのよ。
というか、こんな時にお酒飲んでいる暇ってあるの? 疑問に思ったけど話題は別に移ったし、あんまり興味なかったから聞かなかった。
「カナリアはどうだ?」
「今熱さまし飲ませたわ」
「どうしたんだ?」
「熱が高いんですの」
とりあえず全員血まみれだから離れてくれないかな?
カナリアが起きた時にびっくりすると思うしあたしも怖いから。




