9話 異世界転移
連日投稿。一日で書いたから誤字脱字やおかしな部分あるかも。あったら報告して欲しいでーす!ほげほげぎえぴああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
マナ研究を開始してから一か月経った。その間に誰かに襲われるなんてこともなく、私の中にある恐怖も次第に薄れていった。でも、昼食の時にはレストランにはいかず、「死神」に弁当を作ってもらってはそれを食べていた。最初に会った時は仲良くなれるとは到底思えなかったが、今となってはそれが当たり前になっていた。研究の方も進み、折り返し地点へと来ていた。
「...てことでこれが、私の考えたマナ増幅器。マナジェネレーターよ」
そう言いながら、私はマナジェネレーターの設計図を広げる。
「へぇ...これが...」
設計図を見ながらおじさんが感心したようにつぶやく。我も忘れて見入っているようだ。
「そう。まずここに栄養補給するための入口があって、その栄養素を人工知能によってマナに変える。それがこのマナジェネレーターの簡単な仕組みよ」
これまでの研究で分かったことは、マナは栄養素によって生まれているということ。正確にはまだ確証していないのだが、生物は皆、マナを持っており時間が経つにつれマナが回復した。どうしてマナが回復したのかをいくつか説をたて、実験してみたところ、栄養を補給していない生物ほど、マナの回復が遅いことが判明した。これにより、栄養補給と同時にマナも回復しているのではと説をたて、モルモットを餓死させてみたところ、死亡以降マナが増えていないことが確認された。
次に、栄養素でマナを増やせるのだったら、栄養と引き換えにマナも増やせたりできるのだろうかと軽く実験してみたところ、マナクリスタルを所持した状態でマナを増やすようにイメージした場合可能ということが判明した。これは単に興味本位で軽く実験してみたため、成功した時はすごくお腹が減り、力が抜けていく感じがしてびっくりしたものだ。
この二つの結果を踏まえ、マナジェネレーターはマナの元である栄養素を補給し、人工知能によって栄養素からマナへ変更するようイメージ。そして、内臓マナクリスタルにマナを貯蔵する。これがマナジェネレーターの概要である。
もし、この実験が成功した場合、マナは安定的に生成することが可能であり新たなるエネルギーとしての利用も夢ではなくなる。そうなれば、恐らく世界に革新が起こるだろう。
「これはすごいね。早速制作に取り掛かるとしよう。僕は材料の調達をするよ」
「お願い。私はマナクリスタルの作成と、人工知能のプログラムをするわ」
マナクリスタルに関しても、製造方法が確証された。マナクリスタルとはマナが結晶化したものである。確認した方法としては、マナクリスタルが生成される方法を考え、手当たり次第に実験してみたのである。最初は、何かの鉱石がマナによって変質したのだろうかとも思ったが、マナクリスタルでマナを結晶化させるイメージを浮かべると、案外簡単にできたのである。ただしかなり小さいもので、私たちが普段使っているマナクリスタルよりも小さいのである。それ以上のマナクリスタルを作ろうとするとそれ相応のマナが必要なのである。だから多少栄養素を犠牲にして、マナクリスタルを作る必要があるのだが...
「ふう、いつもより大食いになりそうね...」
さっそくマナクリスタルを持ち、実行しようとすると...
『マナクリスタルを作るのか?』
「ひにゃああああああああああああああ!?」
突然真横から声が聞こえびっくりしてしまう。あまりに驚愕して椅子から落ちてしまった。痛い。
「だから突然話しかけないでよ!びっくりするでしょ!?」
『すまんな、癖らしい』
まったく、一か月経っても直る様子がない。少し痛めてしまったお尻をさすりながら、立ち上がる。目の前にいたのは「死神」だった。
『で、マナクリスタルを作るんだろ?』
「ええそうよ、膨大なマナをため込むにはそれ相応のマナクリスタルが必要でしょ?」
既に「死神」がマナクリスタルを触った時の事故でマナクリスタルは許容限界を超えると爆発することが分かっている。なので、膨大なマナをため込むには巨大なマナクリスタルが必要となるのである。
『お前がやるより俺がやった方が効率がいいだろ?手伝ってやるよ』
「え!?いいの?」
『別に構わねぇよ。これ以上大食いになるとまた食事作らないといけないからな...』
「?なんか言った?」
最初の方は聞こえたのだが最後は小声で言われたせいで聞き取れなかった。
『なんでもねぇよ。で?どれくらいの大きさのやつを作ればいいんだ?』
「ああ、これを見て。」
そうしてマナジェネレーターの設計図を見せる。
『分かった』
そう言った「死神」は右手をかざす。するとあっという間に成人男性よりも巨大なマナクリスタルが生成され、設計図通りの形になっていた。
「おぉ...やっぱりすごいわね、マナクリスタルを持たなくても作れるなんて」
『実際にやってみたのは初めてだけどな。お前の研究結果を見て初めて分かったしな』
「でも大丈夫?これだけ大きなマナクリスタルを作ったんだからマナの消耗もかなりのはずだけど...」
『全然大したことはねぇぞ。むしろこれくらいなら何万個も作れそうだ』
「どんなマナの量してんのよ...」と思わずつぶやいてしまった。しかし「死神」の場合マナクリスタルを使わなくても超常現象が起こせるのは何故なのだろうか。それもそのうち調べなくてはならない。
「とりあえず助かったわ。ありがとね」
『別に構わねぇさ。これで、マナ研究もいよいよ大詰めだな』
「ええ、そうね。これで実験が成功したらマナ研究も...」
そこでふと思った。マナ研究が終わると、「死神」は依頼を達成したことになるはずだ。ならば、「死神」はもう私の護衛をする必要がなくなる。となると、「死神」は次の依頼を受けることになるだろう。薄々気づいているが「死神」は裏の世界の住人みたいなものなのだろう。だから、裏の世界なんて知らない私とはもう会えなくなるかもしれない。そう理解すると、無性に不安が込み上げてきた。何故不安を抱くのか理解ができない。どうして、私は不安になっているのだろう。
『...?どうかしたか』
「え、あ、いや、何でもないわよ。とにかく、あともう少しでマナ研究も終
終わりね」
その不安を誤魔化すように、私は人工知能のプログラムを開始した。
*
(...はぁ)
ホテルに帰宅し、食事と入浴を済ませた私はベッドで寝転がっていた。研究所で感じたあの不安について考えながら。その不安は今も感じていて、一向に収まる気配はない。いったいどうしたのだろうか。今まで、こんなことになったのは一度もなかった。
不安になった原因を知ろうと、あの時のことを思い出す。そう、あれは「死神」ともう会えなくなるかもと思った時だった。
(...もしかして、寂しいのかな...?)
最初に会った時は、失礼な奴でおじさんに対して不遜な態度をとるような嫌な奴という印象だった。不気味で、人間かどうかも怪しくて、いつも驚かしてきて、人を簡単に殺せて...でも、どこか優しくて、心配してくれて、料理なんかもしてくれて。いつの間にか、一緒にいるのが当たり前になっていた。だから、もう会えなくなると思うと...
「...ッ!誰があんなやつ!」
寝室の電気を消し、ぬいぐるみを抱いて横になる。
(...もう寝よ)
明日は大事な実験がある。早く寝て、体を休めないといけない。そう言い聞かせ、目を閉じ早く眠れるよう願う。まるで、心の中にある不安と気恥ずかしさを誤魔化すように。
#
数日後、マナジェネレーターを製造した私たちは、実験場にて、最終準備をしていた。
「人工知能の動作、問題なし。マナジェネレーターも特に異常はないわね」
「うん。後は成功するかどうか、起動するだけだ」
「ええそうね、人工知能でも成功するといいけど...」
一応念のため、「死神」にも見ていてもらっている。マナクリスタルの爆発の件もあったため、不測の事態を備えてとのことだった。
「それじゃあ起動するわ。用意はいい?」
「大丈夫だよ」
確認を取った私はマナジェネレーターを起動する。すると、マナジェネレーターに栄養素が注入されていき、人工知能によるイメージが始まる。だんだんマナクリスタルに光が増していっていることから、どうやらマナは増えているようだ。色は白のようである。
「これは...成功ってことでいいわよね!?」
光がだんだん強くなっているということはマナが生成されているということであり、実験は成功したということになる。実験が成功したことで心の中で歓喜する。
(やったわね、あとはこれで爆発しないように光センサーでの稼働切り替え機能を実装しつつ、自動的にマナを生成するようにすれば研究は成功よ)
とりあえずマナ増幅の実験確認は終えたため、ひとまず停止させるとしよう。
「光も強くなってきたし、そろそろ停止させなきゃね。これ以上続けると爆発しそうだし」
かなり小さいマナクリスタルでだいぶ爆発力が強いので、巨大なマナクリスタルだとどんな大爆発を起こすか分かったものじゃない。
(容量をミスるとかなり被害がやばいかもしれないわね。何か事故が起きたり悪用されたりしたら大変だわ。その辺りの対策もしないとね...)
そんなことを考えながらマナジェネレーターを停止させようとするが...
「...?」
『どうした?』
何度も停止用ボタンを押しているが反応がない。
「停止...しない...」
『なんだと?』
まさか故障?そんなわけない。おじさんと一日かけてプログラム、整備したのだ。もちろん不具合がないかもしっかり確認しているため、故障となる原因も思い当たらない。このままだとマナクリスタルがマナの許容範囲を超え爆発してしまう。
「っ!じゃあプログラムの緊急停止を...」
もちろん不測の事態に備え、人工知能の緊急停止も組み込んである。なので緊急停止ボタンを押すが...
「な、なんで...なんで反応しないの!?」
マナジェネレーターが止まる気配がない。むしろ先ほどよりマナ変換スピードが早くなっている気がする。
「じゃ、じゃあ栄養補給を絶てば止まるはず...」
プログラムは停止できなくても栄養素の補給を絶てばマナの増加も止まるはずだ。栄養補給にも緊急停止ボタンを付けている。即座に押すが...
「なんで!?どうして止まらないの!?」
しかし一向に止まる気配はない。
『クソッ!逃げるぞ紗月!このままじゃ爆発すんぞ!』
「え、ええ!分かったわ!」
急いで研究資料をまとめて実験場から去ろうとするが...
「?おじさん?何やってるの!?」
おじさんは強化ガラス越しに慌てもせずにマナジェネレーターを見つめていた。逃げようともせず、その場から動こうともしない。その様子に疑問を抱くが今はそんなことを考えている場合ではない。
「逃げるわよおじさん!このままじゃ爆発しちゃう!」
おじさんの手を引っ張るが、なかなか動かせない。
「め、芽唯!私にかまわず逃げるんだ!」
「何を言ってるの!?おじさんを置いて逃げれるわけないじゃない!」
再び引っ張ってみるものの、動く気配がない。さすがに私の力でも人を動かすくらいはできる。なのに動かせないということは、おじさんが抵抗しているということで...
『何やってんだ!早く逃げるぞ!』
そう「死神」はさけんでこちらにやってきて、私を引っ張る。
「待って!おじさんも!」
『何やってんだ佐々木!死にてぇのか!』
しかしおじさんは動こうとせず、じっとマナジェネレーターの方を見つめている。
「おじさん!」
その時、マナクリスタルが強く発光し、ヒビが入る。そしてなぜかは知らないが、周囲の物が浮かび始め、どう例えればいいか分からないが、何か空間が歪んでいるような感じがする。
『チィ!』
「死神」が私を庇うように前に出る。その直後、視界が真っ白になり…
#
『おい、起きろ』
「う…うーん…」
体が揺さぶられて、目が覚める。ぼーっとする中、目を擦り周囲を見渡す。辺り一面花でおおわれ、遠くには木々が連なっている。
(…ここは?)
未だにぼーっとする頭を稼働し、ここがどこか考えてみるが、こんな幻想的で自然がある場所は見たことがない。一体なぜこんな所にいるのか分からないので気を失う前のことを思い出す。
(…そうだ、私はマナジェネレーターの実験をしてて…)
確か想定外のことが起きてマナジェネレーターが暴走した所までは覚えている。そして、視界が真っ白になって…
「そうだ!おじさん!」
辺りを見渡してみるが海斗おじさんらしき姿は見えない。
『ここに来た時には佐々木はいなかった。俺とお前だけらしいな』
「そんな…」
おじさんは無事だろうか。気が気でならない。
『でもまずは自分たちの心配だな。ここがどこだか分からねぇ』
「「死神」も何処か分からないの?」
『ああ。色んなところに行ったことあるがこんな場所は初めてだ。それに、なんだか妙に力が湧いてくる気がする』
「?どういうこと?」
力が湧いてくるとはどういうことだろうか。いや、まずそれより…
「ここどこ?どうしてこんなところに…」
さっきまでは実験場にいたはずだ。少なくともこんな場所に来るような状況ではなかったはずだ。研究所の近くにもこんな花畑はないはずだ。
『あの暴走の後、マナクリスタルが爆発したんだ。俺は咄嗟にお前を庇ったんだが、光が収まったと思ったらこんな場所に飛んでな。それでその影響かは知らねぇがお前は気絶しちまってな』
「…そうなんだ…」
一体どういうことなのだろう。これもマナクリスタルの効力なのだろうか。分からないが、知らない場所に来たということは確かだ。
『…まずは状況確認だな。近くに建物があればいいんだが…最悪野宿だな』
「え?」
野宿なんてしたことがない。ましてやキャンプ用具もないのに野宿など絶対にしたくない。近くに人がいることを願おう。
これにてプロローグ終わりです!番外編を書いた後に次の章に移りたいと思います!