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最強のボディーガードと共に異世界探索  作者: 幼女好きのロリコン
プロローグ~転移前編~
5/19

5話 「死神」

五話だぜ!

まあいつも通りうまく書けてる自信ないですね、はい。

誤字脱字等ありましたら教えてほしいです!

「「シャッテン」からの連絡が途絶えた」


 ドイツの組織から連絡があり、俺は談話室へと来ていた。


「へぇ、あの爺さんを退けるなんてやべぇなぁ」


「シャッテン」。

 その名は裏の世界でも名を知られている。隠密スキルが高く、暗殺能力は右に出る者はいない。単純な暗殺者としての能力では俺よりあの爺さんの方が上だろう。更に任務となると私情を消し、機械的に動く。追い詰められたら自爆までしそうな人物だ。ていうかするだろう。


「それでー?俺を呼んだってことはそういうことかー?」

「ああ、お前の思っている通りだろう。紗月芽唯の拉致を依頼する」


 断ることは可能だ。俺はこの組織に所属しているわけではないしそもそもとしてドイツ人ではない。それにあの爺さんが失敗したとなるとなかなか難しい依頼になるだろう。


(でもこの金額はなかなかだな...)


 依頼内容の報酬は破格の報酬が提示されている。一生遊んで暮らせるほどではないがそれでもしばらくはなんにも依頼を受けなくても生活できるほどだ。


「「シャッテン」の生死もできれば確認してくれ。やつのことだから捕虜になるくらいなら死んでいると思うが、生きている場合は救助してくれ」

「へいへい、まあ生きてねぇと思うけどな」


 俺は依頼を受けることにし、日本へ行く準備のために椅子から立ち上がった。結構ふかふかしてて気持ちよかったので少し残念に思う。


「期待しているぞ、「インビジブル」」

「はいはい、それじゃちゃちゃっとやってきますかねー」


 *


 俺には幼いころから特別な力を持っていた。特別な力、それは自身の姿を消すこと。また消せるのは姿だけではなく体温、声、気配、そして触れた物体。それは物だけではなく人物もそうだ。まあ、いわゆる超能力とかそういった類のものだ。

 こんなのを公にしたら俺が実験体にされることなど目に見えていたので、成人するまでは誰にも明かさなかった。だがせっかく超能力を持って生まれたのだ。これを使わない手はないだろう。

 俺は成人した後暗殺者として活動を始め、数々の依頼をこなしてきた。

 そのうち俺は「インビジブル」という二つ名で通るようになった。体温も消せるので熱音センサーには反応しないし姿は透明なのでカメラに映ることもない。おかげで、暗殺者としての技量はちょっといいぐらいでも依頼は達成できていた。まあそんなわけで今回の依頼も俺の能力を使うことによってターゲットをさくっと攫うことができたわけである。方法としては紗月芽唯が外出中に部屋のロックをハッキングで解除。帰るまで自室にて待ち、油断してるところに当て身で気絶させる。そのまま窓から脱出し、前もって用意していた車をつかい逃走。そして現在車にてターゲットを運んでいる最中というわけだ。


(さすが平和ボケした日本だなー。随分あっさりだぜ)


 しかし腑に落ちない点がある。この程度で済むなら「シャッテン」は苦戦しないはず。今頃紗月芽唯は攫われており、俺のところに依頼は来ないはずだ。


(まあ、一応警戒はしておくか)


 サイドミラーにて後ろを確認するが怪しげな車はいない。追ってきているわけでもなさそうだ。いざとなれば俺の透明化がある。いくら紗月芽唯が叫ぼうと俺の能力は声を消すこともできるため無意味だ。念のためガムテープも貼っている。


(さあ、あとは帰るだけだ。さーて、今度はどんなかわいこちゃんをかわいがろうかねー)


 一瞬捕らぬ狸の皮算用をしてしまうがすぐに集中を戻す。

 そろそろ車から徒歩へと移動手段を変える時だ。周りに人の気配はなく、街灯による明かりもない。事前に用意してある駐車場にて車を停め、紗月芽唯を抱え上げる。

 赤色の髪を長く伸ばし、ツインテールにしている小柄の少女。小学生くらいの子供という印象で、その黄色の瞳はまだ幼さを残し、恐怖で涙を流している。


「さーて、そんじゃ行こうかお嬢ちゃん」

「んー!」


 必死に叫び、悶えている。


(なんかこう...大人ならまだしも子供となると少し罪悪感が湧いてくるな...)


 まあもちろん少しなので帰してやる気などさらさらない。ここから徒歩十分くらいのところで潜水艦が待っているはずだ。そこに向けて歩こうとしたとき、爆発音が海の方から聞こえてくる。


「なんだー?」


 振り向くと、煙が上っていた。そしてその位置の周辺は潜水艦が待機しているはずである。


(おいおい、冗談はよしてくれよ?)


 予想外の出来事に戸惑っていると。


『なるほど、お前だったのか。「インビジブル」』


 この世のものとは思えない声が背後から聞こえる。


(おいおい...本当に冗談はよしてくれ)


 恐る恐る声のした方に振り向く。

 そこには、黒い炎のようにゆらゆら揺れている、かろうじて人型ととらえることができる何か。正確に視認できるのは成人男性の顔あたりにつけている鬼のような仮面のみ。


「...はは、まさかお前が関与してるとはな。「死神」」


 かなり予想外な出来事に俺は戦慄する。俺はこの時点で、依頼を受けたことに後悔した。


(馬鹿野郎!「死神」に勝てるやつなんかいねぇ!まだアメリカと全面戦争する方がマシだ、なんて依頼を出してくれたんだあいつら!)


「死神」。

 判明していることが少ない謎多き何でも屋。他のやつは正確な情報が分からないから本当の恐ろしさを知らないが、俺は一度、偶然「死神」の戦闘を見たことがある。その時、俺は遠くで見ていたため、対面したのは今回が初めてだ。


(こいつは物理法則を無視しやがる...「死神」は俺たちに攻撃できるくせに俺たちが「死神」に攻撃することはできねぇ...)


 そう...こいつはどれだけ銃を撃とうと通用しないのだ。弾は「死神」を通り抜け、「死神」の手は人間をつかむことができる。つまり殺そうとしても殺せないわけで、逃げ回るしかないってことだ。


『久しぶりだ、俺が一本取られたのはな。会えてうれしいぜ、「インビジブル」』

「そうか?俺は全然嬉しくないな、なにせ一生会いたくないと思ってたんだからな」


 状況は最悪だ。

 とりあえず今優先すべきことは「死神」からの逃走。

 幸い俺の透明化なら、逃げることには特化しているためどうにかできるかもしれない。


「んー!」


 そのとき抱えていた紗月芽唯が悶え始める。


『あんたの帰りを待ってるであろう潜水艦はすでに爆破しておいた。とっとと降伏してそのガキを寄こしてくれねぇか?』


 やはりあの爆発音は潜水艦が破壊された音らしい。


「...なあ、どうやって俺を見つけたんだ?嬢ちゃんを連れ出せたってことは気づくのは遅れたんだろう?車とかでつけてたわけでもなさそうだしな」

『さあな、勘じゃないのか?』

「勘で居場所を突き止められてたまるか、まったく今日は厄日だぜ」


 これ以上長居するのはまずい。

 俺は能力を発動し紗月芽唯ごと姿を消す。

 過去一集中し、「死神」にばれないようこっそり移動する。

 俺たちの声や音は消すことはできるが、ふんだ雑草の変化を変えられるわけではない。なので細心の注意が必要だ。


『随分質が高いよな、その透明化。俺ですら見えない』


「死神」は直立したまま動こうとせず、この場から離れようとしている俺に気づいている様子はない。今はなるべく早くこの場から離脱し帰還方法を考えるべきだろう。そう思い、少しでも遠ざかろうと「死神」から目をそらした時。


『だからって俺から逃げられると思ったか?』


 目の前に『死神』がいた。

 直後俺の右足を拳銃で撃ちぬかれ、顎を蹴り上げられる。その際に紗月芽唯を放してしまい、透明化が解けてしまう。


「がぁ...!」


 痛みで集中力が減り、透明化の力が弱くなったことで俺の姿が若干見えるようになってしまう。


『さて、よくもまあやってくれたな。もう一度聞くが降伏しろ、しないなら二度と意識が戻ることはないぞ?』


 既に紗月芽唯は「死神」に抱えられており、俺は足を負傷。絶体絶命だ。


「はあ...分かった、降参だよ降参。割に合わない」


 透明化を解除し、両手を上げる。

 どうやって俺の透明化を解いたか分からない限り逃げだすことも難しいだろう。


(まあ、「死神」が生かしてくれるとは思えねぇけどな)


 こいつは非情ということで有名だ。たとえ情報を吐いたとしても、こいつは俺を殺すだろう。なら最後に一矢報いてやる。


 #


(助かった...?)


 私は幽霊のおかげで無事誘拐犯から脱出することができ、拘束も幽霊が解いてくれた。誘拐者は両手を上げ、降伏の意志を示している。正直実感が湧いていない。いまでも連れ去られてしまうのではないかという恐怖が、私を不安にさせる。その不安で、自然と体が震えてしまう。


『安心しろ、もう大丈夫だ』


 幽霊が手を伸ばし、私の頭をなでる。その手は黒い炎のようにゆらゆら揺らめいて不気味なはずなのに、なぜか心地よさを抱く。


(あたたかい...)


 このぬくもりは、母さんの手のぬくもりと似ているような気がした。私を震え上がらせている恐怖と不安を、かき消してくれる。


「なあ「死神」さんよぉ」

『なんだ?』


 私を攫った犯人が幽霊を見据えて言う。


「俺の受けた依頼なんだが...紗月芽唯の拉致。これは本当だ。だが...実はもう一つ内容があってだな」

『ほう、それはなんだ』


 その時、誘拐犯はあざ笑い...


「誘拐が困難な場合...殺害も許可する...ってな」

『ッ!?まさかテメェ!』


 誘拐犯はすさまじい速度で胸ポケットからスイッチらしき何かを取り出す。


「悪いが、嬢ちゃんも道連れにしてもらうぜ」


 誘拐犯は笑いながらボタンを押す。その瞬間、私の服の中から音が響き...


『クソッ!』


 何が起きたか分からなかった。気が付いた時には十メートルくらい先で爆発がおこり、爆風がこちらに届く。


「ちぃ!バケモンがっ!」


 爆発が起きた直後、誘拐犯は拳銃を取り出し、こちらに向ける。


『死ね』


 *


 私は目の前にいる存在に恐怖した。全身を焼かれ、苦痛のあまりに叫ぶ人間。その光景を淡々と見据えるゆらゆらと揺れる()()は、黒色の炎のようだ。不安定で正確な形を留めておらず、幽霊のようように不気味な雰囲気を出している。しかし、人間の顔あたりの高さにある鬼のような仮面ははっきりと見ることができる。

 それは静かに振り向き私を見据える。仮面の隙間から見える赤く光る瞳からは感情を読み取れない。

 私には()()が、死神のように見えた。


 #


 危なかった。正直、あれは人生の中でも最も焦った瞬間であった。今回ばかりは依頼の失敗を覚悟したものだ。


(まさかあの短期間で爆弾を仕掛けるとはな)


「インビジブル」、本当に読めない男だった。

 最初、「インビジブル」の居場所を突き止めたのは俺が町全体を監視し、怪しい車を特定。更に紗月芽唯を誘拐した後の逃走方法を予想し、怪しい車の目的地を予想することによりなんとかなった。海の底に潜水艦がいたときはびっくりしたものだ。

 だが問題は紗月芽唯に仕組まれたあの爆弾だ。もし俺が化け物じみた反応速度と速さを持っていなかったら紗月芽唯の衣服を即座に破き、爆弾を投げるとかいう芸当はできなかっただろう。

「インビジブル」の敗因は相手が化け物だったということだけだ。可愛そうな男である。


(さて、問題は...)


 例の誘拐事件にて、紗月芽唯が自室にて籠ってしまったことだ。


 #


 私、紗月芽唯は自室に籠っていた。

 部屋の隅で、体育座りしながら。

 自室に籠ってすでに三日が経ち、研究もロクにできていない。もちろん国からの支援もあるし、ここで籠っている暇などない。

 でも...


(...怖い)


 部屋から出るのが、怖い。

 いや。部屋にいることすらも怖い。

 私は平和な日本で生まれて平和な日本で過ごしてきたため、危険ということが何かを明確には分かっていなかった。黒服の人たちに護衛されているときも緊張はしたが実感が湧いていなかった。

 だが、今回の件で思い知らされた。私を狙う組織がいて、私を連れ去ろうとしているのだと。

 誘拐されたとき、激しい恐怖を感じた。その恐怖を今でも感じる。あのまま連れ去られていたら私はどうなっていたのだろう。考えただけでもおそろしい。そして、今この瞬間にも私を攫おうとする人物がいるのではないか。この部屋に私を攫おうとする人物が潜んでるのではないかと思うたび、体が震える。

 それに...


(...人が死ぬところを、初めて見た)


 今でも、あの誘拐犯の断末魔が鮮明に残っている。あの苦痛を感じる叫びが、いつまでも耳から離れない。

 そして何よりも...


(あの幽霊が...怖い)


 人を殺しても何も動揺せず、淡々としていたあの幽霊が、一番怖かった。もちろん幽霊の立場上何人もの人間を殺す場面があったのだろう。幽霊にも事情があるはず。そう頭では理解している。理解してるはずなのに。あの幽霊に恐怖を感じてしまう。

 私のことを助けてくれたのに。私の命を救ってくれたのに。それでも、あの幽霊を恐ろしいと感じてしまう。

 だが、それなのに嫌いにはなれない。


(ねえ母さん...私、怖いよ)


 母の手のぬくもりが感じられなくて、寒く感じた。

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