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最強のボディーガードと共に異世界探索  作者: 幼女好きのロリコン
プロローグ~転移前編~
3/19

3話 光の四原色

疲れました。

10000文字です。

長いです。

はい。

誤字あったら教えて。

長いから話おかしくなってるかも。

「天才科学者、紗月芽唯の拉致が今回の依頼内容だ、もし困難そうなら暗殺も許す。ただ、それは最終手段だ」


 裏の仕事を主に動いている私の元に国から依頼が来る。その内容は現在日本で天才少女と呼ばれている紗月芽唯の拉致である。

 ここ、ドイツでは科学技術が他国よりも発展しており、IT産業や工業製品などで高い評価を得ている。その技術の他に経済力も尋常ではなく、他国を凌駕している。しかし近年日本で紗月芽唯という天才科学者が次々とドイツの得意分野であるIT技術や医療技術で優秀な成果を出しているせいでドイツの経済力は徐々に減少している。今はまだ微々たるもので、まだまだ他国よりも上だからと言って上層部は嬉しくないだろう。事実、私に拉致という依頼が来ている以上そういうことだ。何故紗月芽唯の暗殺ではなく拉致なのかはおそらく紗月芽唯の頭脳を取り入れたいからだろう。いくら邪魔だからと言ってここで天才を殺してしまったらもったいない。紗月芽唯の知識なら今のドイツをより大きくできるだろう。つまり利用価値があるから生け捕りにしろということだ。殺すのがかわいそうだからという甘ったれた理由などではない。まだ成人もしてない少女に裏側の世界を見せるのは気が引けるが、私にも事情がある。

 私はこの依頼を受けることにし、日本へと移動する。空港で働くスパイから現地での詳しい話を受け、装備を受け取る。

 サプレッサー付き拳銃、スモークグレネード、フックショット、双眼鏡、最後に対物ライフル。銃刀法違反のある日本でこれほどの装備を寄こすとは衝撃である。それほどに今回は重く見ているのだろう。

 それから私は紗月芽唯の泊まる高級ホテルに忍び込み、二日間の様子見をした。平和ボケしている者が多く、銃刀法違反があるからか武装してるものはいない。暗殺なら簡単にできるだろう。しかし今回は拉致が目的である以上死なせるわけにはいかない。しばらくの様子見を終えた私はひとまずホテルから出ることにした。紗月芽唯が国の人物らしきものから訪問を受けていたからだ。私の存在がバレたか、それ以外の要件か。どちらにせよ早めに出ていた方が感づかれることはないだろう。もう少し情報が欲しかったが今回は内容だけに失敗は許されない。遠くからの監視に切り替え安全な択をとるべきだ。そして数日後、とある廃ビルで紗月芽唯の行動を見ていた。


 *


(困ったな、まさか「死神」に会うとは)


 現在、私は廃ビルにて拳銃を構えていた。目の前にいるのはかろうじて人型を留めている、炎のようにゆらゆら揺れている黒い存在。正確に視認できるのは成人男性の顔あたりにつけている鬼のような仮面のみ。その姿は本やオカルトで出てくる幽霊を彷彿させる。

 私はこの存在を知っている。実際に会ったことはないが、裏の世界では知らない者はいないほど名が轟いている。名は「死神」。裏の世界の何でも屋。殺しでも護衛でもそれ相応の報酬さえ払えば引き受けるとされている。正確な情報はほとんどなく、分かっている情報は10年ほど前から存在していること。まるで魔法でも使用しているような超常現象を起こせること。受けた依頼は一度も破棄したことはなく、一度も失敗したことがないこと。そして、依頼内容にふさわしい報酬を求めること。これらしかない。報酬を支払われなければ、依頼主は行方不明になると噂されている。こんな見た目で、対価さえ払えばどんな依頼もこなすものだから、ついた二つ名が「死神」である。

 これも噂になるが、一国の内戦すらもこの死神一人で終わらせたことがあるらしい。そんな存在が何故こんなところにいるのか疑問だがそれは今考えることではない。


『銃刀法違反だぜ?それ』


 この世のものとは思えない声で死神が言う。


「ふん、人間かどうかも怪しいやつに注意されるとはな」


 まさか人外から指摘される日が来るとは思いもしなかった。


「お前の話は聞いているぞ。人智を超えた動きができるらしいな」


 軽口を叩きながら周囲を見渡す。一見死神一人に見えるが、もしかしたら他も潜んでいる可能性がある。ましてや相手の手口は未知数だ。普通の逃亡では高確率でゲームオーバーになるだろう。おそらく私が逃げ道を探っているのも感づかれているだろう。


『悪いが種明かしはできないな。道化師はタネがばれれば終わりだろ?まあ、道化師は、だがな』


 目の前にいるのは道化師なんて言う可愛い存在ではない。人智を超えた「死神」だ。


「お前は道化師ではなく死神なのだろう?ならなぜ私の存在がバレたのかくらい教えてくれてもいいのではないか?」


 もちろん素直に教えてくれるはずがないだろう。これは逃亡の策を考えるための時間稼ぎでしかない。これで手の内を言ってくれるようであれば儲けものだ。


『道化師ではないが死神ってのは対価を求めるもんだ。等価交換としてお前を雇った国を答えてもらおうか』


 等価交換など冗談じゃない。雇った国だけでなくこちらの命も対価として求めてくるだろう。それに、対価を支払ったとしてもこの死神が素直に情報を提供し得くれるとは思えない。相手は「死神」なのだ、対価だけを受け取り何も教えてくれない可能性の方が高い。これ以上の会話は危険だろう。もしかしたら心を読む能力のような力を持っているかもしれない。


「悪いが私は死神など信用するつもりはない。対価を求めるというのならここは逃げさせてもらおう」


 私は出せる最速で腰に装備しているスモークグレネードのピンを抜き、目の前に投げる。その後拳銃で打ち抜き、煙があふれ出す。死神相手に煙幕は通じないかもしれないがやらないよりかはいいだろう。煙で視界を遮っている間に私はビルから飛び降りる。この廃ビルはすでに占拠されている可能性があるため、他の建物に移動するのが安全だろう。

 私はフックショットを取り出し、隣のビルの屋上へとワイヤーを飛ばす。うまく着地し、周囲を見渡す。どうやら潜んでいる人物はいなさそうだ。


「これは報告だな。いくら私でも相手が悪すぎる」


 私は裏の世界ではそこそこ名を知られており、暗殺にも腕に自信がある。しかし、今回のターゲットに人外が付いているとなると私一人では無理だ。とにかく、今はここ周辺から直ちに逃げるべきだろう。いつ追手が来るか分かったものじゃない。


『フックショットか。随分な手品を披露してくれるじゃないか』


 背後からこの世のものとは思えない声が聞こえてくる。すぐに拳銃を取り出し、声のした方に構える。しかし、誰もいない。


『悪いが俺を殺すには今の世界の技術では不可能だ。たとえ核を持ち出そうと傷一つ付けられずに終わるだろう』


 また背後から声がし、何かを突き付けられる。硬さと大きさ的に銃口だろう。背筋に悪寒が走る。


「本当に化け物だな。そんな奴が人間の世界にいるなど反則じゃないか?」


 私は手に持っている拳銃をマガジンごと落とす。手を上げ、落ちた拳銃を遠くに蹴り飛ばす。


『悪いな、俺は人間と同じステージにたって戦うほど律儀じゃない。世界ってのは理不尽だからな』


 出せる最速の速さで後ろの死神を取り押さえようと手をつかもうとする。しかし私の手は空を切る。誰も背後にいなかったのだ。直後背中に衝撃は走り、地面に組み伏せられる。


『お前に逃げ場はない。おとなしく吐いてもらおうか』

「悪いが悪魔に情報を売るつもりはないぞ。さっさと殺せ」


 どうせ吐いたところで殺されるだろう。ならさっさと死んだほうがいい。私は今まで人を何回も殺してきた。ロクな死に方ができるなどはなから思っていない。人生に悔いはないといったら噓になるが、死など別に怖くはない。


『情報を吐くまで殺すつもりはないぞ?』

「ふん...なら勝手に死なせてもらおう」


 私は手に忍ばせているスイッチを握る。もしものために用意していた服の中にある爆弾の起爆スイッチだ。このようなときになった時、証拠隠滅のための手だ。これで死神が死ぬとは思えないが、思い通りにはさせない。


(すまんな、アメリア、エルゼ。先に向こうに行っているぞ)


 私の愛する妻と娘。エルゼは昔からアメリアと共に愛情をこめて育ててきた。娘はもうすぐで母親となる。せめて死ぬ前に孫の顔を見たかった。そして、娘の病を治してやりたかった。紗月芽唯ならきっと、治療薬を作れただろう。


(お前たちの幸福を心から願っている)


 私はスイッチを押した。


 #


『してやられたな』


 まさか自爆すら躊躇がないとは恐れ入る。穏便にすましたかったがビルの屋上がぶっ飛んでしまった。事後処理は国がやってくれるが、何も情報が得られなかったのは痛い。せめて遺体から出身国を調べたかったが証拠すら跡形もなくなった。

 ちなみに俺に傷はない。たとえ至近距離で爆発が起ころうが、ガトリング砲でハチの巣にされようが俺に傷はつかない。

 とりあえず国の奴らに事後処理は任せ、紗月芽唯が向かった研究所へ俺も赴く。それにしても刺客が来るのがいくら何でも早すぎる。もうマナ研究の情報が漏れたのだというのか。もしそうなら内通者がいる可能性が高い。これからは内部にも注意したほうがよさそうだ。


 #


 黒服の人たちと一緒に研究所にたどり着く。かなりでかい施設となっており、働いている人もかなりいるとのこと。つい最近建てられたのもあって、外観はきれいだ。

 すこし緊張してしまう。中に入り、私が使う研究室へと案内される。内装もきれいに掃除されており、すれ違う研究員の数も多い。


「ここがあなたの研究室です」


 中に入ると、個人が使うにはかなり広い空間となっていた。研究機材は一通りそろっており、足りない機材に関しては頼めば用意してくれるだろう。


「それでは、私たちはこれで」


 黒服の人たちがお辞儀をして去っていく。正直に言って幽霊が付くぐらいならこの人たちに護衛してもらいので私を置いていかないでほしい。


「はあ...早くおじさんと会いたいなぁ」


 黒服の人たちに聞いてみたが、おじさんが到着するのはまだらしい。


『そんなに俺といるのが嫌か?』

「うひゃあ!」


 唐突に後ろから声がして驚いてしまう。振り返ると例の幽霊がいた。


「驚かさないでよ...わたしホラー苦手なんだからね?」


 小さい頃、何を血迷ったのかホラー映画を見てしまったとき盛大に漏らしてしまった。その時からホラーが大嫌いで、一切そういったものに関わったことはない。実はこいつが嫌いな理由の一つにホラーチックなのも含まれている。


『ひとつ悪い報告だ。内通者がいるかもしれない』

「内通者?」


 先ほど用事とか言ってどこかに行っていたが、用事とはそのことなのだろうか。


『おそらくマナ研究のことも漏れてるだろう。いいか、決して他人を信用するな』


 アンタの方が信用できないんだけどと真っ先に思ったのは秘密。そんなことを言えばこの幽霊が憤慨するかもしれないので口が裂けても言えない。


「そんなこと言われても...具体的にどう注意すればいいのよ」


 内通者がいると言われても具体的に何を気を付ければいいか分からない。そんな内通者がいるような危険な職場で働いたことがないので、当然誰が怪しいかなど皆目見当もつかない。


『とりあえず一緒に作業する研究員は信用するな。誰が内通者か分からんからな』


 一緒に作業するのに疑わなければいけないのだろうか?だとすればさらに神経が磨り減るのだが。


「分かったわよ。とりあえず、重要な情報は喋らないように努力する」

『それでいい』


 ついでにこいつのことも信用できないので喋らないでおこう。


『それとお前にお客さんらしい』

「客?」


 いったい誰だろうと思った瞬間、部屋の扉が開く。中に入ってきたのは、高身長の痩せた中年の白衣を着た男性。髪はぼさぼさで眼鏡をかけており、根からの文系といった頼りなさそうな人である。さらにその糸目の目は冴えなさに追い打ちをかけている。


「おじさん!」


 佐々木 海斗。私が小さい頃、母の代わりに育ててくれた恩人である。


「やあ、芽唯。久しぶりだね」


 おじさんは幽霊を一目見た後、私の方に向き、笑顔で言う。


「おじさん、痩せた?なんか目の下にクマもできてるわよ?」


 おじさんは確かに研究に没頭してしまう癖があるが、さすがに前一緒にいたときはここまで痩せてはいなかった。


「もう、体はもっと大事にしてよね。おじさんには早死にしてほしくないんだから」

「あはは、ちょっと興味深いことがあったからね。寝ることも忘れちゃったよ」


 苦笑いしながら頭をかいている。研究員として没頭するのは分かるがそれでも体を大切にしてほしいものだ。


「さて、君が芽唯の護衛さんだね。僕は佐々木海斗。芽唯の叔父さ。よろしく」


 おじさんが私から目を離し、幽霊に手を差し出す。それに対して、幽霊はおじさんの手を払う。


『悪いが馴れあうつもりはないぞ。俺は依頼をこなすだけだ』


 挨拶をしたおじさんに対して不遜な態度をとった幽霊に私はイラっとした感情を覚える。


「ちょっと、人が挨拶してるのにその態度はなによ!」

『勘違いするな。俺が受けた依頼内容は「紗月芽唯の護衛」だ。その中に「お友達を作る」って内容は含まれてない』


 まったく謝る気がなく、それどころかこちらを煽ってくる始末である。そんな態度にふつふつと怒りが湧いてくる。


「あなたねぇ...」


 突っかかりそうになった私をおじさんが手を出し止める。


「まあまあ落ち着いて、芽唯。別に僕は怒ってないから。君のことは聞いてるよ。とても腕がたつらしいね」

『その点に関しては心配するな。依頼は必ず守る』

「それは良かった。芽唯は僕にとって娘同然の存在なんだ。よろしく頼むよ」


 おじさんは不遜な態度をとられても笑顔を変えなかった。そんなおじさんに寛容だと思うと同時にこの幽霊の狭量さに心の中で叱咤する。


『そうか。ま、どうでもいい。親戚同士仲良くするといいさ』


 そう吐き捨てるように言った幽霊はそのまま部屋から出ていく。


「まったく、態度悪いわね」


 ますますあの幽霊が嫌になってくる。今すぐ護衛を変えてほしいものだ。


「彼は腕は一流らしいけど協調性がないという話だからね。どうやらその通りらしい」


 苦笑いしながらおじさんが言う。不遜な態度をとられても怒らないおじさんはすごいと思うのだが、私としてはやはり思うところがある。


「さて、芽唯。早速研究にとりかかろうか。今回は実に興味深い内容だしね」

「ええ、早く終わらせましょ」


 早くマナ研究を終わらせて幽霊から離れたいものだ。


 #


 佐々木 海斗。年齢42歳。優秀な研究員であり、芽唯の叔父。

 幼いころから成績優秀で、逸材と呼ばれていたらしい。少々研究に没頭する癖があり、時間を忘れることが多々あるとのこと。

 事情により紗月芽唯の保護者となっていた。その際、芽唯に研究員としての知識を教えた人物。紗月芽唯は佐々木に対して絶大な信頼を寄せており、第二の父と慕っているらしい。少し頼りないところはあるが、お人好しというのが周りの評価だ。主に専攻していた分野はIT関係だったらしいが現在は違う分野を専攻している。分野を変えたのは10年ほど前。紗月芽唯を引き取る一年前である。

 当時32歳。分野を変える前にとある事件が起こっている。


(妻の佐々(ささき) (しおり)の死亡...か)


 既婚者であった佐々木 海斗は相方である佐々木 栞を亡くしており、研究に没頭するようになったのもそのころかららしい。


(どうにも胸騒ぎがするな)


 報告では、佐々木は紗月を実の娘のように大切にしているとのことだ。一目見た感じでも本当に紗月のことを大切にしているようであった。しかし、今まで俺のことを何回も救ってきた勘が、何か警告を告げている。この佐々木は警戒しろと。


(...用心しておいた方がいいだろうな)


 娘のように思っている紗月のことを傷つけるようなことはしないだろうが、念のため監視をしておこう。


(杞憂で終わるといいんだがな)


 まだ他にも佐々木に関する情報があるかもしれない。できるかぎり情報は探っておこう。


 #


 マナというエネルギーは謎に満ちている。まず、分かっていることと言えば目に見えず、強大な力を秘めているということだ。なぜ目に見えないものを発見できたかついては、マナクリスタルという存在があったからだ。マナクリスタルとは、透明な結晶体のことである。マナを可視化させることができる結晶体で、マナの量が多いほど光の強さが増す。つまり、光の量でマナの量を測れるということである。しかし、マナクリスタルはかなり貴重であり、宝石であるダイヤモンドより数が少ない。どれだけ大変かというと、砂漠の中からダイヤを見つけ出すくらい見つけるのが大変となっている。なので、支給されたマナクリスタルは指輪についてる宝石よりすこし大きいくらいのサイズである。


「黄土色と赤、青、そして緑色...かぁ」


 そんなマナクリスタルであるが、人が触ると白色の光から色が付くのである。私が触れた場合は黄土色、赤色、青色、緑色が浮かび上がったのである。これが何を意味するかは分かっていないが、何かしらの法則があるのは間違いないだろう。


「おじさん、とりあえず触ってみて」


 こんどは海斗おじさんの色を確かめるためにマナクリスタルを渡す。


「おや、僕も黄土色、青色、赤色、緑色だね」


 おじさんが触ると、マナクリスタルの光は私と同じ四色に変色した。しかし、私より若干光が強い気がする。


「うーん、色の違いは何を意味するのかしら。もうちょっと情報が欲しいわね」


 私たち二人とも四色に変色することは分かったが他の人はどうなのだろう。私たちよりも付く色が多いのか、それとも少ないのか、そして色も違ってくるのか。


「ひとまず大量の人にマナクリスタルを持たせてみよう。何か分かるかもしれない」

「そうね、ひとまずデータをとるところから始めましょう」


 こうして、他の研究員に協力を頼むことになった。


 *


「ほとんどが赤・青・緑・黄土色ね」


 実験して分かったことは、30人にマナクリスタルを待たせたところ、合計四種類の色が確認できた。つまり、現状私たちが触れた時に出た色の種類が最大ということになる。そして、浮かび上がる色の種類や数は人によって違い、平均したところ一人1,2種類の色が浮かび上がっていることが分かった。中には三種類が浮かび上がる人もいたが、私たちのような四種類確認できた人はいなかった。次に分かったことは、若干人によって光の強さが違うことだ。推測になるが、これは人によってマナの量が違うということだろう。まあ本当に誤差程度なのであまり差異はないと見ていいだろう。他にも色があるかもしれないが、今わかることはこれくらいである。


「次はこの色の意味を調べていこうか」

「とは言ってもどんな意味があるか分からないんだけど」


 最初、おじさんと私の共通色である黄土色に関しては、私とおじさんは血縁関係ということで同じ色なのかとも思っていたが、わたしとおじさん以外にも黄土色が浮かび上がった人がおり、その人とは特になにも共通点はなかった。ということは何か別の理由があるのかもしれないが、現状は分からない。


「はあ...何よこの四原色。まるで異世界物語に出てくる属性検査ね...」


 ふと異世界作品にもこんなものがあったなと思う。色によってその人物がどんな属性の魔法が使えるか分かるって感じのもの。似たような感じだったので思い出したのだが...


(...ふふ、ダメ元でやってみようかしら)


 少し休憩がてら、遊びの感覚で確かめてみようとマナクリスタルに触れる。そうすると先ほどのように四色浮かび上がる。


(だいたい黄土色ってのは...)


 異世界系で黄土色と言えば土属性などを指すことが多い。そして土属性ができることは地面の操作や貴金属の創造が多い。それと、魔法はだいたい詠唱かイメージをすればいいと相場が決まっている。私は砂を脳裏に浮かべながら手をかざす。すると、マナクリスタルの光が減少し、かざした手の前に豆粒より小さい砂ができたのである。


「...え、嘘?まさか本当に砂を作ったの?」

「どうしたんだい?」


 私のつぶやきが聞こえたのか、おじさんが反応してこちらにくる。その後、机にある数粒の砂を見て怪訝そうにする。


「これは...砂?こんな少ない量の砂でいったい何をするんだい?」


 どうやら実験材料として持ってきたのだと勘違いされてしまっているらしい。


「え、えっと、おじさん...冷静に聞いてほしいんだけど、実はこれ私が作ったらしいのよ...」

「どういうことだい?」

「つ、つまり...」


 おじさんに遊び半分でファンタジー的なことをしてみたと話した後、おじさんが興奮したように言う。


「なんてことだ!まさかイメージしただけで創造したもの通りの物を作り出せるなんて、大発見だよ!」

「ええ、これは今までの常識を覆すかもしれない発見ね!」


 これは砂の他にもどんな鉱石を生み出せるか実験する必要がありそうだ。


(ということはこの色は属性を示しているのかしら?つまり他の3種類も何かあるはず...)


 それに疑問に思うところがある。こんな魔法チックなことができるのになぜ今まで認知されていなかったのか。イメージ力があるものなら、この長い西暦の中で見つかっていない方が不思議である。つまり認知されなかった理由があるわけで...


(もしかしてマナクリスタルがないとできない?)


 私は一回マナクリスタルから手を放し、さっきと同じように砂を生み出そうとする。しかし、砂ができることはない。


(やっぱりマナクリスタルがないとできないのね)


 世界でもほとんど取れない希少なマナクリスタルに触れていないとできないなら認知されていないのも頷ける。


「おじさん、もしかしたら...」


 おじさんに今わかったことを事細かに説明する。


「なるほど、つまりはマナクリスタルのおかげで砂が作り出せたのか。じゃあマナクリスタルを持って他の種類も試してみよう」

「そうね、記録はよろしく」


 一応私がマナクリスタルを持って実験してみたところ、作れたのは砂・氷・炎・風であった。色の感覚から言ってイメージが近いものを創造したのだが、どうやら青色は氷、赤色は炎、緑色は風を生み出せるらしい。ちなみに、実験を重ねるごとにマナクリスタルの光の強さが弱まっていったことも確認できた。どうやらこの行動はマナを消費するらしい。しかし、マナが減っても特に疲労感はなく体にも特に影響はないように思える。


「そういえばあいつに持たせたらどうなるのかしら?」


 ふとあの幽霊が思い浮かぶ。あの未確認生命体は十中八九マナと関係あるだろう。あいつにマナクリスタルを持たせることにより新しい何かを発見できるかもしれない。


(でもあいつ嫌いなのよねー...)


 まず個人的にあいつに協力を要請するのが嫌である。腹が立つ。ムカつく。ぶん殴りたくなる。そしてあいつが素直に協力するかどうか。大方、『俺が受けた依頼内容は「紗月芽唯の護衛」だ。研究のお手伝いじゃない』とか言ってきそうなのである。そんなこと言われたら思わずぶん殴りそうである。腕力に自信はないが。明日から体を鍛える必要があるかもしれない。


「さて、芽唯。もうこんな時間だ。研究はこれで終わりにして帰ったらどうだい?」

「え?」


 そういわれて時計を見るとすでに九時を過ぎていた。研究に集中するあまり時間を忘れてしまっていた。


「そうね、もうそろそろ終わろうかしら。明日に備えて早く帰らないと」

「うん、そうした方がいいよ。僕はもう少し...」

「だーめ。おじさんはそのままにしとくと朝まで没頭しちゃうもの。帰らないと怒るんだから」


 おじさんの性格上このまま研究を続けさせると徹夜しそうなのでも理にでも帰らせる必要がある。


「あはは、そうだね。姪を心配させるわけにはいかないし、僕も帰るとするか」

「そうしてちょうだい」


 とりあえず一安心できた。私たちは機材や資料の後片付けをした後、部屋から出る。部屋を出ると、憎き幽霊が壁によしかかって待っていた。


『終わったか。車の用意はできてるぞ』

「今回はあんたも乗るの?」

『残念ながらその通りだ。まあ安心しろ。俺が座るのは助手席にするからよ』


 そういった幽霊は踵を返す。


「じゃあ芽唯。僕は自宅に帰るから、仲良くするんだよ」

「いやよ!なんであんな未確認生命体なんかと!」


 まだ趣味の全然合わない人と仲良くなれと言われた方がマシである。


「どんな人とも仲良くなれるのはすごいことだよ?それに彼は表面こそ冷たいけれども根は優しいと僕は感じるんだ」

「あんな奴が?」


 どう考えてもマナーのまの字も無いと思う。


「ふふ、僕は似たような人物と会ったことがあるから分かるんだ。いつか芽唯も分かる日が来ると思うよ。それじゃあまた明日だね、芽唯」


 そういったおじさんは踵を返し、去っていく。とりあえず「また明日」と手を振り、幽霊についていく。


『随分やさしそうな叔父だな』

「ええ、とても優しい人よ。あなたと違ってね」


 幽霊を軽くにらみつける。


『元から優しいと思われるつもりなんてねぇさ。俺は俺の言いたいことを飲み込んでまで善人になるつもりなんてねぇ』


 幽霊はこちらを見向きもせず淡々と話す。


『優しさってのは枷でしかない』


 そう言った幽霊の姿を見ると、なぜか私は何もしゃべることができなかった。そのまま話すこともなく車に乗り込み、ホテルへと帰宅した。


 *


「あいつも...いろいろ事情があるのかしら」


 国からの話では、幽霊は凄腕の護衛とのこと。戦闘などしたことない平和ボケした私とは価値観が違うものなのかもしれない。


(優しさは枷...かぁ...)


 優しさを捨てなければいけない何かがあの幽霊にはあったのかもしれない。それがどんなものなのかは私には分からないが、きっと私には想像もつかないことなのだろう。


(ああもう!なんで私があんなやつのこと考えなくちゃいけなのよ!)


 頭から幽霊のことを取り除くため、浴室に入り体を洗う。鏡に映る私の裸体はどうみても小学生である。


(使用人に鏡を無くすよう頼もうかしら...)


 同い年くらいの女子を町中で見たとき胸がきついだのと喋ってた時は殺気が出たものだ。なぜ私には母のようなナイスボディにならないのだろう。


(はあ...寝ようかしら)


 色々と疲れた私は風呂から出た後寝室に入り、ベッドにダイブする。熊のぬいぐるみを抱き、そのまま私は深い眠りに落ちた。

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