5話 異世界人との出会い
今のところ毎週投稿で来ていてうれしいです。
今回のお話ですが、展開が少し急です。異世界人とのコミュニケーションが少しおかしかったり「え、そうなる?」ってなるかも知れないですが、作者は経験不足なので大目に見てください...
話は変わりますが、質問が枯渇しているのでじゃんじゃん質問していただけるとうれしいです...
早朝。露天風呂で温まったあと旅の支度を終わらせ、城から出る。辺りを見渡すと、以前竜馬がドラゴンと戦った際にできた裂け目がまだ存在していた。未だに周囲の空気を取り込んでいるようで、ヒュオオオオオと風の音が聞こえてくる。ドラゴンの戦闘から一週間、消える気がしない。
「まだ残ってるじゃない」
「あの攻撃は被害が大きい、だからあれは最終手段だ。できれば他の方法で戦いを終わらせたい」
ため息をつきながら竜馬が呆れたように言う。
「とりあえず今から北行して、メイリータ王国ってところに行くぞ。道中どんなやつが出るかわからねぇから離れるんじゃねぇぞ」
「わ、分かってるわよ」
別に気にしているわけではないが竜馬ほどの美男に離れるなと言われると少しドキドキする。決して気にしているわけではないが。
「まあ、結構な距離だろうから時間がかかるのは間違いないだろうな。疲れてきたら遠慮せず言えよ」
「分かってるわよ!まったく...」
先程も同じようなことを何回も言われたので流石に苛ついてくる。そんなこんなで森の中に入り、足場が悪い中を必死に歩きながらメイリータ王国を目指す。しばらく経った後竜馬が不思議そうに聞いてきた。
「...疲れてないのか?」
「え?全然疲れてないけど」
「もう一時間経過してるぞ」
「嘘!?」
慌ててスマホを見てみると、出発してから本当に一時間が経過していた。最近、というか物心ついた時から運動などしたこともないような私が一時間森を歩いても全く疲れていない。かなりおかしいことに気付き原因を考える。
(異世界に転移してきた影響?マナクリスタルを使わなくてもマナを使えるようになったのと何か関係が?)
「おい、どうした」
「あ、ご、ごめんなさい、考え事をしてしまってたわ」
とりあえずこのことは保留にする。今は森を抜けることが最優先だ。地図によると山を降りた後も森が続くため、ここ数日は同じ景色が広がると竜馬は言っていた。代わり映えしない景色に多少飽きてくるが、人生で森に行くことなどほとんどなかった私には結構新鮮であった。
そのまま特にトラブルもなく、適切な場所で野宿することになる。
「はぁ〜、疲れたー...さて、テントを張りましょ」
「そうだな、ここはいい感じにひらけてる」
実は銃の他にも私はテントを制作していた。どうやら鉱石だけでなく生地なども生み出せるようで、テントの作成も簡単にできたのだ。ただ、私はあまり力がないので竜馬に持ってもらっている。
「あぁ~...疲れた~...」
テントを立てた後、倒れこむように寝転がる。さすがに長時間森の中を歩いていたため、疲労が溜まっているのだ。
「俺は食料と焚火の枝を探してくる。勝手にどこか行くんじゃねぇぞ」
「行くわけないでしょ。もうへとへとよ」
そのまま竜馬が狩りに出かけ、数分した後数匹の魚を持ちながら帰ってくる。ついでに集めてきた枝で焚火を作り、魚を焼いてくれた。塩でしか味付けされていないがおいしく感じる。
「ん...おいしい...」
「そうか」
若干嬉しそうに竜馬が言う。
「ま、まあまあよ、まあまあ」
「取り上げんぞ」
「それだけはやめて!お腹空いてるから!」
取り上げられそうになったが、涙目で頼みなんとか守ることができた。そのまま夕食を終え、空が暗くなったころ。
「...母さん...今頃どうしてるかなぁ...」
夜空に浮かび上がった星を見ながら、随分会っていない母のことを思う。
「寂しいか?」
「少しね。私が小さい頃から女手ひとつで育ててくれて、いつも優しくしてくれた。忙しいだろうに、遊園地とか水族館とかも連れていってくれてね...今思えば、最近行ってないなぁ...」
最近は研究に没頭しすぎてそんなところは全く行っていなかった。母と一緒に遊んだ日々が、遠く感じる。
「安心しろ。必ず帰れるようにしてやるよ」
「...あ、ありがと」
そう言ってくれた竜馬はとてもかっこよく見えて、頼もしかった。ちょっと気恥ずかしくなり、顔を伏せる。
「え、えっと、竜馬の親はどうしてるの?」
「死んださ」
「...え?」
照れ隠しに軽く言った質問が、重い返答で来たため言葉に詰まる。
「父親も母親も目の前で死んだ。気にするな、こっちの世界じゃ珍しいことじゃない」
「...」
淡々と、本当に何も気にしてないように話す竜馬の横顔は、とても寂しく感じた。その姿を見てると、胸が締め付けられるような痛みを抱く。まるで、自分のことのように。慰めようと言葉を探すが、何も浮かんでこない。
「ほら、もう寝ろ。明日も長時間歩くんだからな」
「う、うん...」
その日の夜、あまり眠ることができなかった。
*
森を歩いて数日、その間森のいろんな食べ物を口にしながらメイリータ王国へと赴いていた。中には怪しい色のキノコだったり気持ち悪い芋虫だったり。後者はさすがに食べなかったが、こういうのを食べていると地球での料理が恋しく感じてくる。
あの夜の話から、私は竜馬に申し訳ない気持ちがあったが、竜馬は気にしていないようだった。
いつも通り森の中を歩いていると、竜馬が私を守るように前に立つ。
「ど、どうしたの?」
「俺の後ろにいろ。来るぞ」
一体何が、と言おうとして、音を立てながら何かが接近してくるのが分かり口を閉ざす。そして、茂みをかき分け、大きな影が木々の隙間から現れた。高さは1m半ばくらいだろうか、体毛の多いずんぐりとした体を細い四本の足で支えており、大きな鼻は前に突き出ている。口から生えている太い牙は上の方向に生えており凶暴さをより引き立たせていた。その姿はイノシシに酷似してはいるが、地球にいるイノシシより明らかに大きく凶暴そうだ。
「フゴオオオオオオオオオオオ!!!」
イノシシは私達を見るやいなや叫び声を上げ突進してくる。数十メートル離れた位置だというのに凄まじい速度で距離を詰め、もうすぐでぶつかる寸前竜馬が前に出てイノシシを片手で止める。
「プギッ!」
突進を真正面から受け止められ驚いたのか、イノシシから小さな悲鳴が出た。そのまま竜馬はゲイルウルフを取り出しイノシシに発砲する。乾いた音がしたあと、イノシシは痙攣し、やがて動かなくなった。
「さ、さすがね...」
「大して強くはなかったな。だがこいつだけじゃない、まだ気を抜くな」
直後、周囲の茂みから数匹のイノシシが姿を現す。既に竜馬が殺したイノシシよりも一回りや二回り小さいが、気迫は劣っていない。
「全部で...四匹かしら」
「おそらくつがいと子供だろうな。体格差からして可能性が高い」
数匹のイノシシは、竜馬の足元に転がっているイノシシを見た後、鳴き声を上げ睨みつけてくる。多分怒っているのだろう。
「ち、めんどくせぇな」
竜馬は二丁目も取り出し、イノシシたちに向けて銃を構えた。その時、ヒュ!っと音がした後、一匹のイノシシの頭に何かが刺さり、イノシシは力なく倒れる。
(あれは...矢?)
木の棒と鳥の羽のような物が先端に付けられている。直後、三本の矢が残りのイノシシの頭に刺さる。やがて、すべてのイノシシが地面へと倒れた。
しばらくした後、木の上から物音が聞こえ、何かが目の前に降りてきた。降りてきたのは、布の服の上に皮でできているだろう防具を身に着け、上に短めのマントを羽織っている少女。青い瞳は丸っこく、腰にまで届くふわふわとしていそうな白い髪が、穏やかそうなイメージを抱く。手には丈夫そうな弓を持っており、腰に剣らしきものを付けている。
(ひ、人だ!)
その少女を一瞥した後、竜馬が拳銃を少女に突きつける。すると、少女は慌てたように両手を振り、頭を左右に振った。
「△○△□✕✕○□!□□○△✕○□○✕△△!」
私が知っている言語ではなく、何を話しているかは分からないが、涙目で訴える少女に悪意は感じない。
「ちょっと!何してるのよ!」
「何者かわからない以上警戒はするべきだ」
「でも見た感じ悪意はなさそうよ?」
「演技だった場合は?」
「だからっていきなり銃を突きつける!?やめてあげてよ!」
「...」
渋々、といった感じで竜馬が銃をしまう。それを見た少女は安堵しているようだ。
「○○△、□〇◇×〇△□□〇、〇××□△◇◇〇×□〇△△」
何かを話した後、少女が歩き出し手招きをする。どうやらついてきてほしいようだ。
「えっと、どうする?ついてきてほしいようだけど」
「罠って可能性もあるが、行った方がいいだろうな。お前の言う通り、敵意は感じない」
ひとまずついていくことにした私たちは少女の後ろをついて行った。
#
(うぅ...まさか異国の人がいるなんて...)
副団長の依頼を受け、イシェブルク森林に赴いた私、ルナ・バルリエは調査を続けていた。邪竜と思しき魔力の放出で多少獣たちは狂暴になってはいたが、大きな災害になりそうな予感はしなかった。生態系もとくに変化はなく、異常は確認できなかったため、帰還しようと帰っている最中、「ドパンッ!」と耳が痛い音がしたのだ。状況を知るため急いで駆けつけると、見慣れない服装をした青年と幼い少女が数匹のイノシシに囲まれていた。助けなくては、という使命感を抱いた私は即座にイノシシを討伐したのだが、青年に武器と思しきものを向けられてしまった。どうやら青年は私を警戒してるらしく、常に私の動きを注意深く観察している。
(こ、この人怖いよぉ...)
少女は赤く長い髪を左右で結んでおり、くりっと丸っこい黄色の瞳が幼さを引き立たせている。もちもちとしていそうなほっぺたは幼い少女特有で、非常に可愛い。将来魅惑の女性になるだろう推定10歳くらいだろう美少女の横には絶世の美青年。白い髪をオールバックにし、黄色の目は鷹のように鋭い。もし、町中で一目見るだけなら私は見惚れていたかも知れないが、強面で、人を殺せてしまいそうな視線のせいで緊張感の方が勝っている。
かといって、困っていそうな人を放っておけるような性格でもない。
(我慢、我慢よルナ・バルリエ...!)
狂暴な動物がうろついている森で突っ立っているわけにもいかないので、安全な場所である私が拠点にしている場所に案内している。その最中も常に監視されているため緊張する。
「〇××△□○○◇〇△×△?」
「△〇□□、〇□◇◇△×△□○○×△□〇◇××〇...」
(何話してるんだろう...)
後ろで、青年と少女が会話をしている。何を話しているのが分からないので、意味を理解することができない。多少もどかしさを感じながら、拠点にしている洞窟へとたどり着く。入口は茂みが多いため見つかりにくく、中も少し広い。風通しが少し悪いのが短所ではあるが、それは私の風魔法で何とかなる。
「着きました、ここが私の拠点です。遠慮せずに荷物を置いてください」
「...〇△〇□、○○◇×□〇△◇△〇××」
少女が何かを喋っているが意味が分からない。どうやら私の言っている意味が分からないみたいで、荷物も置く気配がない。
「え、えっと...どうすれば伝わるのかな...」
とりあえず、精一杯体と腕を使って表現する。数十秒の努力の結果伝わったのか、二人は恐る恐る荷物を置く。
「コホン...えっと、お二人はどうしてこの森にいるのですか?」
「...○△△、✕◇○□□△✕○□△✕○○」
そもそもとしてこの森の付近に集落などはないはずだ。あったとしても、この森は一般人には危険なため基本的に入ることはないはず。しかし、服装的に王国付近のものではないため、旅人と考えるのが自然だ。しかし、わざわざ森に入る理由が分からない。少女が何かを喋りながら頭を抱えている。残念ながら聞き取ることはできない。
「うーん...私メイリータ語しか喋れないからなぁ...」
私はメイリータ王国から他国へ行ったことがないので、他の言語は知らない。なので、この二人がどこの言語を喋っているのかもわからない。
「○✕✕△、メイリータ◇△□□○✕○?」
しかし、私が呟いた後少女が少し食い気味で何かを言ってきた。その中に、メイリータという言葉があったのを聞き取る。
(もしかして、メイリータ王国のことは知ってるのかな?)
メイリータ王国のことを知っているのなら多少意思疎通はできるかも知れない。そんな希望を見出し、話を変える。
「えっと、私はメイリータ王国から来た、ルナ・バルリエと言います。メイリータ騎士団の弓兵隊に所属していて、任務でこの森を調査しに来ました」
「○✕✕□△□、メイリータ◇○△✕○□△△○✕◇□○△✕□✕○」
少女が少し顔を曇らせながら何かを言う。やはり、メイリータという単語に反応しているようだ。
「...〇〇✕□、◇○✕△△✕○◇」
青年が、何かを話しながら古い手帳を渡される。恐る恐るページを捲ると、メイリータ語の単語がいくつか書かれていた。幸い文字に関してはある程度教育をされているため多少は読めるのだが、ところどころ読めない箇所があった。というより、文字自体がかなり古く、歴史書に出てくるような文字だらけだったのだ。
青年は手帳に書かれている単語らをなぞり、ジェスチャーで発音するよう促してくる。
(これらを言えばいいのかな...?)
手帳に書かれた単語を私は読み上げていった。