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最強のボディーガードと共に異世界探索  作者: 幼女好きのロリコン
1章~メイリータ王国編~
12/19

2話 神宮寺 竜馬

 竜が炎をまとった後、俺に対し鉤爪で攻撃してくる。しかしその鉤爪は俺をすり抜け、ダメージを与えることはできない。あらゆる攻撃は俺に対して意味をなさないので、この竜のやっていることは無駄である。だが、同時にこちらも竜に対して有効打がない。いや、正確にはあるのだが...このままだといつになったらこの戦闘が終わるかわからない。


(炎を巧みに操ってるとこからみてもRPGはあまり効果がなさそうだな...)


 この竜に傷を与えようとなると、戦車くらい持ってこないと厳しい気がする。こうなったら比較的鱗の少ない場所を攻撃するしかないだろう。そう思い、対物ライフルを持とうとするが、あまりの高温で溶けはじめていた。


(どんな温度だよ...)


 俺は温度の影響を受けないため、ダメージは受けてないのだが銃は影響を受ける。こうなってしまっては銃による攻撃はかなり難しいだろう。


『仕方ねぇな』


 俺はライフルをしまう。あまりこの方法は使いたくなかったのだが、そうも言ってられない。俺は竜の頭に近づき...黒い炎をまとった拳で地面に向かって殴りつけた。瞬間竜の巨体が地面と激突し、轟音と振動を生み出す。


『あまりこの手は使いたくなかったんだが...つべこべ言ってられねぇしな』


 この熱量、下手すれば紗月にまで影響がありそうなので早々に片付ける必要がある。地面へと叩きつけた竜に追い打ちをかけるため地面へと転移しもう一度上空へ蹴り飛ばす。


『ぐおおっ!貴様、我を殴るなどどれほどの怪力を持っている!?』

『結構重たかったぜ?少なくともミサイルよりかは重量があると思うぞ』


 俺は懐にもぐり更に上へ蹴り上げる。


『ぐうぅっ!』


 竜もただ殴られるだけでなく、巨大な炎の球を無数にぶつけてくる。どれも効かないが。


『貴様...一体何者だ。我に傷を負わせるなど...』

『本当にしぶといな。いい加減くたばれよ』


 俺の攻撃はあらゆる物質を崩壊させる力を持っているため、殺傷能力に関しては非常に高い。しかしこれらの攻撃方法は周りに及ぼす影響が大きく、下手をすればこの山が吹き飛んだり自然が破壊されたりする。それに紗月のことも守らねばならない。少し様子を見てみたが、顔色が悪く体調が悪いようだ。早々に終わらせなければ。


『なあ、最後に警告しておくぞ。大人しくここから引いてくれ。じゃないと死ぬぞ』

『我が死ぬ?まさか攻撃が通らぬだけで勝ったつもりでいるつもりか?笑止!』


 竜は翼を大きく広げ、天空へと羽ばたく。そして太陽の光を遮るように翼を広げ、周囲に見慣れない魔法陣のようなものを展開し、光線を放ってくる。だが、そのすべてが俺をすり抜けていく。


『何故だ!何故効かぬ!』

『...忠告はしたぞ』


 俺は能力で次元を引き裂き、自分の空間からとある武器を取り出す。それは漆黒で装飾された、3尺ほどの闇をまとう刀だった。その刀が出現した瞬間世界が漆黒に覆われ、空が赤くなる。


『ま、待て...まさかその刀は...な、なぜ貴様が持っている!?』

『あぁ?知ってんのか?この刀を』


 どうやらこの竜は刀のことを知っているらしい。この刀を知ってるのは俺だけのはずだが。何故知っているのか疑問に思ったが今は考え事をしている場合ではないだろう。その疑問を頭の隅へとやり、俺は鞘を手に取り帯刀し、居合の構えを取る。


『こ、この魔力...まさか貴様、いやあなた様は...!?』


 一閃。刹那、竜の巨体を刀で斬り鞘にしまう。時間にしてコンマ一秒にすら満たないだろう。直後、斬り口から空間が裂け、周囲の空気を飲み込んでいく。竜の巨体も例外ではなく、体のすべてが飲み込まれ、消失した。


(チッ、だいぶ加減したっつうのにこの威力かよ)


 吸い込む威力はさらに増し、雲や山の岩を飲み込んでいく。こうなると俺も止める手段がなく自然消滅を待つしかないためあまり使いたくない手なのだ。刀をしまい、俺は紗月の隠れてる草むらに急行し容態を見る。


『おい、大丈夫か?』

「え、ええ、まだ大丈夫よ。いろいろ聞きたいことがあるけれど、まずは休みたいわね...」

『分かった。ひとまず建物に運ぶぞ』


 俺は紗月を担ぎ、慎重に中央の建物へと運んだ。


 #


 いったい何がなんだかわからなかった。時間にして数分ほどだろうか、最初のうちは「死神」が銃で応戦しているのが遠目から見ても分かっていたが、竜が炎をまとい始めてから全然捉えられなかった。気づいたら竜が地面に叩き落されているし気づいたら竜が空に叩き上げられてるし急に空が暗くなったと思ったら変な裂け目ができてるし。とても現実とは思えない光景にもはや夢なのではと疑ってしまう。


「うぅ...頭痛い...」


 先程から体調が悪化しており、痛みが増している。内側から鈍器で叩かれている気分だ。まだ耐えられるが、今すぐにでも横になって寝たい。


『ほら、横になっとけ』


「死神」が廃墟のベッドへと運んでくれた。多少掃除してくれたとはいえ経年劣化したベッドであるが。しかしそれを気にするほど余裕があった訳ではなく、横になった途端私の意識は途切れた。


 *


「うぅーん...」


 目が覚めると、見知らぬ建物の中にいた。なぜここにいるのか意識を失う前の状態を思い出す。


(そうだ...ここは廃墟だったっけ)


 いったいなんの廃墟かは分からないが、壁や天井は経年劣化で至るところに穴が空いており、苔が生い茂っている。しかし空間が広く、劣化したとはいえベッドの装飾が豪華だった面影があることから何か身分の高い者が住んでいた感じがある。


(あれ?「死神」はどこに...)


 あたりを見渡しても「死神」がいない。とりあえず何もすることがないので部屋を出て、建物から出るために出口を探す。しかし中がやたら広いせいでどこが出口へと繋がっているのかわからない。いくつも部屋が別れているのでどこがどこだかわからないのだ。多少回ってみたところ、書庫らしき部屋や食堂、豪華そうな個室らしき部屋がいくつかあった。経年劣化などでどれもかつての雰囲気は残っていないのだろうが、大まかにどういった部屋かは推測できる。そういった部屋を見送りながら出口と思しき扉を開けると...そこはテラスであった。長年手入れがされていないテラスは至るところに苔が生い茂っており、床などが侵食されている。そして中央にある円形の机を囲むようにおいてある複数の椅子に「死神」は座っていた。私は「死神」の隣の椅子へと近づき座る。


『起きたか』

「ええ、気分は最高よ。よく寝たからかは知らないけど、頭がすっきりするのよね」


 寝る前は死ぬほど気分が悪かったのだが、今は絶好調だ。不思議と力が湧いてくる。ふと自分はどれだけ寝ていたのか気になり、ポケットにあるスマホを取り出し時間を確認する。表記では03:31とあった。外は真っ暗だ。


「長いこと寝てたのね。ちょっと体が痛いわ」

『悪いな、一番まともなベッドはあそこだけだったんだ』


「死神」はこちらに向くことなく(正確にはどこを向いてるか分からないが、顔あたりにある仮面と勘で大体の方向を予測している)返事をし、手元にある本を読んでいる。


「なにそれ...なんの本?」


「死神」が持っている本はボロボロで、ところどころページが破れていた。


『この建物にあった本だ。見るか?』


「死神」が本の中身を見せてくる。


「な、なにこれ...」


 しかし中に書いてあったのは見知らぬ言語だった。少なくとも私が知っている言語ではない。


『俺もなんて書いてんのか分かんねぇ、だから翻訳してたところだ』

「ほ、翻訳?」


 未知の言語を翻訳するなど相当難易度が高い。そういう専門家でもない限り無理なのではと思ってしまう。だが、この「死神」ならいけそうな気がしなくもない。


『ああ。今俺たちの置かれている状況がわからない以上情報は少しでもほしい。それに、本ってのは重要な情報だ。解読しておいて損はねぇよ』

「ああそうだった。この状況について整理したいんだけど、一回話し合わない?」


 気を失う前の状況について考えるべき点が多すぎる。まずは「死神」とこの状況について考えなければいけない。それに、「死神」が持ってる力についても。


『...そうだな。こうなった以上もうこいつは必要ないな』


 そう言うと、「死神」は仮面に手を取り、カチッと音がした。手に取った瞬間炎が消え去り、青年男性ほどの体型が露わになる。そして「死神」が仮面を取った。白色の髪をオールバックにしており、整った顔立ちはまるで造られたように美しく、その黄色の目は心を見透かされていそうなほど鋭く神秘的であった。私は目の前の人物に心を奪われ...見惚れていた。


「...?どうした、ぼーっとして」

「え...?あっ、いや、なんでもないわよ!」


 見惚れていたことが非常に恥ずかしくなり、照れ隠しでそっぽを向きながら返事をする。まさか...「死神」がこんなにもイケメンだったとは思いもしなかった。


「それより!状況を整理するわよ!」


 正直全部夢なのではと思ってしまうが、しっかりと感覚があり自我がはっきりとあることから夢でないと何となく分かる。


「まず、ここは何なのかってところだろうな。俺は色んな所に来たことがあるがこんな場所は見たことがない」


「死神」が本を解読しながら言う。


「確か私達はマナジェネレーターの実験中に事件が起きて、気づいたらここにいた。間違いないわよね?」

「ああ。実験場から、ここに移動してた。まるで転移したみたいにな」

「それで、巨大ムカデやドラゴンと遭遇した。めちゃくちゃね、現実味がないわ。それで、ここが何なのか3つほど仮説を立てたわ。1つ目が、これは現実じゃないってこと。まあ、可能性は低いでしょうけどね」

「だろうな。夢と決定するにはあまりにもリアルだ。可能性としてはなくはないだろうが」

「2つ目に、マナジェネレーターの実験から何千年何万年と経過した後の世界。それか太古の世界か。まあこれも可能性は薄いと思うわ」


 まず太古の世界というのはないだろう。巨大ムカデならともかくドラゴンなどいるはずがない。もしいたのなら現代でドラゴンの化石が出ないのはなぜかという疑問が残る。では未来かと言われるとそうでもないだろう。いくら時がたったとしてもあのような物理法則に反していそうな生き物は誕生しないだろう。そう、世界の法則でも変わらない限り。


「そうだな。で、3つ目は?」

「...マナジェネレーターの爆発に巻き込まれた際、地球とは違う別世界に飛んだ、という説よ」


 正直に言って馬鹿げた話だ。過去、異世界があるという話は聞いたことがない。だが、巨大なムカデ、そしてファンタジーで出てくるドラゴン。地球には存在しない生物であるが、ここが地球ではないとなるとこれらの生物がいることの証明になる。それに...


「思ったんだけど、地球にあったマナ...もともとは、別の世界から来たエネルギーだったんじゃないの?」

「...一理あるな」


 そもそもとしてマナに関して不明な点が多い。考えてみればマナは地球から生まれたとは思えないほど変わったエネルギーだった。


「そして、マナがどこから来たか...それは、今私達がいるこの世界じゃないかしら」

「...まあ、そうだろうな。他に仮説も浮かばねぇし、ひとまず別世界と仮定して話を進めるぞ。次は何をするかだ」

「そんなの決まってるわ。地球に戻る。それ以外にある?」

「俺が言ってるのは今だ。地球に戻るにしてもどうやって?それに佐々木もどこにいるか分からん以上、早々に帰るわけには行かねぇだろ」

「...おじさん」


 結局、ここに来るまでにおじさんの姿は見えなかった。近くにいるのか、それとも私達とは違う場所に飛んだのか。最悪私達とはまた違う世界に飛んでいる可能性も...


「とりあえずまずは情報収集だ。何をするにしても何も情報がなければ危険だ。未知の世界となると地球の常識は通用しないと思ったほうがいい。手当り次第情報を手に入れるぞ」


 そう「死神」が言いながら相変わらず本の解読をしている。


「その、そういえばなんだけどさ、なんで急に仮面を取ったの?地球にいたときは取らなかったなのに」


 地球にいたときは頑なに仮面を取らなかった「死神」。しかし、なぜここに来て仮面を取ったのか不思議だった。


「地球ではいつどこで見られてるかわからねぇからな、顔がバレると色々大変なんだよ。それに、依頼中は基本仮面をつけるようにしてるんだ」

「へぇ。でもまだ依頼は終わってないわよね?」


 こんなハプニングに合ってしまったが依頼はまだ終わっていないはずだ。


「不要だからな。お前しかいねぇし、誰かに見られてるわけでもなさそうだしな」


 お前しかいない。その言葉を聞いて、この場には「死神」と私だけしかいないと改めて理解するとなぜだが無性に恥ずかしくなってくる。


「...ふ、ふーん。ね、ねえ。じゃあさ、そろそろ名前を教えてくれても...いいんじゃない?」


 恥ずかしさを紛らわすために話題を変える。いままで「死神」と呼んできたが、明らかに本名ではないだろう。今までは本名を教えてくれなかったが、仮面を外した今なら教えてくれると思った。


「...神宮寺 竜馬(しんぐうじ りょうま)。それが俺の名前だ」

「神宮寺...竜馬...」


 復唱する。いい名前だと思った。


「えっと...じゃあ、竜馬って...言っていい?」

「好きに呼べ」


 そっけない返事だが、私は嬉しかった。


(そっか...竜馬って言うんだ)


 名前を聞けた。それだけだと言うのに、なぜか私は無性に嬉しかった。そしてなぜか、胸の鼓動が早くなっている気がした。


(なんだろう...この気持ち...)


 嬉しさとは少し違う、でも、怒りでも悲しさでもない。言葉では表現できない、感情。この時の私には、この感情がどんなものかわからなかった。


 #


 ヒュオオオオと強い風の音が響く銀白の世界。強い雪風が吹くその雪原に、ポツンと一人の少女が立っていた。雪原の中だと言うのに来ている服は露出度が高く、生地もあたたかそうには思えない。背丈は平均よりも少し小柄で、体格も細い。その白い肌に水色の透き通った長く柔らかそうな髪は神々しさを醸し出しており、両目は閉じられている。外見よりも年上のような雰囲気を出しているその少女は、豪華な装飾を施された笛を吹いていた。

 一曲吹いた後、少女は閉じていた目を開け、雪景色を見る。髪と同じ色をした瞳は鋭く冷徹そうな印象を抱く。


「...この方角は...南から、でしょうか」


 少女から発せられた言葉は冷たい氷のように冷たく、感情を読み取ることができない。その両の目は、南の方に向けられている。


 ⦅これは多分イシェブルク辺りかな?⦆


 少女の脳内で声変わり前の少年の声が響く。少女の声とは対象的に明るく、陽気な印象を得る。


「おそらくそうでしょう。確かあそこにはエンシェントドラゴンが生息してるはずです」

 ⦅でもドラゴンはここまでの魔力は出せなくない?⦆


 刹那の間、世界を揺るがすほどの魔力が放出されたのを少女たちは感知していた。


「別の存在でしょう。しかし、このような魔力は感じたことがありません。いったい...」

 ⦅でもなぜかは知らないけど懐かしいような感覚がするね。他の3人は気づいてるかな?⦆

「おそらく気づいているでしょう。一瞬とはいえこれほどの魔力、見逃すはずがありません」


 少女は笛をしまい、南とは反対方向に向く。


「これは、見極める必要があるでしょう」


 少女は歩く。少女が過ぎ去った後、先程まで吹いていた雪風はまるで最初からなかったかのように止んでいた。

質問コーナー 紗月宛て

Q,紗月さんは虫に詳しい研究者の知り合いがいるそうですがどんな人でしょうか?また他にどんなお話しを聞きましたか?

A,紗月「一言で言うと昆虫マニアね。聞いた話だと小さい頃からよく昆虫を捕まえてたらしいわよ。虫のことになるとすごい早口で説明してくるのよね。家でも昆虫をたくさん飼ってるらしいわ。信じられないけどイナゴとかを飼って食べたりするって聞いたわよ...彼から聞いた話で印象に残ったのは...トゲアリトゲナシトゲトゲ...だったかしら?そんな名前の昆虫ね。名前から矛盾してたから多少興味が湧いたのを覚えてるわ」

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