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3/3

コンビニと少年

帰宅中は特にゴブリンに襲われるということも無く、誰かが襲われている時の叫び声は時折聞こえてくるが、俺の近くに近寄って来ることはなかった。


お陰で家へは安全に戻ることができ、俺は疲れのせいかベッドに身を休めると一瞬で睡魔に襲われた。


そして、朝がきた。


目を覚ますと既に辺りは明るくなっていて、体も不思議と回復していた。何よりも毎日のように悩まされていた肩こりが嘘のように消えているのはさしぶりに運動をしたお陰なのかな?運動は健康に良いと聞くけどこうも早くに効果を実感できるものなのか疑問が残るが、調子がいいのなら問題はない。


「さて、今日もゴブリン狩りに行きますかね」


今日は昨日の反省を活かしてちゃんとした武器になりえるものを手に家を出た。机を支える鉄の棒だ。なんで?って聞かれるかもしないが、長くて頑丈な武器といえば我が家にはこれしかない。最初はナイフも良いかと思ったけどリーチが短くて怖い。万が一ゴブリンの持つナイフが当たったり、爪で引っ掻かれたりすると恐らく治療が困難なこの世界では命取りだ。あと、純粋に病原菌とか持ってたら怖いしね。


ナイフを使わない理由、言い訳は置いておいてまずは今日するべきことを確認しようではないか。


・食料調達

・ゴブリン狩り

・避難場所の確認

・他のモンスターがいないか調査


これらは一応、メモ書きして持ってきている。慌てている時や疲れている時は忘れてしまう可能性がある。


まず第1に考えなければいけないのは食料調達だ。家はカップラーメンばかりで肝心のお湯が今は沸かせない。電力が無いと冷蔵庫も動かないわけで、今朝見た時はまだ悪臭はしなかったが明日になれば殆どの食材は食べれなくなるだろう。だから冷やす必要のない缶詰や菓子類を早いところ集めなければならない。


「準備よし、腹ごしらえよし、方向よし」


ひとまずは近くのコンビニを周回するのが1番手っ取り早そうだ。もう既に漁られて何も無くなっている可能性は十分に有り得るが、行ってみる他ないだろう。


昨夜、ステータスの速度の項目を3に上げたお陰か本来10分程度歩く必要のある近隣のコンビニまでの道のりを今日はたったの3分で到着することができた。


移動時間短縮という面でも相当に役に立つ速度のパラメーターはあっぱれである。やはり速度にポイントを消費したのは間違えでは無かったようだ。


コンビニの前まで来てみると中にまだ品物が並んでいるのが窺える。ラッキーなようで、荒らされた痕跡も無さそうだ。


俺はコンビニの中へ入り、幾つか缶詰を家から持ってきた袋に入れて、外へ出ようとした。その時、


「おい、おっさん、何勝手に俺の島へ入ってんだ?ここは俺のだ」


コンビニの自動ドアにはよくそこら辺で見るような不良が待ち構えていた。いや、島ってなんすか。不良て縄張り的なのがあるの?島ってヤ〇ザ映画とかでしか聞いた事無いんだが。というツッコミは置いておいて、真面目に怖い。逃げたい。


「おっさん、盗んだものは全部置いていけ。あと、持ってるもんも全部な」


ニタリと不気味な笑みを浮かべて近寄ってくる少年。手に持っている血濡れの金属バットは彼が既にモンスターを狩った経験があることの証明であり、もし彼も俺と同じように速度へポイントを消費していた場合、この状況は非常に不味い。


不良少年に話しかけられること自体、今までで1度も経験したことがない。しかもステータスで強くなっているとしたらもう最悪中の最悪だ。鬼に金棒とはまさにこの事。何をされるかわかったもんじゃない。


「も、もちろんだ。全て置いておくから何もしないでくれ」


俺は持っていた袋はもちろん、武器用の棒も地面に置こうとしてしゃがんだ瞬間に棒で少年を叩いた。


「うがっ!」


「よっこらしょ、っと。ついでに足もやっとくか」


「や、やめてくれ!悪かった、謝るから」


棒に打たれて地面に倒れた少年はどうやら打ちどころが悪かったようで背中を押さえている。少年は暫く動くことはできないようで、俺が外へ出る時間はありそうだ。しかし、腰を押さえている手に武器を隠していないとも限らない。念には念をだ。


「ごめんよ、許してくれ?」


まるで罪悪感の無さげな声で少年に謝ると、俺は少年の足を蹴った。便器の泣き所を狙って蹴ったことによって、少年は痛みに転げ回る。


「まあ、これくらい痛がってるなら追ってこないよね」


大の大人が子供に対して攻撃。そして、容赦なく追い討ちをかました。本当に大人気ない。自分でも酷いことをしていることは理解しているが、今この世界ではある意味正しい判断とも言えるのではないだろうか。


「おまえ、絶対に許さないからな!」


何とも怖いことだ。後々粘着されたりとかしないかな?面倒なことにならない前に、、、、


「ま、まて、嘘だ。やめろ!助けてくれ、、」


俺は気がつくと棒を再び上へ持ち上げていた。そして次の瞬間、棒が少年の頭に振り落とされて当たるか当たらないかの絶妙なタイミングで俺の動きは止まった。


「あれ?今俺一体、、、」


何をしようとしていたのか。頭では分かっていても何故そのようなことが起こったのが分からない。


「俺、今人を殺そうとして、」


普通じゃない。人を殺そうとするなんて、普段ならありえない。電気が止まっただけで、ゴブリンが現れただけで、まだ社会が完全にストップしたとは決まっていない。それに、人を殺すことは犯罪であり、道徳的にも許されることじゃない。そして、第一に俺は昨日まで、停電してステータスが見えるようになるまで、俺は人を簡単に殺すことの出来るような人間じゃなかったはずだ。


「なにが起こっている?俺はこんなにも簡単に、、、」


うわあああ!と、発狂するほどではないが、発狂したくなるくらいに意味がわからない。自分で自分を見損なっている。お前は人殺しだ、と。きっとこれは世界が変わったからだ。きっと、これは不良に襲われて恐怖していたからだ。自分で自分にいくつもの言い訳を思い浮かべながら店を出た。


コンビニを振り返ることはなく、ひとまずは家に帰ることにした。一旦落ち着いて、また違う場所を探せばいい。まだゴブリンとは1匹とも出くわしてはいないが、また後でゴブリンとも戦うとしよう。


まだ家を出てから10分も経っていないというのに俺は何だか昨日よりもどっと疲れた気がしてゆっくりと歩いて戻った。

★★★★★★★

職業:影稼業

レア度:5


効果:知力+5


説明:

死と血と涙を元に財を成す。

★★★★★★★

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