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愛があればなんでも出来る!(かもしれない)

愛を語るドラゴン

神竜が知識を蓄え、多くの神々と談話をしているのを見ると何となく嬉しくなってしまう。自身で育てたも同じ、ゼロからの出発をして神々と同じく立場で会話をしている。

主神ですら同等の知性を持つものにはまだ会えていないらしい。

ふふふ、初めてあいつに勝てたわ、と内心ガッツポーズを決めていた。

ふと、神々と龍の声が黄色くなる。キャーキャーと。

「何について語っているの?」

その問いに答えたのは、己の神竜。

「愛です。オリジン様。」

「…へ?」

「皆様、番への気持ちについて知らぬというのです。」

「は、はぁ。」

「ただの強い子供を産むための行動とは異なる胸の鼓動。異性を前にして、ただその存在を思う心。これを愛と評したのです。」

「オリジンさまと主神様も愛してるからキスをしていたんですよね!」

「ああ、わたしは確かにそう聞いた!主神様がオリジンさまとのキスは愛があるものだと。」

「あ、アトム。あれは権能の移すための…」

「いえ、父上は母上を愛しておられる。それゆえ、あの数々の力を前にしてもオリジン様に笑顔を向けておられるのだと!」

「そうです!アトム様!私も目撃致しました!そして聞いたのです、マイハニーと。」

「マイハニーとは?」

「ハニーとはなんであるのか、マクスウェル様に問いました。それは蜂蜜であると。」

「ほうほう」

「おそらく、甘くとろけるような存在がオリジン様と言いたいのではないかと!」

「きゃーーーーーーーー!Love!Love!」

まずい。

これはまずい。

何がまずいって、完全に勘違いされているのと、神竜が愛の神になりかけているからだ。

「ちょいまち!私は彼になんとも思ってないし!むしろ仕事を押し付けられてる被害者…!」

「いえ、主神様からの愛を感じます。オリジンさま!どうかその愛を!受け取って!」

神竜がここまでロマンチストとは思わなんだ。このままでは、未来の結婚式場は神竜をモチーフにした銅像がたってしまうし、フラワーシャワーが爆竹もしくは火炎放射器になってしまう。

「ちがうったらーー!」

「何が違うんだい?マイハニー?」

そうやって後ろから近づいてくるのは130億年も仕事を押し付けてきた上司である。そしてセクハラ犯。

「違う。断じて違うわ。」

「つれないなーーー。マイハニー、僕は君に会った瞬間恋に落ちて、権能譲受にわざわざキスをしたんだ。」

「ああいうキスはノーカウントです。むしろ普通に渡してください。」

「あー!可愛い!」

そう言うと主神は私をだきあげ、玉座を向かっていく。その間にもチュッチュッとフレンチ・キスを繰り返す。

玉座の間はパタンと閉められ、外からきゃああああと愛を期待する声が聞こえてくる。

「なんのつもりですか。」

「いや、本気だよ?」

「仕事を押し付けておいて、なにを…」

「本気だもの。初めて見た時に可愛いと思ったんだけどさ。自分の世界作りであそこまで消耗すると思わないじゃん。本当なら君と子供たちを作りたかったんだけど、あの時はああするしかなかったのさ。」

思わないところで愛を囁かれる。顔は真っ赤だ。

「そんでもって、今から愛が問われるんだよ。ハニー」

「え」

そう言われると、押し寄せる何かを感じる。

アースに何かが近づいている!

「隕石?!」

オリジンとあろうものが気づかなかった!

「ここから、命の選別が始まる。愛があるか。知性があるか。強いものが残るのか、逞しい弱きものが残るのか。それだけで種族が残るかどうかが決められていく時代になる。」

「アトムに知らせます。ああ、ステラがいいかしら、隕石を恒星に…」

「もう間に合わないよ。だから、子供たちに任せよう。僕らはここで見守る。」

その鋭い目は神のそれだった。

「でも!テラが!あの子がここまで育てた星が!」

「星である限り、このようなことはよくある。ほら、外側にある星がいつもは重力で守っていたけど、さすがに止められなかったみたいだね。こうなると、無理に止めるなんてできない。それは君だってわかるだろう?」

「…分かります、ですが共に命を育んだものとして貴方は傷つかないのですか?!」

「辛いよ、ただ、今は耐える時代に入った。それを見守るのも神の業だ。」

「ああ、ああ。」

ボロボロと涙を流す。玉座から降りて、扉へ向かう。愛娘を抱きしめてあげたい。泣いてしまう、優しいテラだから。

「テラは強くなるよ。オリジン。」

「ですが、あの子は傷付いて、後悔し続けます。」

「それも神ゆえの宿命だよ。僕達は神々と精霊達のの成長を妨げてはならない。今こそ見守ろう。」

そうして扉に固い封印が作られた。

「しばらく、眠ろう。お互いに」

そう顔を大きな手でおおわれた。次第に意識が遠のいていく。



そうして、その日。

隕石がアースへ落ちた。衝撃で巻き上げられた土石は雲となって恒星から届く光をさえぎり、アースから熱を奪った。

氷河期と呼ばれるその時代。創世神とオリジンは沈黙することとなった。

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