みんなの星作り
神話みたいに書いていますが、宗教とかしていません。
そうして始まった3人の子供達との生活は実に大変であった。
マクスウェルはおそらく法則を司っているせいか、特にやることがないらしい。
だが、アトムとステラは大変だった。
「ああ、重くなり過ぎ…!」
「これはあまり使えなさそうですね…。どうしましょう、これ…。」
「いっそのこともっと重くして…」
「あ、光まで吸い込むブラックホールになっているわね。」
活動が至る所で行われているため、管理が難しいようなのだ。
「ううう、早くオリジン様の生活で使える分子を作り出します!」
「ええ。アトム、頑張りましょう。」
なぜ、この2人が焦っているのかというと
「私もあの馬鹿みたいにベッドとかで寝たいわ・・・」
と呟いたのが始まりだった。
3人ともベッドとはなんだ、眠るとはなんだ、馬鹿とはなんだ、神とはなんだ…。
子供の質問攻めが始まったのだ。
話しているうちに結局人間としての生活を説明する羽目になり、神殿に何もないこと。そして現時点ではそれを作り出すことができないことを3人は悔しがった。
「お母様が少しでも楽に生活できるように!」
そう話し合った結果、まずは多くの元素を作ることを始めたようだ。
たくさん作り始めるのは良いものの、勢い余って原子番号後半の危険物質が出来上がったり、重過ぎてブラックホールになっていった。
どうも、その種類を管理するものが必要そうだ。
「では、私からの提案よ。順番よく作ってみたら良いのよ。手当たり次第ではなくてね。軽いものから順当に。」
「はい!母上!早く惑星なるものを作れるだけの、分子を作って見せます!」
そうして試行錯誤の核融合が至る所で行われていった。そして純炭素で作られた炭のようなもので原子番号表ができていくのをみて、鉛筆とか紙とかができるまえに原子番号表ができたことに少しばかり罪悪感を感じた。
そうして自分自身に起こった変化も伝えておこう。
オリジンと自分に名付けを行った結果、全ての権能を持つものとして体が変化していったのである。
おそらく自分の中の女神像のようなものへ、顔が変わりスタイルも変わっていった。時間の流れに関しては顕著であった。一年くらいと感じていたのが1億年だったのだ。途中で目が覚めた馬鹿神にそれを指摘された。
「うまくやってるみたいじゃないか。もう2億年経ってるのにさ。」
「は?2億年…」
「あはははは!!自覚してなかったのか!宇宙の始まりを告げた全ての源。オリジン。君は僕並みの権限の持ち主だからね、時間感覚が人のままであるわけがない。」
「あなたが勝手に渡してきたんでしょうがああああ!」
「母上!落ち着いてください!」
「お父様は私たちを作ることもせず、寝ていた割にはそういうこと言うのですね。」
「…すいません。」
子供達にとっては、こいつは父親らしい。なんとも腹立たしい。まぁそんな父親も自覚があるのか、また引き篭もった。
「寝るなーーー!」
そうやって何億年か経った頃、初めて星団ができた。
アトムとステラのガッツポーズが忘れられない。恒星が惑星をまとめ始めたのだ。
惑星という概念ができたのでプラネタという概念の子を作ったので、尚更嬉しいようだ。
マクスウェルがその内容を見ていたようだ。法則をまとめ上げるこの子にとっては予知も可能なようで…。
「うーん、残念だけど。母上のお住まいだったような、星にはなれなさそうです。」
「なんで!?お姉さま!」
「恒星と惑星の距離がまずいのと、含有している分子構造がダメだね。ガスばっかりになっちゃってるところがあるし。」
生まれたばかりのプラネタはしょんぼりしている。
母にいいところを見せたかったのだろう。
オリジンはプラネタに話しかける。
「生命ができるような星は奇跡のような確率でしかできないわ。大丈夫、0ではないから頑張っていきましょう?」
「はい!」
そうやって試行錯誤を繰り返していった。たとえ、石ころばかりの星が出来上がっても、できたばかりの水が蒸発してしまっても、空気が止まらなくても。
そうして137億年、初めて大気と水をたたえた惑星が出来上がった。
その日は忘れられない、4人の子供達と水を確かめに行った。
「わ!つめた!」
「流体の水になるまでどれだけ苦労したか…」
「舐めてみようかな?」
「まだ大気が不安定ですが、一緒に作った月のおかげで安定しそうですね。お母様。もしかすると目標の星ができるかもしれません。」
そのマクスウェルの言葉に涙した。
故郷ではない星、だが故郷に似せて作った星。決して戻れないあの日々。きっと同じようにはならないだろう。
「ああ、そうね。生命の溢れる星になりますよう。」
その言葉はプラネタの心を揺さぶった。
「生命…」
思い描いた夢の星。神々の思いを重ねた星。
そしてプラネタから新たな権能が生まれた。惑星アースの意思となるものであった。