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獣人たちの祖、そして次世代の女達

天照の内情について


伏羲は妹を探していた。

「女媧!」

黒髪で下半身が蛇の彼女は美しい衣を来て、兄の来訪に答えた。

「兄様、どうなされましたか?」

「光の降りてくるのを見た。法案だが通ったのか?」

「ああ、不義理の件についてでございますね。」

獣人は様々な者がいる。彼らのようにドラゴンの血をひいた一見蛇のとの混血のように見えるものから、猫や犬、ネズミから狐。あらゆるも生き物の混血が見てわかるもの達が集う。

価値観が異なる彼らだったが、妖精でもなく、ドラゴンのような翼を持たず、人族のように統一した見た目では無いため、自然と集まってきた。だが、それは苛烈な争いとも付き合うことになった。

寿命も異なれば、元々食う食われの間だったもの達。そんな彼らが知性を持って、集まり大きな争いになった。その悲劇を止めたのが、伏羲と女媧であった。ドラゴンの力を持つ彼らは最初は力を持って各民族を押えつけたが、よく話を聞いたのだ。その治世は平等にして、誰しもが納得するものであった。法というものができる前から彼らは掟を作り、平穏な世を作り多くの民族をしたがえていた。

神の降臨に伴う法の契約が出来てからは神への法案をよく提出しており、その法案を出すのにいちいち粘土板を使うのに面倒さを感じ女媧は布を使い始めた。だが、それも満足いかず、伏羲は紆余曲折を経て紙を開発した。建築素材からでる木のクズを溶かし、片栗粉で固めるという神はよく墨を吸ってくれたし、何よりも省スペースに貢献した。

レクスとの仕事は半分は女媧と伏羲によるものであった。

そんな彼らの最近の困り事は男女の不義理であった。神竜の前で誓う男どもであったが、妻の妊娠中に不義理を行うものが多く出てきたのだ。それも良いというもの達もいたが、女達は納得できない。命をかけて出産をするというのに、男どもはその間に遊びほかの女と遊んでいる。自分達をなんだと思っている…そう苦情が増えてきたのだ。

伏羲の娘である御狐神双熾もその被害者であり、出産の時に夫が来ない上、帰ってこなかったのだ。泣く娘を見て怒り、他の女性陣の怒りも頂点に達していた事もあって法案を提出していた。

「兄様、個人的な恨みでこの法を提出したのではありませんよね。重ねて聞きますが。」

「ああ、社会問題だと思った。もちろんそのなかに娘が入っていたこともあるが、決して個人的な恨みではない。正義を重んじての事だ。」

「であれば、報告申しますね。レクス様からは不義理は許さぬ。ただ、伴侶が死んでいた場合は自由に再婚を許可する。」

「ふむ、未亡人の事までお考えとは流石だ。」

「そして、神竜様の追伸がありまして…」

「神竜様…とな。」

実はこの2人はニードホッグの子供である。故にその親友である神竜をよく見ていた。だからこそ、その本質をよく知っていた。愛の神であるとともに、覗き魔で、面白可笑しく恋をながめていることを。

「ええ、恐らくはレクス様が書いた後に書き込んだのでしょうね。ポエナ様の罪の証の痛みに耐えてでも、罪な愛に堕ちるものたちも私は見守りましょう。」

「…全くもってオリジン様の神獣とは思えぬ。」

「とはいえ、最後のドラゴンでございます。少しアレですが。」

「少しとは言えぬ。全く…レクス様の所だけ、民達に伝えよう。」

「はい。ああ、兄様。楽団達が新たな舞台を披露したいとのこと。ご都合の良い日を教えていただけますか?」

「ほう、それは楽しみだな。」

獣人達はドラゴンや妖精達にはないものを求めた結果、演劇や踊り、歌や演奏等文化を発展させていた。ドラゴニアにも留学生を送っているが、逆に芸に秀でたものたちを集め文化を発展させている。

「では、そうさな。次の満月の日にしようか。月明かりが美しく、踊りを魅せてくれる。」

「それは良いですね。伝えておきましょう。」

そんな彼らも老いには勝てず、この世を去る身支度をしていた。父であるニードホッグもこの世を去り、妖精郷の長も世を去った。次に長命であった彼らも鱗が落ちる年になっていた。

そのために次世代の長を選び、法をまとめることで地の安寧を願ったのだ。文化も民族を超えた感動を求めた結果の副産物だった。

「西王母、聞きましたね。手配をお願いできますか。」

「ええ、もちろんです。お母様。」

虎の耳、虎のしっぽ、そして牙を持つ彼女は女媧の養女である。その頭脳は誰しもが認めていて、女媧と 伏羲の信頼を得ている上に誰しもが次の長と認めている。

「流石ですね、西王母。貴女のような娘がいて母は幸せです。」

「私もですわ。お母様。」

「さて、この法。妲己に伝えねばなりませんね。」

「頭が痛くなりますが…彼女のためです。私が伝えてきましょう。」

西王母は母親に礼をして、去っていく。

妲己は彼女の幼馴染である。狐の獣人であり絶世の美少女である。顔に惚れる輩もいれば、彼女の体型に惚れるものも、しっぽの豊かな揉み心地に惚れるやからもいる。要するに獣人の中のアイドルなのである。しかもトラブルメイカー。

「妲己が法で痛めつけられなければいいのですが…」

西王母はいつも幼馴染である彼女を心配していたが、伏羲様が正式に神に法案を提出したのでは彼女をこれ以上庇うことはできない。急いで妲己の元へ向かう。

「妲己!妲己はいますか!」

「…はぁーい!あ、西王母じゃない。」

そんな彼女は衣服が乱れていて何をしていたか直ぐに分かってしまう。

「もう昼です。身なりを整えなさい。」

「わかったわ。ふぁー!もう昼なのねー!」

自由を愛する彼女のあり方に救われた事も多いが、さすがに今回の事案は彼女の生き方に関わってくる。

妲己の娘と思われる小さな狐の獣人がお茶を用意してきてくれた。

「ありがとう。」

「いえ、西王母様。こんなものしか用意できませんが…母のためにいつもありがとうございます。」

「私も彼女の奔放さに救われています。今度は私が救わねばならないのですよ。それが友人ですから。」

「ありがとうございます…!」

ぺこりと礼をすると奥に下がっていく。

ジャスミンのお茶を飲むと優しい味がする。

「娘さんがよく出来ているのに、母親はそろそろ身をわきまえては?」

「ふふふっ!私の子供はよく出来た子でしょう?父親に似たのねー。」

西王母が振り向くと、美しい衣を着た妲己がいた。

「この度、不義理に対する神との契約が出来ました。」

「えーーー!そんなの守ってたら、好きな人に好きと言えなくなるじゃない。」

向かいの席に座る妲己は不満そうだ。

「好きなものは好き。そんな気持ちを黙っておけというの?」

「逆に我慢を知らぬ男どもが女を裏切っているのです。皆が貴女のような優しさを持ちませんから。」

「全く、楽しみが減っていくわねぇ。駆け引きが楽しいのよ。歌や芸、囲碁で私と遊ぶために奮闘する輩を楽しんでいるのにね。」

「皆が貴女のように恐ろしく高貴な花であればいいのですが、野に咲く花に夢中になって自らの農園を疎かにする。」

「あーあ、一つの時代が去るか。新しい遊びを見つけなきゃね。」

「貴女もその秀でた芸をもってすれば、歴史に残るでしょうに。新たな流行を作ってみては?」

「そうねー…それもいいけど。」

机の上に生けてあった大きな菊の花を持って彼女は考える。

「この際、服の流行りを作ってやろうかしら。花のような女性を増やしてやる。」

「…そのように方針転換するのなら友人として応援できます。」

「なら、他の国々に関わるあの文化交流団に混ぜてよ!」

「服によります。輸出するに値するものであれば自信を持って出すことができますから。」

「よーっし!やってやろうじゃない!」

ガタンと椅子を蹴って、立ち上がる妲己を見て西王母は笑う。

「いつも貴女は自由な思想で楽しそうだわ。今回のことがあって、落ち込んでしまうと思っていたのだけど。」

「私はいつも楽しくありたいのよ!貴女みたいに賢くもないしさ。」

「私は…賢くはありません。ただ、守るものをみた。それだけです。」

「守る…ね。なら私は守られずに自由に商売してあなたの背中を守ってやろうじゃないの。だって」

「「私達は朋友」」

お互いにフフフと笑う。

「私たち、お互いに孤児だったのにね。いつしか歩む道が別れてしまった。」

「けれど、お互いに苦しい時は守ると約束したもの。自由の身でしかわからないこともあるわ。貴女の敵を私は落としてきたのだけど、これからはそれができない。なら金で応援するわ。」

「ありがとう。私は貴女たち親子が自由に動けるようにこの国を守りましょう。」

お茶の中のジャスミンの花は咲き切っていた。

「さて、いい絹を探しに行きますか!」

「金はありますか?」

「そりゃあ、もう沢山よ!天下の美女、妲己よ。貢がれたものは多い。それを元手に女ならではの商売をしてやるわ!」

「わかりました。私もいい服が欲しいわね、戴冠式の時に着る服が。」

「おや、最初の商売相手が皇帝様か。いいわね。縁起がいい!」

「では、私の服をお願いします。ああ、あの子にもお茶のお礼を伝えてもらえるかしら?」

「ええ、あの子も皇帝の服を作れるとなればよろこぶわ。」

「では行くわね。」

「ええ、まっててね。」

そうして西王母は去っていった。友人としての最後の訪問だったのかもしれない。

とはいえまだまだ寿命はある2人。いくらでも会う機会はあるし、作れると信じる。

ふん、伏羲様と神がいくら法を作ろうとも私を縛ることは出来ないんだから!

西王母は最高の女帝と呼ばれ、妲己は最初のデザイナーと言われることになる。

その2人朋友と知るものは少ない。


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