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神々との対話で

なんでこうなったのかわからない佐藤瞳の人間としての最後の叫び。

ふと目が覚める。体が押しつぶされて、激痛の中死んだにもかかわらず痛みはない。手も足も無傷だ。

そして今までいたはずのコンビニではない、神殿のような場所にあることが不思議だった。

「病院じゃないし、怪我も治っているし。何が起こったの?」

ふと悩んでいると、後ろから声をかけられた。

「あの、貴女どうしてここに?」

そう話しかける人を見て、コスプレかと思った。いわゆる天使の格好である。

「…あの、混乱しているみたいで…夢でも見ているのかしら…」

「ここでは夢も何もありませんよ。ここは天界です。神や天使が夢を見るわけないですし」

「テンカイ…????」

「そうです、天界です。貴女の母国語では天国とも言われている場所です。」

「なんで!?私、死んでしまったの?」

「そうだと思われるのですが、審判の扉での監査は受けましたか?」

「???」

知らない用語が出てくる。

「なんですかね、監査など受けておりませんし…何よりも事故にあったかと思ったらここにいたんです。」

「えええ、ではすっ飛ばしてきてしまったんですか?審判の扉を!」

「よくわからないですが、そういうことになるんでしょうか?」

頭を抱えた天使は私をじっくり眺めると

「あれ、変ですね。貴女、寿命がまだあるはずだし…何よりも信仰の力を感じます。」

何を言っているのかわからない。前半の言葉はなんとなくわかるが、後半の信仰など知らないのだ。

「私、宗教とかしていませんが…」

「いえ、人にしては…異様です。よくわかりませんので、上司と相談してきます。少し別室でお待ちください。」

そう言われるがままに神殿の中を進んでいくと、小さな部屋に通され、極上のソファーに座るように促された。

…とっても座り心地がいいんですけど…

「ここでお待ちくださいね。」

そう言われて、出された飲み物を飲む。

「な・・・何この飲み物!爽やかだし…美味しい!」

この世のものと思えぬ、ソファーに加えこのような飲み物まで出されるとここが天国と納得してしまいそうになる。しかし、審判の門といい、信仰の力といい聞き慣れぬ言葉ばかりを言われて気になる。

「普通の死に方じゃなかったし…天国にもお役所仕事があるのかしら?そこを飛ばしてきちゃったというところかしら?」

悩むものの、実際に見ていないのだからしょうがない。しかし、残された家族や出来たばかりの彼氏、そして同僚たちに迷惑をかけていないだろうか。そして、友人たちには二度と会えないのだろうか。

本当に死んでしまったのか。

急に寂しくなった。未練がないとは言い切れない。

「本当に嫌になっちゃうわ、これからって時だったのに」

幸せに暮らして、子供も欲しかった。その成長を夫となる人と過ごしたかった。両親や兄弟とももっと楽しく過ごせば良かった。後悔だけが、去来した。

ホロリと涙が出てくる。人が来るかもしれないのに泣いちゃダメ。目元を擦っているとドアが開かれた。

泣いていたのに気づいたのか天使が優しく声をかけてくる。

「あぁ…そうですよね。不安になるような言葉ばかり話して、一方的でした。申し訳ありません。」

「いえ、大丈夫です。」

大丈夫ではないのだが、彼女をこれ以上困らせたってしょうがない。

「切り替えは上手なんですよ?」

「そう言っていただけると嬉しいです。さて、本題ですが貴女の状況がわかりました。故に主神から説明があると思います。ついてきていただけますか?」

「シュシン??」

「ああ、神様です。」

いきなりの世界の頂点である。

「私なんかがお会いしても…?」

「ええ、むしろきていただきたいと」

服は仕事用とは言え、正直神様に会いにいくような格好ではない。

なんとかシワだけでも伸ばそうとしていると、天使が笑って話した。

「大丈夫ですよ、我らの神はそのようなことは気になされませんので。」

そう言われ、渋々ついていく。

「主神も心痛めておりました故…大丈夫ですよ。心配なさらずとも良いのです。」

心を痛めるようなことがあっただろうか?よくわからないがついていく。

大きなその扉が自動で開いていく。

その先には多くの神々しい方々がいた。正直眩しい。

「おお、そなたか。迷い子というのは。」

正面の玉座にすわるそのお方が気軽に話しかけてくるが、圧がすごい。

こういうのを神威というのか、正直声が出せない。

「あ…う…」

「すまぬ、我が神威を知らぬまに感じ取ってしまったか。少しばかり緩めたが、どうじゃ?」

「ありがとうございます。」

正直息もできなかったので、大変助かる。

「お主には此度のことで謝らねばならぬのだ…」

「そんな恐れ多いことでございます!」

神様に頭下げてもらうなど持ってのほかと、本能が叫んでいる。

「そなたの寿命はもっと長く、そしてその有能な能力で世の中を発展させていくはずだったのじゃ。それこそ、御前の子供らも優秀に育ちそれぞれ世界に羽ばたいていくはずであった。それが、あのような神でも扱えぬ、事故で命を落としてしまっての。」

「…そうだったんですか…。」

「しかも、お主の死を悼むものが多すぎて、軽い教祖のような状況になっておる。」

「…は?」

「そなたの死は全国ニュースになり、経歴やその人柄、親族や友人のなく姿に、人々はお主の死を悼んだ。恋人の事故防止運動でさらに加熱し、死そのものが世界のあり方を変えつつある。」

「え?そんなことに?」

「左様、お主も心当たりがあるのでは?」

そう言われてみれば、確かに昨今の踏み間違え事故は社会問題だった。そこに高学歴、そこそこ美人で誰にでも優しかったとなると…悲劇のヒロインとなっていく。

下手すると会社の株が…。

「あるようじゃな。そなたの人徳と経験が為せる技。その信仰に似た人の心の力がお主をいきなり天界に持ち上げてしまったようじゃ。審判の門を通らずな。たぶん」

「その審判の門とはなんでしょうか?」

「うむ、簡単にいうと全ての生き物の魂が死後裁かれる場所である。裁かれると言っても、天の国に行くか、輪廻転生するか。それくらいのものじゃ。たまに、審判の結果、門が開かれ我々神の仲間になるものもいる。」

そう話すと半身が木でできている神様がにこりと笑う。なるほど、もと御神木か。

「そなたは例外中の例外じゃ。勝手に神になっておったのだから。なんの目的かも曖昧なまま。」

「交通事故を減らす神とかですか?」

「それはもうおるんじゃよ。最古の交通事故の被害者がそれじゃ。」

なるほど、勝手に祭り上げられたはいいけど、もう役割のない宙ぶらりんな状態が私な訳か。

「なるほど、主神さまのお困りな理由がわかりました…」

「わかるか…?そなたの国の神は大切に育ててきた人間が突然いなくなった上にここにいると聞いて混乱中じゃ。全くどうしたものか。他の人間の魂のように通称天国に行くには其方の魂が強すぎる上、消耗もしておらぬ。かと言って輪廻転生させると力があり過ぎて世界が混乱する。」

そこまで面倒くさいことになっていたとは思わなかった。他の神々も悩んでいたようだ。

そんな中1人の神が手をあげた。

「主神様、先日お悩みになっておられたあそこの世界の神になっていただくのはいかがでしょうか?管理に長けているようですし。」

「む?あそこか…………確かにいいかもしれぬ。」

何、その間。

その意見に周囲の神々が確かに!とか、ピッタリだ!とかざわめく。

「のう、お主とある宇宙を管理してみないか?我がともが作ったのはいいものの、作った際に力を使い過ぎてな。管理できなくなってしまったんじゃ。」

「は…はぁ。」

その神様っていうのは、スケジュール管理ができなかったのか?

「まあ、よくある話じゃ。宇宙を作るにも膨大な権能を使うでな。その後しばらくは何もできなくなる…こともある。」

こともある。ないこともあるというわけで。

「あの、この世界の主神様はどうだったんでしょうか?」

「あそこまで弱ることはなかったが…」

ふと目をそらす。一番偉い神様が目をそらすって何事ですか。

「だが、世界を形作るのはとても楽しいぞ。何よりやりがいがある!」

周囲の神々もそうだ、そうだと同意し始める。

「申し訳ありませんが、嫌な予感がします。」

「そんなことはない、むしろ御主ほどの魂が何もしないでおくほうが苦痛であるのだ。眼下に広がる世界に力を使いたくとも役割がないとなると、心が病む。それは神でもだ。」

「はぁ、そういうものですか…」

できることなら、今、ここで労働契約書を作ってもらいたい。だが、一番偉い神様に言えるか、いや言えない。倫理的に!

「そういうわけで、御主はリサイクルさせてもらい友人の世界で働いてもらおう。話はつけておくでの。」

「え!リサイクル!?」

何それ、こっちの同意はなし?ああ、でも一番偉い神様なんだから、煮るも焼くも自由なのか?でも人の魂をリサイクルして他の宇宙にって・・・!

「い、意義あり!」

「却下じゃ。うまくやるのじゃよ?」

ファンファーレが鳴り響く。

そうして私の体は浮いて、ワープをした。光が眩しい、どれだけの速さで飛ばされているんだろう。

というより光を超えている。もうアインシュタインもびっくりだ。

「なんでこうなったのよーーーーーーー!」

ワープは続くよ、どこまでも。光を超えた速さで移動させられ、全く異なる世界へ飛ばされるのがわかってしまう。光を超えた先に大きな穴があった。どうやら終点らしい。

さよなら、順風満帆。ようこそ、異世界…!



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