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カフェイン中毒には気をつけて

カフェイン中毒には気をつけましょう。そして、綿100%の寝具が天界に。

文明が発達することは素晴らしい。そして口にできるものが増えるということも。

オリジンはコーヒーを飲んで、涙した。久しぶりに味わう苦さ、ガツンと目を覚まさせてくれるカフェイン。そして、香りの良さ。


「フローラリア!でかしたわ!」

「お喜びになっていただけて幸いです。料理の神もそのうち出てくるんでしょうね。」

「うんうん、アウローラが頑張ってくれているからね。寿命も近いというのに、あの頑張りよう。すごいわ。」

「おばあさま…」

フローラリアとしては祖母が心配だが、楽しそうに交流文化を作っていく彼女を見て安心した。

「この調子だとアウローラ、神になるわね。後ニードホッグも。」

「え」

「アウクトゥスの仕事量が圧倒的に増えててんてこ舞いなのよ。後レクスもね。私が手伝っているから今は何とかなっているけど。」

コーヒーを飲みながら、書類に目を通しサインをしていくオリジン。そう、書斎を作って子供たちの仕事を寝ずに手伝っているのだ。アウクトゥスは別室で文明の分類分けを必死にしており、レクスは大量に上がってくる法案に目を通すのに必死だ。目の下にはくまができている。

「オリジン様、今日コーヒー何杯飲まれてます?徹夜何日目でしょうか?」

「うん?何杯だったかしら?」

経営戦略室にいた頃から考えると大した量じゃないと思うのだが…

「フローラリア様、20杯です。1週間ぶっ通しです。」

横にいた天使がうんざりした顔で話す。お茶汲み係もここまでやらされると大変なのだろう。

「タスクを呼んできてきます。いくらなんでも飲み過ぎです。少しはおやすみになりませんと…主神からも寝所に嫁が来てくれないと愚痴られたのです。」

「あいつ、仕事を見せたら逃げるくせに…。」

そう、新しい神々候補になる気概のある奴が地上に多く現れているのだ。それゆえ、主神と厳選したいのだが、主神はのらりくらりとかわしていく。

「主神様を捕まえればよろしいでしょうか?」

「そうしてくれると助かるわ。レクスの仕事がひと段落したらアウクトゥスの部下になる者をつけてあげないと。レクスの書類を一気に片付けるのに、主神がいたら楽になるわ。」

「わかりました。」

そういうとフローラリアは書斎から出て行った。

ギャアアアという声が響いた。いや、捕まえるのに何をしているのか。オリジンは不安になる。

逃げないでくださーいという嫁の声と、嫌だと叫ぶ夫の声。

どうやら、本気で捕まえようとしているらしい。神の特権で至る所に変な空間を作るため逃げ足が早いので、オリジンは諦めているのだが嫁は知らない。

まぁ、頑張って。心の中で嫁を応援しながら、法案にサインし、悪法に「しね」と書き込んで地上に送り返していると足元が一気に花畑になった。

「おおう、すごいわね…」

「綺麗ですが、一体…」

天使たちが花をつんで花瓶に入れ替えてくれる。

「うん、神の国全てに今花畑ができてるわ。」

「え」

「あの子、植物たちに主神を見つけさせる気ね。うまいわね。」

「はぁ、なるほど。」

法案の中に主神からの「嫁は1日一回夫のキスを受けること」というパワハラ法案を見つけ、大きなバッテンを書き「夫は妻の仕事を手伝うこと」と書き加えて隅に捨てた。

全く1日1回はこういう書類が混ざっているんだから、悪戯好きにも程がある。1時間ほど書類と格闘していた。

すると、書斎の扉がバァン!と開かれた。つた植物で全身を縛られた夫がフローラリアの手によって捕縛されていた。

「…さすが、アトムの嫁さんね。たくましいわ。」

「これで、少しはお休みになれると思います。主神様、オリジン様が倒れる前に手伝ってくださいまし。タスクからも言われているのです。オリジン様がカフェイン中毒になっていると。」

「おお、ここでもカフェイン中毒になっちゃったのか。オリジン。」

「誰のせいだと思いですか。しかし嫁と孫にまで心配されちゃあ、休むしかないわね。」

「ええ、お願いします。既に地上にカフェイン中毒者が続出しております。睡眠魔術でなんとか眠らせて治療しているようですが…世界の母まで中毒者になられると困ります。」

「…はい…。」

まずい。私が不眠になったら地上にブラック企業ができてしまう。

「というわけで、あなた。お願いね。あそこにあるレクスあての書類に目をしっかり通してサインするだけでいいから。その後、神になれそうなやつを厳選するわよ。」

「やだ、仕事したくない。って、イタタタタタタ」

「あら、つたに思わず力を入れてしまいましたわ。」

恐るべし、生きている縄。書斎の椅子に括り付けられた夫を見ると、あれが創造神とは思えないんだよねと思う。

「さあさ、オリジン様はカモミールのお茶で仮眠を。綿でできたシーツが献上されましたので、オリジン様の寝所に用意してあります。」

「気が効くわね。じゃあ、あなたよろしくね!」

「僕も寝たいいい!」


文明万歳。木でできたベッドには綿のシーツに、ウールの掛け布団がある。枕は羽毛が入っていて、寝心地は最高だった。久々にまともな一人寝ができる。

カモミールが聞いてきたのか、眠くなってきた。

131億年くらいぶりの一人寝は久々に熟睡できた。


目が覚めると夕暮れである。

「あら、仮眠どころの長さではないわね。ちょっと、イニティの様子を見に行こうかしら。」

そうして書斎に行くと泣きながら仕事をしている夫がいた。目の前にはマクスウェル。

なるほど、監視役を交代しながら仕事させていたのか。

「どう?」

「あ、お母様。ちょうど全ての書類に目が通ったところです。思う存分、神候補の厳選に取り掛かってください。」

「わぁ、よかった!やっぱり眠らないと仕事のスピードが落ちるのね。反省したわ。」

「ええ、やりすぎには注意してください。しばらくコーヒーは禁止だそうです。」

「…はい。」

ドクターストップがかかり、今日のところは休みとなった。

久しぶりの仕事に夫が疲弊していることもあって、ちょっとだけサービスしてやることにする。

「ほら、イニティ。一緒に温泉に入りましょう。妖精王に作らせてあるから。」

「本当かい?!後、一緒に寝てくれるかい?!」

「ええ、その代わり明日からは神の候補を探す作業に入りますよ?」

「やったーーー!」

久々の夫婦の時間をとることができたので、主神は満足げ床に入る。仕事に気を取られて拗ねさせてしまった私も悪いかと思い彼を抱きしめて自身も寝ることにした。

「おやすみなさい、イニティ。」

「うんうん、嬉しいよ。オリィ。お休み。」


翌朝、アウクトゥスに欲しい神々のリストを渡された。

「ふむ、学問の神、料理、工芸、狩猟、経済、建築、鍛治、魔術、数学、物理学、哲学、宗教、信頼ならびに契約…」

「文明開化で一気に増えたの。今アウクトゥスだけで頑張っているのよ。」

「僕たちで作っちゃえばって、痛い!デコピン禁止ー!」

「私にどれだけ出産させたいんですか。痛いんですよ。わかってます?」

「ごめんなさい。真面目に選びます。だけど、数学と物理に関してはマクスウェルも関わってくるね。」

「2人の眷属になるか、先を見越してマクスウェルに任せちゃうか。」

「それもそうね、魔術はマギカに任せましょう。」

「後は…学問の神、技術の神、信頼と契約の神、宗教の神を先に作って、今いる神々と子供を作らせたらいいんじゃない?」

「そうね、一気に作ったらアウクトゥスも面倒見きれないし…。」

「で、候補ね。学問はニードホッグでいいと思うわ。」

「僕も適任だと思っていたよ。信頼と契約に関してはアウローラかな?交流部門で相当信頼を勝ち取っているし、何より徳がありすぎる。あれが、生まれ変わったら権能もちになっちゃうね。」

「あら、そうなのね。技術はどうしましょうか。」

「天照にいる紙を作ったやつか、ニードホッグに選ばせるかだね。彼なら技術に長けたものを選びたい放題だ。」

「宗教の神はどうしましょうか…これが一番厄介よ。今の教会は素直に私たちのことを教えているけれど、時代が変わるにつれて見解が変わってしまったら困るもの。分裂もされては困るわ。紛争になりかねない。」

「そこは神主導でいきたいね。…こればかりは僕らが産んだほうがいいと思うよ?神への信仰を守る神っていうのもちょっと変わってるけど。」

「わかりました。ニードホッグとアウローラが寿命を終えるとき、迎えに行ったらまずいかしら?」

「獣人たちや混血の国の子らが黙ってないだろうね。」

「そっか…じゃあ、プルートーに迎えてもらってから回収ね。」

「彼らには悪いけど、死んでからも頑張ってもらわないと…」

「とっても悪い気がしてくるわね…。」


ブラック企業のリクルートが終わり、プルートーに話をつけに冥界へ行った。

「久しぶりね、プルートー。」

「お母様、お久しぶりでございます。どうされましたか?」

「ドラゴンの王ニードホッグと、妖精の元女王アウローラがきたら、横流しして欲しいのよ。そのまま神に昇華させるわ。」

「横流しとは…」

「私も横流しされた口よ。」

「確かに。リサイクルというのでしたっけ?」

「ええ、魂の再利用。リサイクル。いや、本当によくやってくれたわ、元の世界の神々は。」

「まぁ、そのおかげで我らもいることですし。お父様とも結ばれましたし。」

「そうね、大所帯になれたのはよかったわ。でも、まぁ。結婚式あげたかったわ。ちょっと残念。」

「結婚式ですか?ここにくる魂たちでたまに結婚の儀ができなかったと嘆くものもいました。未練はなかなか根深いもので、魂の浄化に難渋します。」

「そうなのか…。」

「お母様が元いた世界の結婚の儀とは何をしていたのですか?」

「うーん、そうね。簡潔に話すと白いドレスを着て、ベールという薄い布で花嫁は顔を隠すの。そして同じく白い衣装で着飾った新郎が花嫁の手を取り、神の前で永遠の愛を誓うの。その後、結婚指輪というものをお互いの左手の小指につけて、ベールを新郎がめくった後誓いのキスをする。こんな感じね。」

「指輪は2人同じものをつけるのですか?」

「まあ、だいたいそうね。」

「ベールはなぜ使うのでしょうか?」

「なんか、魔除だったり、ベールをめくることで2人の間の障壁をなくすとか意味がある…らしいわ。」

「今の結婚の儀とはだいぶ異なりますねぇ…。」

「ええ、神龍に愛を誓うんだもの。まさかの。」

しかしプルートーはなぜここまで聞いてきたのか。

「私が元いた世界に興味があるの?」

「ええ、面白い話を聞けたらと思います。」

「そっか、暇ができたら話にくるわ。今は忙しくてね…。」

「ええ、お母様。私は魂たちを円滑に運用して参りますので。」

オリジンが冥界を去った後、マクスウェルがすっと影から出てくる。

「これでよろしいでしょうか?お姉さま。」

「ええ、バッチリ聞けました。これで準備ができます。」

「ふふふ、お母様の結婚式。楽しみですね。」

フローラリアから提案をされていたマクスウェル。自分たちの両親が結婚の儀を行なっていないのに、子供たちが結婚式を挙げるわけにはいかないのだ。

「では、方々に声をかけてきましょう。準備ができたら天使をよこしますので。」

「待ってますね!」

子供達主導の両親へのサプライズが始まろうとしていた。

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