妊娠しちゃったよ!
オリジン、女としての試練が始まる。
いつぞやの古い星の神話では、女にだらしない神があらゆるところで美女に迫り子供を創りまくったのだという。
他の神話ではたった1人の伴侶と大量に神を生んで、妻が先に旅立った時に自身も冥界へと向かったいう。
まさか自分がそうなるとは思わなかった。
主神の愛を受け入れてから、あっとい間に懐妊が判明。神の繁殖力舐めてた。確かに雨になって子供作ったやついたもん!まさか必中効果があるとは。
「やったね!マイハニーー!!!」
今までの子供達もこの男との権能(遺伝情報)を共有しているため、子供には恵まれているが愛を確かめ合って作った子供ということでテンションがマックスなのが主神である。おかげで地上は豊作である。
「お母様!本当に…約束を守っていただきありがとうございます!」
マクスウェル、泣いて喜んでいるところをみると相当に楽しみにしていたようだ。
「神竜が言う愛の為せる技だねー。さっすがーー!」
ステラとアニマはキャッキャと喜んでいる。
「いえいえ、これはお二人の愛ゆえの結晶です。それを見守れて…!感激です!」
神竜は興奮が抑えきれないようで、翼をパタパタと動かしている。
「神竜もそこらへんに…ぅ」
そう、まさかの女神なのに悪阻である。
「やっぱり元が人間だったせいか、人間の頃の名残で妊娠という形で神をなすわけだね。なるほど!」
解説する夫を見て、半分あんたのせいだと言いたいが、つわりでそれどころではない。
「うーー…気持ち悪い…」
「これは先に医療の神が生まれてきそうですね。」
「いや、安産の神様かも?」
そう、今までの神達とは違うのが、目的を持ってできているわけではないのでどの権能を引き継いでいるのかわからない。他の神々は楽しそうにトトカルチョなどしている。
「オリジン、果実水飲める?」
「すっぱいの、ください。」
「OK!」
そう頼むと、アニマの眷属の植物の担当精霊ヘルバがパッションフルーツとアセロラのカクテルジュースを持ってくる。
「オリジン様、これはいかがですか?」
「あ、これはいけるかも…。」
今まで多くの果実を試しては吐くという行為をしていたため、ヘルバは実に嬉しそうだ。
「地上のドライアド達に神託してきます!パッションフルーツとアセロラを献上せよって!量産させますねーーーー!」
ダッシュで走っていくあたり、なかなか貴重なのだろう。
「さて、本当にどんな子が生まれてくるのかなー?」
「あなたはわかっているのでは?」
「ふふふ、それがわかっちゃ楽しくないだろう?」
「全く悪戯の好きな主神様ですこと。」
賑やかになるのは楽しい。きっとお腹のこの子は多くの神々の祝福を受けて生まれてくる。
「まぁ、悪阻さえ乗り越えれば…なんとかなりますかね。」
「陣痛はあると思うよ?」
「…」
主神の思いっきり引っ張る。横へ、できるだけ長く。
「不安にさせないでくださいます?妊婦ってデリケートな生き物なんです。」
「ふぁい。」
自身の体はそれなりの時間をかけて、胎児を育てていった。お腹が目立つ頃には周いには花のカーペットで覆われ転んでもいいようにされているし、階段を歩こうとすると誰かしらがついてきた。もちろん夫でもある主神もだ。
胎児がお腹を蹴ると、物珍しそうに見守る神々。
「触ってもよろしいでしょうか…。」
アトムが長男として声をかけてきた。
「ふふふ、そんなに屈強そうなのにお腹を触ろうとするのは、びくついちゃうのね。」
「いや、力加減がわからんのですよ。」
「撫でればいいのよ」
「はい、おおお。動いていますね。ああ、この子に祝福を」
「はやく皆んなに会いたいんでしょう。」
「では私も触っていいですか?」
「もちろんよ、ステラ。」
行列ができて、祝福をすることが神殿の流行になった。管理についてはもうすでにほとんどが皆に委託されている状態だし、珍しくも主神が動くので笑ってしまう。
「あなたが真面目に仕事しているのは面白いわね。どう、宇宙の具合は?」
「ああ、変わりないよ。僕だって父親だからね、いいところ見せなきゃ!」
もうすでに130億年ほど子供達に情けない姿を見せているが、そこは不問にしておこう。真面目になったのだから、そこはうまく調教して行かねばなるまい。
「さて、テラスに行こうかしら。」
「おや、ついていくよ。」
「ありがと…ぅ?」
「う?」
「なんかお腹張ってきた。」
「おお、陣痛だね。部屋まで送るから、あとアニマーーーー!手伝ってーーーーー!」
「お父様!ついに来ましたね!」
「ああ!出産だ!」
部屋に寝かされているが、痛み方が尋常ではない。知識が通用しない。陣痛の休みがないのだ。
「いっっっっったーーーーーー…」
「もしや、子供の方が短期決戦を希望しているのかな?」
「えええ、そんなことってありますか?」
「だって、この子も神だよ?」
ああ、そうでした。どこぞの女神様が出産で死んだのは有名な話だった。
「もう!お父様!お母様に余計なこと言わないでください。お母様、リズム良く力んでください。」
「リズムに乗れないいいいい…」
そうやって、2時間ほど経って。
「おんぎゃあぁぁああああああああ」
「あぅあああああああああん」
「ふぇぇぇ」
まさかの3人でした。
「お母様!女の子と男の子2人です!」
「そ、そう…」
短期決戦は子供の勝利だった。
アニマがうまく処置を行い、主神が自ら産湯につけた。
「ほうほう、この子達は法と罪と罰則の神だね。」
「…意外だわ、私が一番今の地上に必要だと思ったものだったもの。」
「もしかすると、君の希望を汲んでくれたのかもね。いやしかし、本当に安産でよかった!」
「まぁ、初産にしては早かったですしね。」
三つ子を抱えて、みると小さな手が可愛らしい。
「いや、本当可愛いね!この調子でガンガン行こう!」
その言葉を聞いたアニマが思いっきり、主神の脇腹を殴った。
3人はスクスクと母乳を飲んで1日につき、3ヶ月分の大きさになっていく。
「もう、私の常識はしょうがないのはわかるのだけど…もう少し可愛い時期を楽しみたいわねぇ。」
「そうですねぇーーーーー、あーーーーー可愛いーーーーー。」
そうデレデレと話しているのはアトムである。
「あーーー、可愛いですぅーー。」
とはステラ。
「ああっ!こっち向いてくださいいい!!今の瞬間を目に焼き付けますので!!!」
マクスウェルは自分の網膜に三つ子を焼き付けるつもりらしい。
法はレクス、罪のペッカトゥム、罰のポエナはハイハイからすでに立ち上がろうとしていた。
その姿は神にしてはどこかそそっかしくて、かわいらしい。
故に神々と天使達の中でアイドルとなっているのである。
最初の3人でこれである。旦那はガンガンと話していた。
いったいどうなるんだろう、我が家…とは思うものの育児の負担は少なくて済む。そこは大家族万歳である。
「あっ!たちましたあああああ!」
「しゃべったああああああ!」
「人見知りしてるぅぅー、顔を私の胸に!!!」
にしても早すぎるなぁ。
アニマは落ち着いて見ているが、3人の服を必死に作っている。それもそうだ。だって、生後3日にして1歳児クラスである。
服が成長に全く間に合わないのだ。
「あはははは、こんな調子だと2週間もしたら法の事は相談できそうだね。」
「可愛い盛りが勿体ない…」
「大丈夫!水晶玉に録画する魔法作ったからね!」
「魔法ですか。それはいいですね、今の光景お願いしますね。」
「うんうん、兄弟のふれあいも親子の触れ合いも録画しちゃうぞーー!」
そうして水晶玉をプカプカ浮かしながら、三兄弟の中に突入していく。
3人を一気に持ち上げてにこやかに笑う彼の笑顔を見て、これは幸せなんだなぁって。しみじみと思う。まぁ、これが続くなら、もっと子供を増やしてもいいのかな?
「よし、私も混ぜて!」