順風満帆な人生
超順風満帆だった主人公はある事故で命を落とす。
目が覚めると、神様が悩んでいる。寿命を残していた上に、悼む人が多く人間の魂としてはもったいないという。
「そうだ、リサイクルしよう。」
そんな、神様の一言で別宇宙のある星の精霊王になれと言われてしまう。
だが、その星は…出来たばかりの熱々な星だった!
日本屈指のホワイト企業に務める佐藤瞳は、実に計画的に人生設計を行っていた。
この時代、官僚も医者も偏差値の割には給料美味しくない上に休みもない。その事を親族から聞かされて、自身は有名企業に入るべく努力した。
日本一の女子校に入り、そして文系の道にあゆみつつも理数科もオールAという成績を取り続けた。物理も生物も地学も選択し、あらゆる学問を修めた。
周囲は医学部を目指せと言うがとんでもない。
医師である父親の疲れ果てた姿を見ていたため、そんなのまっぴらごめん。全力でホワイト企業に行くための、東大に入った。
そこでも国家公務員になればいいのにとか、言われたがリスクが大きすぎた。もし政治スキャンダルに巻き込まれでもしたら、全てが終わるのである。
「私はやりがいのある仕事を自分で選びたいの。」
そう言うと、皆はベンチャー企業をつくるのかと思っていたらしい。周囲はそう納得して多くのコネクションを教えてくれた。大企業の課長だったり、有力株の起業家ともコネクションを作って行った。
そして自身も未来への投資を怠らない。皆んながサークルで遊んでいるのを傍目に真面目にパソコンと睨めっこをして卒業論文の準備をしていた。
面接でも活用できるようなネタが好ましい。そう考えた私は、AIと適材職業を論文のテーマにするため、理数分野に進んだ友人の力を考えつつ簡単であるがAIを自身で作れるようになっていった。
結局AIは単純作業、間違いや選定作業に実に有力であるが、創作についてはいくら育成しても難しいのである。
おそらく閃きに関わる、揺らぎを作り出すことができないからだろう。故に、広告や営業、企画に関してはAIではなく人が就くことが好ましいとの結果を出したところ、教授陣には好評だった。
そしてこの話は就活でも十分に活用した。
AIで活用できない部署に、自身を活用してほしいと話したのだ。面食らったようだったが、今までの成績や磨き上げた美貌、そして快活な性格をアピールした。
そして是非にととある大企業に声をかけられた。ブラックでもなく、実にホワイトで有名な場所。
にっこりと笑って自身のやっていた行いが間違いでなかったと確信していた。
入社後の研修でも持ち前の要領の良さでアピールしていく。そうして、経営戦略室に配属された。
経営戦略室に入ってからはとても楽しかった。これこそ、合理的で楽しい仕事。やりがいがあり、休暇も十分にあった。
人当たりもよくするように対応してしていたため、とある人物に交際を申し込まれた。
「困ります、社内恋愛は禁忌ですよ。」
「…だが、君は我が社の顔でもある。仕事熱心でもあるし、父も君のことを気に入っている。」
「その父という方は関係ないのではないですか?」
「ここでは秘密であるんだが、実は父は取締役なんだ。」
驚くふりをするが、自身の情報網をバカにしないでほしい。それくらい知っている。
「もし、結婚をしてしまったら、仕事が続けられません。」
「そこは大丈夫だ。君の人柄の良さといい、成績の良さといい。誰も文句は言わないだろう。」
「守ってくださいますか?」
そう言って上目遣いで尋ねると、コロリと落ちた。
その晩は非常に機嫌が良かった。仕事も続けられる上に、玉の輿である。
こんなに楽しいことがあるだろうか。
家でワインでも飲もうか。そう思って通りがかりのコンビニに入った。安物だがチーズがあったはず。
ふと雑誌コーナーの結婚情報誌に目が入った。
「私もこういうの読まなきゃいけないのかしら?それにしても、六法全書並の分厚さね。」
それは重すぎて普通の棚に置けないようだ。腰をかがめて持ち上げてみる。
「重い!意外だわ!」
そう思っていると目の前の棚が押し寄せてきた。あっという間に、コンビニに突入してきたその車の下敷きになった。
意識が遠くなる。
痛い…ああ、私の幸せだった人生が…こんなことで終わるなんて…。
翌日のニュースで老人のアクセルの踏み間違えで車が猛スピードでコンビニに突入し、女性が即死したと報じられた。
昨日、交際を申し込んだその男は涙にくれ、経営戦略室の皆も、今まで関わってきたもの全てがその死をいたんだ。報道は加熱し、彼女の完璧なまでの人生がこのような事故で奪われたことを全国民が知ることになった。
主人公は命を落としてしまいました。
次回は理不尽なまでの神様との会話です。