第1章 5
更新が遅くなり申し訳ありません!仕事が忙しいのです!!でも、なんとか書き上げました!それでは、始まり始まり~!
side;世良 雅比古
「…うむ、本日分の報告は以上かな?」
本日最後の報告書に目を通し、署名と捺印をして、秘書官の伊川君の方へと戻す。
「はい、お疲れ様でした、准将。」
もう何年も続けている事ではあるが、何ともデスクワークと言うのは何時までも慣れないものだなと思いつつ、執務室の椅子から立ち上がる。時間は夕方の6時を少し回った所と普段より少し早めの終業時間に、屋上にて一服でもと思い、階段を上に上がっていく。
「おぉ、准将閣下ではないか、昼間は迷惑をかけたな。詫びがわりにどうだ?一杯やらぬか?」
「あぁ……、先客は先輩方でしたか。…………と言うか前々から言ってますよね?『報告、連絡、相談は緊密に』って………ただでさえ先輩が少しでも動きを見せると上の連中は付和雷同するんですから………(;´Д`)。」
長椅子にすわる作務服姿の総髪を後ろでまとめている初老の男に、愚痴をこぼすと、
「全く同感だなっ!本気じゃ無いとは言え、相手が『義足の闘神』なら二式装備じゃ、相手なんてできっこねえよ!獅郎さんがもっと自重しねえと、訓練生が全員殉職しかねねえからな!」
と言う整備班長に心の底から同意しつつ先輩の反対側に座っている美女に言葉をかける。
「君も召喚早々大変だったね。桜花君、伍長はもう気が付いたのかね?」
ほれぼれする程の美人にそうきくと、
『あちらには絵莉とさくらが付いておるからのぅ。妾としては[先約]を済ませることにしたのじゃよ。』
との事で、続けて先輩が口を開く。
「まぁ、壮一もほどなく目を覚ますだろうよ。何せ三つの頃から己の課す訓練をして育って来たのだからな。」
………おいっ、ちょっと待て!!伍長はあの(・・)『義足の闘神』と呼ばれ、生ける軍神とまで崇められる、南雲 獅郎の地獄と呼ばれることすら生ぬるいと思える訓練を15年以上も行ってきたのか………!!!
「なるほど…………。それならば伍長が獅郎さんとやり合える理由にはなるが、どうやって高校は卒業させたんですか?」
「何、簡単なことよ。重吉の娘と同じ様に『通信制』の高校で単位を取るだけのこと、課題を解くだけで3ヶ月もかからずに卒業証書が送られて来おったぞ。」
この祖父ありてこの孫ありと言わんばかりの先輩の表情に、基地の最高責任者としては、確実に書類仕事が激増する確信をすると共に、この基地も騒がしくなるなぁとため息をついたところで、桜花君が口を開く、
『どうやら、壮一の意識が戻ったみたいじゃのぅ。』
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side;南雲 壮一
目を覚ますとそこは、操縦席の中ではなく、消毒液の香り漂う医務室の天井で、なにやら訳がわからんチンな状態のまま、視線を横に移動させると、そこには絵莉とさくらが並んで座っていた。
「そーちゃん!!気が付いたの!どこか痛いとこない!?大丈夫!!?」
……懐かしい呼び名と共に動揺しまくった絵莉の顔と、涙の跡とちょっぴり赤い目をしたさくらが座っており白丸が寄り添ってさくらを慰めてくれていた。
「大丈夫だよ。ありがとな絵莉、心配してくれて。……それと、せっかく作ってくれた専用装備、初日にオシャカにしてしまって………ホントにゴメンっ!…………あと、さくらに白丸もすまんかった。もっと色々打つべき手があった筈なのに、あんな博打みたいな事してしまって、心配させてしまって本当にごめん。」
体を起こして二人と一匹に謝罪する。後で、伯狼にも謝んなきゃなぁ…。
「そうしゅ…さまが謝ることなんてない……ですっ。むしろ謝らないといけないの、私達………ですっ。」
ぽつりと下を向いてさくらが口を開く。
「わたしとシロちゃん、一緒にいっぱいいっぱい頑張ったです!…………でも、ちょっとしか力が出せなかった。…………だから、ごめんなさい!」
「私も一緒だよっ………。そーちゃんに謝らないといけないのは……。」
さくらに続いて絵莉まで謝りだした。
「今の自分が作れる最高の物をそーちゃんに装備してもらった筈なのに、射撃は一度きりしか使えないガラクタで、近接ブレードは、防御にすら使えないなまくらで、要求性能以下のブースターで撹乱すら、まともに出来やしなかった!!」
…絵莉の言っている事は正しい。戦闘を実際行った俺が感じたストレスを絵莉は正確に把握してくれており、驚きと共に自分を支えてくれる整備士が超一流なんだと改めて理解出来た。
「だから、本当にごめんなさいっ!!」
そうやって頭を下げる二人。
………うーん、どうしよう?謝るばかりじゃ話が終わらない!かといって『もうこの話はおしまいっ!』何て事にはできない話題だしなぁ………。
…………………………あっ、そうだ!!
「二人と白丸の気持ちはよく分かったよ。だから、今度は俺の話を聞いてくれるかな?」
キョトンとした顔で、二人と一匹は同時にうなずく。
「今日の俺たちは、与えられた任務を完遂できず、それぞれが中途半端な準備しかできず、『敵』の情報を集める事もせず、戦闘を行って負けた。…………言葉に出すとよく分かるけど、これじゃ負けて当たり前だった。これが実戦だったら俺たちは全員戦死してると思う。」
俺の言葉を聞いて、その場にいた全員が肩を落として項垂れる。
「……でもさ、絵莉の作った武器の射撃を『敵』は避けられずに[神力]を使って弾いてた。ダメージはなくても命中してた。さくらと白丸の使ったブースターだってジャストタイミングで、敵の視界を潰してくれた。さくらと白丸のおかげで俺も、絵莉特製のブレードを使って『敵』に攻撃できる瞬間が出来た。…………実はこれってかなりトンでもない事をしでかしてたかも知れないんだ。」
(今、俺が基地の医務室で寝ていられた事実と桜花サンがここに居ないところをみると………。)
不意に(タイミング良く)医務室の引き戸が開けられる。そこには、桜花サン、おやっさんと世良准将、そして…………南雲家が世界に誇る人外じいさんがいた!!
『所謂、じゃすとたいみんぐだった様じゃのっ♪』
と、仰る女狐桜花サンにジト眼を送って居ると、静かにじいちゃんが話し出した。
「粗方の話は桜花殿から聞いた。単刀直入に伝えよう。おおよそ20年位か?敵の攻撃は一度もかすらせもしなかったのだがな、絵莉君の作った武器の射撃のスピードと正確性には驚いたぞ!気付いた時には着弾していて受け流す位しか出来なかった。」
思わぬ人物の乱入に、目を白黒させる絵莉を評価すると、
「…それと、さくらと白丸だったか?君たちがブースターを使用して行った撹乱と目潰しの煙幕も素晴らしかった!今日はじめて遠隔操作をしたとは思えない程の操作能力、そして[神力]の出力調整能力だったよ。」
予想通り、落ち込む二人と一匹の頭を撫でて優しく微笑む『優しいおじいちゃん』モードのじいちゃんに、俺はとりあえずほっと一息つく。
絵莉は昔から自分が『出来た』事は評価せず、『出来なかった』事を考えすぎる傾向があるため、第三者の誰かが『良い評価』を伝えないと次のステップに進めない所がある。さくらと白丸は、ある意味今日生まれたばかりといっても過言ではないし、外見的にもまだ幼い事もあり、『優しいおじいちゃん』の言葉に安心したのか、二人と一匹は落ち着きを取り戻した様だった。
(このまま、俺も褒められて一件落着させてください!!獅郎じーちゃん!)
と、思っていたら、絵莉達とは反対側のベットサイドに回り込み、おもむろにじーちゃんが 口を開く。
「………それだけになぁ……。」
うぅん??なにやらじーちゃんの方から静かな殺気が………?
俺の顔面をじーちゃんの左手が掴みにかかる!
「この馬鹿孫の所為で、作戦が台無しになった事が余りに不憫でなあ……。」
「あっ、あのーお爺様………?」
「そうかっ!南雲伍長、貴様も自身の能力の低さから仲間を窮地に追いやってしまった事に責任を感じており、自身を鍛え直したいと言うのだな!!」
こっ、このパターンはまさかっ……!!
「貴官の気持ちは良くわかった!!世良准将閣下っ!これより我々は『夜間特別戦闘訓練』を実施致したく思います、口頭ではございますが承認を御願い致します!!」
………なにゆえ、ドオシテ、こ、う、なっ、た………( ;∀;)。
追記;世良 雅比古
この夜、新設部隊に配属予定の新入隊員約1名の悲痛な泣き叫ぶ声が一晩中基地内にこだまし続ける事となったのは云うまでもない……………………。