06
何か音がする。
意識がまだ覚醒してない為か、水の中で聞いてる様に、何の音か認識できない。
だが、覚醒していくうちに、音は声にかわっていった。
「アレン!」
それが自分を呼んでいる様に聞こえた俺は、ゆっくりと目を覚ました。
視界に飛び込んできたのは、みずに濡れた女性とその隣には涙を浮かべ心配そうに見ている男性、そして此方が心配してしまいそうな程、号泣している女の子がいた。
その瞬間、生まれてから5歳までの記憶が頭に入ってきて、この人達が俺の家族であり、そして俺が川で溺れた事を思い出した。
「アレン大丈夫か。私達がわかるか。」
切れ長の、燃えるような紅い瞳をした20代の女性(母)が、目を覚ました俺を抱えて聞いてきた。
「だ、だいじょ…ゴホッゴホッ」
大丈夫と答えようとしたが、水がまだ残っていたのか、むせてしまった。
「無理に答えなくていい。今から医者のところに連れていくから、辛いだろうが我慢してくれ。」
「アラン、先に行って準備してもらってくれ。」
母は、俺を安心させるように言い、小型犬のように、藍色の瞳を潤わせながら頷く20代の男性(父)に頼んでいた。
「うん、うん。分かったよクレア。急いで行って来るよ。アレンちゃん待っててね。」
転びそうになりながらも、父は街へと走って行った。