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人がいる気配のない薄暗い場所を歩く
じめじめとしている
周りには木や草や石しかない
足場が悪く道の舗装が行き届いていない
人が来ることが滅多に無い場所なんだと思った
こんな場所に自分がいたことに驚く
そしてこの胡散臭いやつがここに居たことも疑問だ
「怪我は大丈夫?人間の怪我は自然に治るのを待つしかないんだよね
よかったら僕のハンカチ使って」
「ありがとうございます、すみません」
「はははは、謝る必要ないのに」
「せっかくのハンカチなのに血で汚れてしまいます」
「気にしなくていいよ、汚れても綺麗に洗ってくれる奴がいるからね」
私は借りたハンカチで手の甲をぐるぐる巻きにした
そんなに大した怪我でもないのでこれで別にいいだろう
「ここは誰かいる気配が全くありませんね」
「こんなところ誰もこないからね」
「君を見つけたときはびっくりしちゃったよ」
「こんな不気味な場所にいたなんて自分でもびっくりしてますよ」
「あなたはどうしてここに居たんですか?」
「••••••••••」
胡散臭いやつはうつむき何も答えない
「答えなくないなら別に無理に答えなくていいです」
「••••••••••」
「••••••••••」
お互い会話のないまま気まずい雰囲気が2人の間に漂った
どれくらい歩いただろう
気味の悪い森をぬけ目の前には舗装された道があった
1人ではここまでたどり着けなかっただろう
信用はできないが付いてきてよかった
日が落ち辺りは暗くなり始めていた
「あともう少し歩けば僕の家だよ
僕の家といっても、僕だけの家じゃないんだけどね。にぎやかな人がたくさんいるんだ
きっと人間の君でも受け入れてくれるばすだよ」
先ほどまでの気まずい空気はなくなり胡散臭いやつは、楽しそうに話した
「人間の私でも受け入れてもらえる•••」
そういえば、さっきの話では人間はアンドロイドに差別されていると言っていた
「確か、アンドロイドは人間を差別しているんですよね?」
「ああ、そうだよ」
「アンドロイドは人間を良く思っていないんだ」
「思っていない•••?」
「ショックかい?僕みたいに人間に普通に接しているアンドロイドは珍しいんだよ
ほとんどのアンドロイドは人間に喋りかけない
それだけならまだマシだけれどね人間に酷いことを言うやつもいる」
「待ってください!良く思っていないって
まるでアンドロイドに感情があるような言い方
アンドロイドは心を持ちませんよね?
アンドロイド自身が人格を持ち考えることは有り得ないはずです!
ただの機械、ただのプログラムなんです!いくら高性能なAIでも所詮は•••!」