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「えっ?」
この人は何を言っているんだろう?
空気が凍りついたような感じがする
さっきまでうるさかった雑音が耳に入らない
急に辺りが静かになったような
初めてされた質問、何て変な質問
私が人間かどうかだって?
そんなの...
「••••••••••」
「なんてね!軽いジョークさ
そんな怯えた目で見ないでよ
こんなところに人間がいるわけないよね
この地区から人間は完全に排除されたし
何より首に何も付いてない!君も僕らの仲間だ」
「そうだろう?」
とても胡散臭い笑顔を浮かべている
今日はエイプリルフールだったけ?
初対面の人にからかわれるなんて初めて
それともまだ夢の中?寝ぼけているのかな?
変な人に絡まれてしまった
とにかくこの場所から、この変な人から離れよう
「私は自分がここにいる理由は分かりません
けれども、自分が人間ってことくらい分かります
起こしてくれてありがとうございます
私もう行きますので!」
少し怒鳴り口調で、突き放すように言った
さっさと離れよう
なんだか危ない気がしてたまらない
もうここにはいたくない
足早にその場を離れようとしたその時
「待って」
「君は本当に人間なの?」
「•••••••••••••••••••••••」
訳がわからない
「そんな当たり前のこと聞いて何なんですか?」
「いいから!答えて!」
胡散臭い顔が少し強張る
「•••••••••••••••••••••••」
「君は人間なの?そうじゃないの?僕らと同じじゃないの?」
驚きと期待と不安と様々な感情が混ざった表情を浮かべている
「私は人間です」
ため息混じりにつぶやいた
「私が犬や猫に見えますか?人間以外の何者でもないですよ」
私が人間だからなんだと言うのだ
「本当に人間だったなんて
出会ってしまった
これが僕への罰なんだ
博士は僕を許してくれてはいないんだ」
胡散臭いやつは今にも泣き出しそうな顔をしている
「あなたは人間に会うことは滅多にないんですか?
あなたが何故、私が人間かどうかそこまでこだわるのか理解できません」
「•••••••••••」
「お願いだ、どうか僕の話を聞いてほしい
そして話が本当だと信じてほしい」
早く立ち去りたかった
けれども、この胡散臭いやつから話を聞いた後でもいいと思った
どうせ1人で帰れないし
「僕は•••
僕は人間によって作られたアンドロイドだ
ここにはもう人間は住んでいない
人間は僕らアンドロイドによってそのほとんどが排除され、追いやられて、いなくなってしまった
ここは地球という星で人間は火星に移り住んだ
地球に残った人間もいるがアンドロイドからの差別は激しく人間の目印として首輪をつけている
君が人間にも関わらず首輪をつけてないことに心底驚いているよ
だからまだ君が人間かどうかは信用していない
仮に首輪をつけていない人間がいるとしたら一生地上を歩くことは出来ない、永遠に地下送りだ」
あなたがアンドロイド?
それに人間はほとんどいない?
私が人間かどうか信用できない?
私は近くに落ちていた石を拾い、手の甲に殴りつけるようにぶつけた
「なっ!?なにしてんだ!!」
手の甲は赤紫色に腫れ上がり、血が流れた
「血が•••」
「あなたが妄想してるアンドロイドというのは、怪我をしても血を流さないでしょう?
私は人間だから怪我をすれば当然、血が流れます
あなたのごっこ遊びに付き合う暇はありません
いい加減真面目な話をしませんか?」
「分かった」
「とにかく、人間がここに居ては危険だ
この場からすぐに離れよう
少し歩けば、僕の家がある
とりあえずそこでゆっくりと話をしよう」
「それじゃあ行こうか
僕についてきてくれるかい?」