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ネコじゃらしの歌

作者: 和藤渚

べた恋第3弾の作品です。

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今年も憂鬱な時期がやってきた……

私、横井咲月よこいさつきが1年のうち2回最も頭を悩ませる時期だ。

それはクリスマス……

彼氏がいないからではない。それで甘いクリスマスが過ごせないからでもない。

それは……




「ねぇ〜裕子ゆうこちゃん。今日放課後デートしよう?」

デリカシーのないバカ声で女の子を誘う。もちろん結果は

「けっこうです」

というお断りの言葉とともに鉄拳が飛んできて玉砕。

「くそ〜この子もダメか〜……」

とどこから仕入れたのだろう、こいつの学園女子名鑑に×印をつけていく。

「当たり前でしょ?」

とこいつの起き上った後ろ姿に一言。

「なんだ? 咲月か」

とそいつは振り向く。

「『なんだ咲月か』じゃないでしょ? また女の子追いかけ回して少しは懲りたらどうなの?」

と毎回のごとく注意する。

「そんなことお前に関係ねぇ〜だろ!!」

とこれもいつもの言葉。

「関係あるわよ!! 私、おばさんに頼まれてるんだから!!」

「またそれかよ!!? 邪魔しないでくれよ。ねぇねぇ……」

またこりずに次の女の子を誘う。

そんなやつをプロレスラーもびっくりのエルボーを顔面に決め、首根っこをつかみ帰る。

「このクリスマスはハーレムパティーにするんだよ!!」

「はいはい。そうですか」

と受け流す。

そうこいつが悩みの種。名前は榎本拓馬えのもとたくま

これでも私の幼なじみ。そしてクラスメート。顔は良いんだが、こいつはヒマがあれば女の子のお尻を追いかけてる。とてもスケベなやつ。特にひどいのはバレンタインとこのクリスマスだ。その時期になると盛りのついた犬のようにあからさまに欲望をむき出しにする。そんなやつの危害が加わらないように手綱を持っておかないといけないのだ。いわば監視役といったところだ。しかもおばさんにまで頼まれてるし仕方ない。

でもあの日あいつがあんなことをしてくるとは思わなかった……




ことの発端は完ぺきに冬に入った12月のはじめのことだった。

学校の帰り道、私たちは商店街を歩いていた。

「なんでお前といっしょに帰らないといけないんだよ?」

と拓馬が不貞腐れる。

「決まってるじゃない」

私はにっこり笑い

「ねぇ〜彼女〜! これから一緒に温まらない?」

と通りすがりの女の人に拓馬が声をかける。

しかし首根っこをつかみ阻止する。

「こういうことしないようによ」

と答える。

「そういやもう12月か。咲月は何が欲しい?」

拓馬はいきなりそんなことを聞いてくる。

「何のこと?」

当然わけがわからない。

「プレゼントだよ! クリスマスの」

「ああ。別に何でもいいわ。期待してないし。ていうかいらない」

「なんでだよ?」

と聞いてくる。

「だってロクなものくれたことないじゃない。去年は折れたシャープペンの芯だったし、一昨年は割れた卓球のラケットだし、いつだったかな? 牛乳のフタとかもあったかな?」

と理由を述べると

「シャープペンの芯は、どれだけ伸ばして書けるかという男の勝負で最高記録出したやつで、卓球のラケットははじめたときから使ってたのだぜ? しかも牛乳のフタは初めてメンコの勝負で勝ったんだやつなんだぞ!!」

とそのプレゼントの大切さをせつせつと語るも

「くだらない」

という言葉で私はばっさり切った。

「そうか、そうか。わかりましたよ? いらないんだな? やっとお前へのプレゼント選びに解放される」

「それはよかったね」

とそんな皮肉を返す私。

そして

「うん?」

拓馬はとあるお店に目が入ったようだ。そこはアンティークショップ。

その時の拓馬の顔はいつものよからぬ企みを持った顔だった。




翌日

昼休み

「……たいんだよ〜。だからなぁお願いだ。頼むよ」

「だから昨日も言ったじゃないですか? ダメだって」

また拓馬は女の子を口説いているようだ。

(学校のアイドルを口説いてるよ……まぁどうせ断られるでしょうけど)

私はその場を後にした。

「この通り」

と頭を下げる拓馬。

「わかりました。そこまで言うのでしたらいいですよ。その代わり……」

「本当に」

そして放課後

「拓馬帰るわよ?」

と拓馬の席に詰め寄る。

「わりぃ〜。これから用事なんだ。だから先に帰っててくれ」

と一目散に逃げて行った。

「なによ!! もう」




帰り道

(用事って何だろう)

と思いながら帰っていると

「いらっしゃいませ!!」

とものすごく聞き覚えがあるバカ声が聞こえてきた。

それは拓馬らしき声。場所は昨日のアンティークショップ。

よく見てみるとあれはまぎれもなく拓馬だ!!

隣には年上の女の人がいた。

あいつ〜

と怒りがふつふつと沸いてきた。



その夜

電気は付いていない。隣の家に住んでいるバカ声の持ち主はまだ帰ってきていないようだ。

もう10時、いつもならとっくにいるはずだ。

いろいろとイケナイ想像をしてしまう。あいつのことだ、やりかねん。

そんな一抹の不安を持つ中

部屋の電気がついた。

私は屋根をはさんであいつの部屋にむかった。そして窓をあけ

「た〜く〜ま〜  今日という今日は!!」

と怒鳴り込んだ。

すると

「わ〜! なんだよ!! 何怒ってんだ?」

と驚かれた。

「見たわよ! あんたアンティークショップいたでしょ?」

「そ、それがどうしたんだよ?」

私が詰め寄ると、拓馬は一瞬ビクッと動揺したが平静を装った。

「バイトだよ? バイト」

と答える拓馬。

バイト? 怪しい……そう直感が告げた。

「何を企んでるの?」

「別に?」

と素っ気ない返事の拓馬。

「だいたいなんでバイトなんか始めるのよ?」

「欲しいものがあったんだよ。わり〜か?」

拓馬は私の問いに対してそう答える。

欲しいもの? ますます怪しい……こいつのことは私が一番知っている。そんなまともな理由でバイトを始めるわけがない。

「かわいい娘でもいた?」

とさらに疑いをかける私。

「そんなんじゃねーって」

と否定する拓馬。

「わかった!! 好きな人ができたとか? じゃなきゃバイトしないもん。ねぇねぇそれってどんな人?」

「だからそんなんじゃないって言ってるだろう!! いい加減しつこいぞ! もう俺寝るから。たくっ人の気も知らないで……」

と最後にぼそっと言う拓馬であった。

「え?」




翌朝

「拓馬〜朝よ〜起きなさい〜」

と部屋に入ると拓馬の姿はなかった。

おばさんに聞いてみると、もう出かけたという。

またもや怪しい……バイトといい、理由といい、今朝といい、絶対なにかある!!

という確信をもって登校した。




数日後

放課後

「拓馬くん〜行こう?」

と好美ちゃんが拓馬を呼んでいる。ここ最近ずっとそうだ。

それにここ最近ずっと一緒にいることが多い。

付き合ってんのかな? まさかね……

その日を境にしてだんだんあいつの疲れが目に見えるようになってくる。

それから3日はいつものようにふるまっていたが10日もたてばずっと居眠り、ついには女の子を誘わなくなった。おまけに帰ってくる時間も日に日に遅くなってるし……

理由を聞いても別にとそっけない態度で教えてくれない。どうせくだらない理由だろうけ

ど気になる! どうしたんだろう? 

そんな中クリスマスが1週間後に控えたこの日

「知ってる? 好美ちゃんの彼氏できったって」

好美ちゃんとはこの学校のアイドル的存在。

「ウソ!! まじ! 相手は?」

「たしか榎本拓馬とかいってたな〜」

「マジか?」

「ああ、好美ちゃんの家から夜に出てくるのを見たって奴がいるんだよ」

と噂が私の耳に入ってきた。

ふと数日前の好美ちゃんと拓馬が一緒にいる光景を思い出す。

(もしかして!!)

放課後すぐにあの店に向かった。



扉を開けると

「初めてでとても痛かったですけど、気持ち良くてくせになりそうです?」

「そうか? そう言ってくれて嬉しいよ」

と2人が話していた。

え……? ウソ……もうそこまで進んでたんだ?

そして2人は私に気づき

「いらっしゃいませ!!」

と大声をだした。


「咲月!!」

と驚く拓馬。

「やっぱり思った通りね」

と私は睨みつける。

「なにがだよ?」

としらばっくれる拓馬。

「やっぱり、好美ちゃん狙いだったんだ?」

「ちげぇ〜よ!!」

否定する拓馬を

「帰るわよ!!」

と私は有無を言わせず拓馬の腕を引っ張った。

「ちょっと待てって! 仕事残ってんだよ!」

と抵抗する拓馬。

「どうせ好美ちゃんを困らせてろくに仕事もしないくせに」

というと

「なんだよ!!? それ」

「だっていままでいつもそうだったじゃない!!」

「なんだと!」

「なによ!」

とケンカになる。

「ちょっと落ち着いて! ね?」

と好美ちゃんになだめられる。

「どうせこいつのことだから好美ちゃんを狙って無理やり頼んだに決まってるんだから! ゴメンね? 迷惑だったでしょ」

と私は謝る。

「いいえ、迷惑だなんて……むしろこっちがお世話になってますよ。まぁ無理やり頼まれたのは本当ですけどね?」

少し苦笑いの好美ちゃん。

「だって好美ちゃんがかわいいから」

「もう、拓馬くんったら」

と顔をまたもや赤くする好美ちゃん。

「ほらね。やっぱりそうじゃない!! 帰るわよ!」

「だから、なんでそうなる! とにかく仕事の邪魔だからお前はかえれ」

と怒りを抑えて拓馬はまるで私を追い出すかように店から出された。

そんなに私のことが邪魔なのね!!! そっか、邪魔なんだ……私……

それなら好美ちゃんと本当に……あそこまで進んでたし。

「いいんですか? あんなことして? かわいそうでしたよ?」

「今はばれるわけにはいかないからな。それにもうすぐ完成なんだし」

「そうですけど……」



私は家に帰るとすぐに自分の部屋にこもった。

確かに女の子も誘わなくなったし、その辺は見直した。だが1人の彼女ひとに決めたんだと思うと悲しくなってくる。なんで? 顔はいいが女にだらしないやつでバカでお調子者いでいいとこなんて一つもないのに何で涙が止まらないんだろう? 浮かんでくることはすべてあいつのことばかり。追い回したイヤな日々もあの時くれた笑顔も……

そっか!! 私あいつが好きなんだ。本当はナンパを阻止してるのはほかの女の子に迷惑がかかるからではなく、私を見てほしいからなんだ!!

「なんで今頃になって気づいたの……? 苦しいよ……拓馬……」

「何が苦しいんだ? 咲月?」

後ろからデリカシーのないバカ声が聞こえてきた。

「拓馬!!」

「電気もつけねぇ〜で一人で何してんだよ? 辛気臭い顔しやがって」

「あんたには関係ないでしょ? だいたいなんでここにいるのよ? バイトは?」

「もう終わったよ。 お前こそなにかあったのか? ほれほれ言ってみぃ〜言うだけでも楽になるぞ〜」

といつものようにちょっかいを出してくる。

「あ〜もううるさいな〜!!! 出て行ってよ!!」 

「何だよ!! ひとがせっかく心配してのにさ」

「そんなの誰も頼んでないわよ!! いいから出て行って!! もう私に構わないで!!」

「わかったよ!! 心配して損した」 

拓馬私の部屋を出て行った。

これでいいんだ……





それからは拓馬と話すことはなくなった。

会っても気まずさから重い空気が流れる。

「よう」

「う、うん」

そんなこんなでクリスマスまであと2日と迫っていた夜のことだった

「咲月? いるか?」

とバカ声が呼んでいる、私の窓の前で。

なによ? こんな時間に

私は当然返事はしなかった。

「いるんだろう? 出てこいよ?」

執拗に窓をたたく。

ああもうでればいいん

「……って言ったってでてこねえか。まぁいいやでたくねぇ〜なら。でもこれだけは聞いてくれ。お前に話がある。だから明日夕方5時に三島公園にきてくれ。それだけだ。じゃあな」

と去っていく拓馬。

「待って!!」

と拓馬を止めた。

「なんだよ?」

「奇偶ね? 私も拓馬に話があるの」

「そうか。わかった」

と拓馬は去っていった。




翌日

全てが決着がつく日

放課後になるとすぐにいなくなった。あいつはいつものようにアンティークショップだろう。




ついにこの日がやってきた。あいつの喜ぶ顔が見たくてこの1か月睡眠時間を削って「これ」を作ったてきたのだ。なので喜んでもらわないと困る。まだ完成はしていないが、約束の時間までには完成する。あいつの喜ぶ顔を思い浮べるとに自然に表情が緩んでしまう。

「また、ニヤけちゃって。そんなにあの方が好きなんですね?」

「るせー」

そして完成した。

「できた〜」

「よかったですわね。1か月よくがんばりました」

俺に労いの言葉をかける好美ちゃん。

「好美ちゃん今何時?」

「4時50分ですけど」

「わかった!! ありがとう!!」

と俺は「これ」を袋にいれ、決戦の場所、公園に急いで向かった。




時刻は午後4時53分。

運命の時間まであと7分。

私の気持ちとおさらばする時間が刻一刻とせまっている。

私は三島公園に到着した。まだ着いていないようだ。

今日はクリスマスイブ。

夕方だがたくさんカップルが目につく。

本当は拓馬とそんなことしてみたいが今となってはもう叶わない……

いろいろと拓馬との思い出を走馬灯のように蘇ってきている。これがいずれいい思い出になるのだろと考えている中、やつが息を切らせてやってきた。

「すまん、待ったか? はぁはぁ……」

時刻は午後5時4分、4分の遅刻。

「4分遅刻。まぁいいわ。拓馬にしては早い方だから」

「で、話ってなんだよ? 昨日あるっていってたよな?」

と切り出された。

「私は嬉しいよ。あんたがあんなかわいい娘を射止めるんだから。でもその娘を泣かせたら私が許さないんだからね!! それじゃお幸せにね?」

これで全ては終わった……これからは別々の道を歩むのだ。

去ろうとする私の後姿に拓馬の待ったの声がかかった。

「ちょっと待てよ!! 咲月、何言ってんだ?」

と拓馬に聞かれる。

かっこわる……私

「好美ちゃんと付き合ってるんじゃないの?」

「なんでそうなるんだよ?」

「だってこの間アンティークショップで……」

とアンティークショップでのことを話した。

すると

「ハハハハハ……あれは足つぼマッサージだよ。おばさんに連れて行ってもらったんだ。お前何だと思ったんだ?」

笑って説明された。

「じゃああれは……私の勘違い?」

勘違いをしていたようだ。

「何と勘違いしてたんだ?」

拓馬はにやりとした。

「うるさいわね〜」

私は顔から火が出るほど恥ずかしかった。

「とにかく、これだ」

と取り出したのは紙袋。

それを渡された。

「開けてみろ」

と指示されたまま開けてみると

中にはオルゴール。

「これを私に?」

あまりの予想外の展開に私は目を白黒させた。

「当たり前だろ? いらねぇ〜なら返せ。作るのに1か月費やしたしろものだ。いらねぇ〜やつに渡しても意味ないし」

「いるよ! いるいる!」

そのオルゴールの箱はあいつらしく真ん中にはでかでか私の似顔絵に下に不器用な文字で

「Merry Christmas これからもよろしくな☆」

と書いてあった。

なにがなんだかわからない。そもそもあいつがこんなことしてくる意外さに驚いたと同時にとても嬉しく心が温かくなった。そのオルゴールを抱きよせ、大事に抱きしめた。

なぜだろう? 涙が出てきた。

「何泣いてんだよ? べつにそこまでじゃねぇ〜だろ?」

「うるさいな〜! 泣いてないわよ」

と涙声で反論する。

実に説得力も無い




とても驚いて涙を流してまで喜んでくれた咲月。とてもかわいい。この顔を見たくて1か月必死で作ったのだ。さすがに泣くとは思わなかったけど……

これを考えたのは12月初め、何気なく帰りに立ち止まったアンティークショップ。

その店の天井にちらりと見えた、“手作りオルゴールを愛する人へ”という看板。

俺は、ピンときた。その日俺は帰ってすぐにそのお店に向かった。

入ると辺り埃だらけで物がたくさんおいてある。魔女が出てきそうな勢いである。

「あの手作りオルゴールを作りたいんですけど?」

と店の人にいう。

「7万円からがございますが、どのようなのがよろしいのでしょうか? 拓馬君」

と対応する店員。

え? 拓馬君?

店員の顔を見ると我が高校のアイドル好美ちゃんだった。

「なんで? 君がここに? バイトか?」

と聞いてみる。

当然のことだ。決してお世辞でもいいお店ですねともいえない暗い物置部屋のようなお店にいるのである。

「いや、そのようなものでしたよかったのだけれども、ただの店番です」

「店番?」

「ここ私の家なので」

と答える好美ちゃん。

やっぱりかわいい……

「そうなんだ?」

「それでどうします?」

好美ちゃんによって話が戻される。

「ああ。7万だろう?」

一介の高校生に7万という大金なんかもってるわけない。

かといってどうしても諦めきれない……もらった時のあいつの笑顔を思い浮べる。

よし!!

「ここでバイトさせてください!!」

とお願いすると

「ちょっと、待ってくださいよ……」

と慌てふためく好美ちゃん。

「いいって。バイト代はいらないから。その代わりオルゴールを作らせてもらえば」

「無理です!」

と全力で否定された。

そうだよな? 簡単にうまくいくわけないか

その後も店主も交えてねばりねばって3時間経過したが、首を縦に振ることはなかった。




翌日

好美ちゃんに頼んだ。

「あいつの喜ぶ顔がどうしてもみたいんだよ〜。だからなぁお願いだ。頼むよ」

「だから昨日も言ったじゃないですか? ダメだって」

と否定されてなおも

「この通り」

と頭を下げる俺。

「わかりました。そこまで言うのでしたらいいですよ。頼んでみますからその代わりしっかり働いてくださいね」

と折れてくれた。

こうして俺はバイトをして終わればオルゴール作りという過酷な生活が始まった。

その日、あいつにバイトしている姿を見られ怒鳴り込まれた。あいつのことだ、また俺が変なことを企んだると思ったのだろう?

バイトは閉店の8時まで終わりそこから好美ちゃんの家でご飯をごちそうになり製作する。

主に講師は好美ちゃんや好美ちゃんのお母さんだ。

「ここはこうじゃない!!」

「違いますわ!! そうすれば寸法があわなくなるでしょう!!」

「ここもう少し切って!」

と2人の檄が飛ぶ。

そんな2人に俺はヘトヘトになりながら作る。最初の3日は持ったが後は気力でやっていた。途中挫折しそうになったが、あいつの笑顔を思い出し元気になることもあった。

終わるのは夜中になることもたびたびあり、朝帰りもしたこともある。全てはあいつのため……

作ってる最中にいきなり好美ちゃんのお母さんからこんなことを聞かれた。

「ねぇねぇ? 咲月ちゃんのどこが好きなの?」

いきなり聞かれたので戸惑ってしまった。

「え?」

「私も聞きたいです〜こんなに頑張ってるんですもの」

母親に同調する好美ちゃん。

「好美ちゃんまで……」

このままではおさまりがつかなそうだったので話すことにした。

「あいつは、ちゃんと俺を見ててくれるんです。女の子をナンパして、そのこにぞっこんになっても、それがいい子だろうと悪い子だろうとあいつは俺を引き戻してくれる。暴走してもあいつがちゃんと手綱を握ってくれてる。だからふら付いていられるんです。 あ〜何か自分で言ってて恥ずかしい」

俺の想いをせつせつと語った。

「完璧にのろけ話だよね?」

「ですね〜」

と目を細め俺をじっと見る2人。

なんだよ? 自分が振ったんだろ!!?

「それならベストを尽くさないとね」

こうしてオルゴールは完成した。





「その箱開いてみぃ〜」

オルゴールのフタを開けてみると

「♪〜〜」

曲が流れる。

「これは!!」

私は驚いた。てかこれなんで知ってんの?

「この曲覚えてるか?」

とマジマジと聞いてくる。

「なんであんたが知ってんのよ? これ」

あまりの恥ずかしさに半ば怒鳴り声のようになってしまった。

「だってお前これ小さい頃よく口ずさんでたジャン。それにこの曲好きなんだよな〜俺。なんか元気なれるからさ。題名は確かネコじゃらしの歌だったよな? これ」

そう言われて余計恥ずかしくなる。

「そんなことは覚えてんだから……」

「これも大変だったんだぜ? 好美ちゃんのおばさんに教えてもらって、俺の演奏を録音したんだからな?」

「うそ!!?」

「ウソじゃねぇ〜よ!! おばさんが昔ピアノやってたらしいから特別に教えてもらったんだ。それで朝帰りとかになってたんだ」

「そうだったんだ?」

と感慨深く頷く私。

「なんだよ!!? その反応は!!」

なぜかむきになる拓馬に

「別に〜」

と私は煽る。

オルゴールを作ったり、ピアノを習ったりしている拓馬を想像するとちょっと微笑ましくなり

「プっ」

と思わず吹き出した。

「なにがおかしい!!」

むきになる拓馬。

「いやいや、拓馬がね〜」

というと

「なんだよ!!? あ〜あなんでお前なんか好きならなったんだろう?」

とつぶやく。

「え? 今なんて……?」

私はその言葉に疑った。

「そうだよ!! 悪いかよ? 俺は咲月が好きなんだよ! ずっと前から。俺の初恋なん

だよ!!」

むきになりやけくそで叫ぶ拓馬。ムードもへったくれもない告白。まぁ拓馬らしいけど

「何よ!! それ!!? 意味わかんない。今まで気持ちを抑えていた私がバカじゃない!!」

それに追随する私もどうかと思うけど

「私も好き!! 拓馬が大好き!!!」

「絶対に離さないからな」

それから私たちは抱き合い、キスをした。

とてもドキドキして一番近くに拓馬を感じることができた。

こうして私たちは幼なじみから恋人になった。




それから数か月

「なぁ榎本、鈴羽女子すずはじょしの由香ちゃんがお前のこと気に入って今度会いたいだと」

と拓馬の友人が休み時間にデカデカと話していた。

拓馬は飲んでいたジュースを吹いた。

「ゴホゴホッ! マジで!!?」

興味津津の拓馬。

「ほ〜誰かな? その由香ちゃんって?」

さりげなく話題に入る私。

拓馬は気づいてない

「この間の合コンで、知り合ったんだよ。それがさめちゃくちゃかわいくて」

とみんなはそれに気づき、ニヤ付きながら黙るが、気付かない拓馬は興奮気味に話す。

「合コンね〜? そんなにその子かわいかったんだ?」

「そうそう……え?」

私を見て気づいた拓馬はみるみるおもしろいように固まっていく。

「こら待ちなさ〜い!!!」

「ごめんなさい。もう2度としませんから〜!!!」

と追いまわす。付き合い始めて何回目だろう?

たぶん私たちはこういう関係なのだろう……この先も――


読んでいただきありがとうございます。

所々支離滅裂なところや飛躍しすぎというところもあり見苦しかったかもしれませんが最後まで読んでいただきありがとうございました

Merry Christmas

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[一言]  べた恋ってこういうことね!www(*^_^*)…くさっ、くさ~www きっとクサさを競う戦いなのだろう、壮絶すぎる…!  クリスマスはプレゼントネタが多いけど、サンタって言葉が出てこない…
[一言]  はじめまして……ではありませんね(笑)、二度目にお邪魔いたします、やまなみなつです。  のっけからダメ出しになってしまうようで申し訳ありませんが、 >私、横井咲月(よこいさつき)が1年…
2009/04/29 17:52 やまなみなつ
[一言] こんばんは。 先日評価依頼しました、かけらといいます。 ネコじゃらしの歌、読ませていただきました。 ああ、この歳のカップルってこうだよね。と思いながら楽しく読ませていただきました。王道ですね…
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