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異世界ライフ!  作者: 白告ハリ
第1部
8/11

変わり者は何処にでもいる

教室で担任の中西によるホームルーム中である。俺が現実世界に戻ってきてもう一週間が経つ。こちらの世界の一週間は何という程何もなくただ時の過ぎゆくままにこの身を任せていた。こうしている今も時の波に浮き輪を浮かべプカプカと漂っている。

『おい!おい!鬼頭。聞いてるのか。まったくお前は…いいか!掃除の分担を決めるから四人一組を組め。俺の仕事はここまで、後はお前が中心になって決めろよ。』

出たー。中西の能力である職場放棄。まぁ三十五人の四人一組だとすればあまり困ったことはないな。よし、じゃあ組むか。

おーい、小野田。あ、野球部で組むか。じゃあ寺西。ダメだ女子三人に囲まれてやがる。やばいぞ段々と決まってきた。俺って会長じゃなかったか。いや、くじだから人気はないのか。不本意だが奴で我慢しよう。フィリピンからの留学生であるエミリオ君だ。エミリオ君はまず日本語が話せない。彼なら一人になっているはずだ。エミリオ君、俺と組もうじゃないかと声を掛けると無言で首を横に振られた。周りからのかわいそうな視線。やめろまるで告白に失敗したみたいな。エミリオ君だとこっちから願い下げだわ。だれかいないか。だれか組んでくれないのか。いや、組んでください。頃合いと考えたか中西が口を開く。

『よーし。みんな決まったかぁ。またお前か鬼頭、早く決めろ。お前と原田だけだぞ。もういいから、二人で組め。』

そうこのクラスは三十五人ではあるが一人は不登校のために現在は三十四人なのである。原田とはクラスは同じだが話したことは一度もない。基本時に一人で寡黙。かといって仲間はずれというわけでもない。いわゆる一匹オオカミのような奴だ。いつ見ても小説片手に生活をしていて、体育でドッチボールをやる時も片手に小説、廊下を歩く時も片手に小説。昼飯の時間もそうだ。あいつは一人図書館で弁当を食べる。図書館の飲食は禁止のはずだが司書の内田先生に原田君は特別と許可を得ているらしい。話したことはないが俺は原田に興味があるのだ。これは間違いない。

『あのさ。二人で無言もきついしとりあえずホームルーム終わったら図書館で話しないか。俺はあんたと話したい事がある』

急な原田からの誘いに戸惑いながらも首を縦に振りホームルームが終わるのを待った。チャイムが鳴りホームルームの終了と同時に俺は原田の後ろをついて図書館へ向かった。図書館も授業で来館して以降は一度も足を踏み入れたことがない。

『あら。原田君。今日はお友達も一緒かしら。』

『こんにちは、内田先生。今日は勉強しにきました。先生も冗談がお上手ですね。僕に友達なんていませんよ。僕は自分の為以外の時間は使わない主義ですから。』

おい、原田ってこんなに喋る奴だったか。しかもなんだこいつの返答は。友達と言えばいいではないか。仮に友達ではなくても。そういうことは俺がいない時に言ってもらいたい。内田先生への挨拶を終え原田はまるで四回目の迷路を解くかのようにたくさんある本棚の間を通って自分専用の窓近くの椅子に座った。

『本も読んだこともないあんたが四回目の迷路とか上手い比喩表現なんかするな。別にあんたの心を読んだわけじゃない、なんとなくそんな気がしただけだ。』


こいつなに奴だ。まるで、いややめておこう。俺に上手い比喩表現は出来ない。自分でもわかってはいる。しかし物語上主人公だし、俺目線の物語だし。しばしの無言に痺れを切らした原田が口を開く

『あんたに任せておいても話が進まないし、いきなりだが本題といくぞ。あんたあっちの世界に行ったろ。え、どうしてわかるかって顔してるな。相変わらず鈍い奴だ。そろそろわかってほしいものだな。そう、俺もあんたと同じ特殊な異能力を使えるものだ。あんた、一週間前に行方不明から帰ってきて三日が十日とかなんだか絶叫してたろ。その時に感づいたって訳だ。』

『ちょっと待て。なんだかよく分からんぞ。えっと……つまり、あの』

俺の言葉に出来ない表情や態度を見てか原田は続ける


『話は最後まで聞け。あんたもあっちの世界に行った身ならわかるとは思うがこっちの世界とあっちの世界は時間の流れが違う。そのせいであっちの世界には行きづらいし、何しろあんたがあっちの世界に行かなきゃ物語が進まん。物語名も異世界ライフだからな。つまり、あんたはあっちの世界に行かなきゃならない。それに俺も協力してやるって言ってんだ。』

『色々言いたい事はあるがまずは物語とか言うな。まぁたしかにあっちの世界には興味もあるし正直また行きたいとは思う。しかしそれとお前の協力になるの関係がある?』

俺がそう続けると原田は馬鹿にした顔で続ける。

『俺の事はあっちの世界の人間にでも聞け。それで分かる。関係ってなぁお前。本当に鈍い奴だ。言ったろ俺は異能力者だ。』

『わかったよ。ところでお前の異能力って一体。』

『それはまた今度な。次回にでも話そう。』


今日出会い、始めて話したクラスメイト原田とはなんとなく距離を縮める事が出来た気がする。まだまだ分からない事だらけだが、原田はこれからも関わっていく重要な人物という事は分かった。現実世界でも俺の出会う奴は一癖も二癖もあるなぁと思うと少ないながら笑みがこぼれた。俺と原田の二人は目を合わせお互いに微笑みを返し残りの休み時間を静かな図書館でまったりと過ごすのであった。

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