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第四話

「わーん、会いたかったわ。翔太―。」 

 「俺もだよ、美樹。良かった無事で。本当によかった。」


 俺の目の前で翔太と美樹の熱い抱擁が交わされる。あー、はいはい。幸せそうで何よりですね、と。俺たちは会長の指示のもと、一校生の出来る限りに連絡を取った。会長の推測では、あの飛行機に乗り合わせていた人間が全てこの町に集まっているかもしれない、ということだった。だとしたら、まずするべきことは、どこか場所を指定して全員を集合させるということだった。そうすれば不安も改善されるし、なにより情報の共有が出来るということで、この結論に至った。 そして指定されたのは、できるだけわかりやすく、どこにいる人でも目印にできると思われた巨大な時計塔前だった。まあ、想像通り、俺たちが時計塔前にたどり着いたときにはすでに人だかりが出来ていた。友人との再会に感涙する者や、不安から開放されて安心している者、別に普段と変わらず馬鹿やっている者など、様々であった。中には一校生でない人間も混じっていたようだったが、偶然俺たちと同じ飛行機に乗り合わせていた人たちであろうか。


 「でも、なんかおかしいわね。」

 俺たちは美樹と再会したのと時を同じくして、佳苗とも無事再会を果たせていた。

 「え、何が?」

 「だって見てみなさいよ。こんなにたくさん人がいるのに同伴してた先生とか、パイロットの人とか、とにかく大人の人が全然見当たらないわ。」


 言われて見れば確かにそうだ。相変わらず佳苗は妙に鋭いところがある。でも、どうしてだろう。飛行機の乗客全てがこの町に来ているならば、先生などの大人たちがいなければおかしい。代わりに明らかに高校生ではない、見た目幼稚園児くらいの子供の姿が散見された。家族旅行かなにかの乗客だったのだろうか。彼らは他の一校生たちによって保護され、ここへ連れてこられたらしく、親の不在を悲しんでいるのか、声をあげて泣いている姿が見受けられた。あんな小さな子供がいきなり親を失ってこんな薄気味悪い町に放りだされた、というのならなんとも可哀想なことだ。俺なら絶対に耐えられない。


 「本当に大人の人がいないんだとしたら、結構まずい状況ね。いざというときはきっと私たちだけじゃどうにもならない。」

 「でもまあ、なんとかなるんじゃねえのか。俺ら生徒会が指揮すれば。」

 「ダイスケ君の言うとおりだ。それにいざとなったらこの私、北条タクムがなんとかしてみせるから安心したまえ。」 

 「ったく、口だけは達者な野郎だ。」

 「まあまあ、ダイスケ君、そう言わずに。」  

 「うるせえ、西野。お前は黙っていろ。ほんとなんでここの生徒会はこうも無能が多いんだか。」 


 俺からしたらお前だって同じだ、とダイスケには突っ込みたくなるが、当のおれ自身もほとんど活躍できたためしはなかったので黙っておく。このチームは完全にユキ会長のワンマンチームといった感じだ。


 「それより、カズマ、その子ずっと背負ってて大丈夫? 私も手伝おうか?」

 「ふん、大丈夫だよ。それに佳苗みたいに非力な奴が背負えるわけないだろ。」

 「それ、あんまり女の子に言っても悪口になってないんじゃ・・・・・・。」


 例の包帯少女は俺が背負っていくことになった。助けた責任は最後までとれ、ということだ。まあ、かなりきついがあの民家に一人置いていくわけにはいかないからな。俺がやるしかない。


 「そろそろ全員そろいはじめたころかしらね、見た感じ。じゃあ、私はみんなの前で現状報告も兼ねたスピーチ紛いをしてくるから、あなたたちは彼らをなるべく整列させてちょうだい。一度集団行動の体を整えないとだから。カズマ君も私と一緒に来てちょうだい。手伝って欲しいわ。」

 「はい、了解です。」

 「わ、私も、この北条タクム氏もどうかお力沿えをさせていただきたい。」

 「分かったわ。じゃあ、北条君も一緒に来て。」


 会長のリーダーシップぶりはこんなときでも遺憾なく発揮される。俺もこういう風になりたいものだ。俺はひとまず背負っていた女は翔太に預け、会長とともに聴衆の面前へと向かった。


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