Karte
行ってはいけないあの場所に。
取ってはいけないあのモノを。
時刻は午前二時。
丑三つ時と呼ばれる時間、黄色いテープの前に…いくつかの人影があった。
「うっわマジかよ~wここメッチャ雰囲気あんじゃん!」
「だろだろ?俺さ~いっぺん心霊現象体験したいんだよな~w」
「おっま変わってんなw」
ワイワイと騒ぐ三人は、無遠慮に黄色いテープを越えていった。
「…ここからモノを持ち出さない方が良いな;」
「ああ…ここはヤバいな。」
冷静な二人は外にいたが…もしもの事を考え、三人の後を追った。
「うっは~wすっげぇボロい!」
「そりゃ廃病院だしな。」
病院の中は薄暗く、すすけた匂いが漂っていた。
「なぁ三好、お前ここがこうなった理由しんね?」
三好…と呼ばれた青年が、ニヤニヤと笑いながら答えた。
「ああ、医療ミスを隠ぺいした挙句、遺族から放火されてるんだとw」
「うっわ笑えねぇww」
ワイワイと騒ぐ。
その内…彼等は奥の方にある、手術室に辿り着いた。
あの二人も追いついて。
「早いなお前等…」
「レンとオノが遅かっただけじゃんww」
三人の内の一人がからかい、三好ともう一人は手術室の扉を開けた。
「うっわ…これ血痕か?」
三好が言った通り…床には、赤黒いしみが広がっていた。
「天井もだぜ!」
「うっわおっかねー…」
その部屋…手術室は、あちこちが血痕で赤黒くなっていた。
「…多分、部屋のモノに手を触れたらヤバいと思う。」
オノが言って、扉を開ける。
「早く出よう。」
レンも言って、部屋を出た。
「俺等も行こうぜ;」
「お、おう…。」
「ああ。」
三好は言いながら、近くに落ちていたカルテを拾った。
カルテは読めなかった。
「早く行くぞ」
レンの言葉を聞いて、三好は部屋を出た。
カルテを…内ポケットにつっこんだまま。
「それじゃー今日は解散な!」
騒がしかった三人のうちの一人が、解散を宣言した。
「帰ったらすぐ風呂だわこれ…」
「…何も無くて良かったな。」
「ある意味あったが…まぁ、良いか。」
ワイワイと騒いで、そのまま家へと帰った。
家で三好は気付いた。
「あ、カルテ返すの忘れたな…」
入り口で置こうとして、すっかり忘れていたのだ。
「ま、明日返せば良いだろ…」
と言いながら、三好はまたカルテをめくった。
そして、読めなかった理由が分かった。
ページは、全て赤黒かった。
裏も表も、表紙も何もかも。
「なんだ…これ…」
呟いた三好の携帯に、電話がかかってきた。
見た事のない番号だったが、三好はそのまま応答した。
「…もしもし?」
『・・・・・・ザザッ・・・・・・』
「…あの?」
約10秒ほどノイズが流れた後、唐突にその声は聞こえた。
『〇〇病院の者ですが カルテを お返しください』
それを聞いた瞬間、三好は携帯を切った。
〇〇病院…それは、今日行った廃病院の名前だ。
三好は僅かに気味悪そうにカルテを携帯を見た後…ベッドにもぐった。
再び携帯が鳴る。
三好はそれを無視した。
しかし…触ってもいない携帯は勝手に応答し、声が流れてきた。
『そちらへ向かいますので 一分ほどお待ちください』
それを聞いて――三好は外へ逃げ出した。
今更逃げてどうなる事も無い。
ただただ逃げた。
あのカルテは、何故か持ってきていた。
それでも、三好は気付いていなかった。
ただ逃げる。
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて――――
『探しましたよ 貴方が 急に 走り出すんですから』
捕まった。
『さぁ カルテを お返しください』
無機質な声。
三好はユックリと、背後を振り返った。
そこには…白衣を着た男がいた。
――男、で合っているのかはわからない。
何故なら…首が、無いからだ。
「ヒッ…」
悲鳴をあげる三好に更に近付き、医師は言う。
『カルテを お返しください』
「そ、そんなの―――持ってない!家だ!」
三好は、錯乱して叫んでいた。
医師は頭の辺りを困った様にかき、言った。
『貴方が持っている それ、ですよ』
指差されてやっと、三好は持っている事に気付いた。
だが…
「はずれ、ない!?なんで、なんで!?」
手に吸いつくかの様に、しっかりとくっついていた。
「外れろ…はずれろよ!」
グイ、と引っ張っても取れない。
それどころか、反対側の手に移るだけの様だ。
「くそ…くそっ!」
三好は医師から逃げながら、カルテを引っ張った。
しかし、カルテはやぶれもしなかった。
『待って下さい 返して下さい』
医師が声をあげながら追いかけてくる。
三好は、夢中で走った。
捕まったら、殺されると思った。
――いつの間にか、森の中を走っていた。
だが、三好にとっては逃げれれば何処でも良かった。
『返して――――』
声が、段々遠くなった。
逃げきった、と思った。
同時に、はずさなければ…とも。
簡単にはいかない事を知らず…。
『追いつきました そのカルテは 大切なんです』
直ぐ後ろに医師がいた。
また、三好は夢中で逃げ始める。
駆けて
駆けて
駆けて。
いつの間にか、彼は…あの病院にいた。
訪れた時よりも綺麗な姿になっていた。
患者達が大勢いる。
三好はその中を駆け抜ける。
あの医師も同じ様に駆けてきた。
やがて、三好は手術室に辿り着いた。
そこには誰もいなかった。
だから、ドアを閉めてベッドの下に隠れた。
背を向けた瞬間に逃げだそうと思って。
だが、やはり…簡単にはいかなかった。
『せんせい かいぼうそざい つかまえました』
抑揚のない声だった。
気がつくと三好は、手術台の上にいた。
体はしっかりと固定されているかの様に動かない。
医師が言った。
『貴方は 解剖の サンプルに なりました』
続いて、抑揚のない声の正体…看護師が言う。
『かるてを もって にげたからです』
二人はかわるがわるに言った。
『ああ でも 心配なさらないでください』
『あなたも ここの かんじゃに なるだけですから』
『きっと 彼等とも 会えますよ』
『あなたが つれてきたいなら かれらも いっしょに』
喋りながら、医師がメスを取る。
そして―――――
【昨晩、王羅高校の3年・三好 竜寺君が亡くなっているのが発見されました。】
【第一発見者によると、三好君の遺体は解剖されており、内臓は何処かへ持ち去られた様だとの事です。】
【警察は、殺人事件として捜査しています。】
【――次のニュースです…】
都市伝説…血染めのカルテ
どうなる…24時間以内に電話。応対すると1時間以内に再び電話。その後何処へ逃げても廃病院へ連れて行かれる。助かった例は無し。
※実在する都市伝説ではありませんのでご安心を。