表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

怪奇拾遺集

効果覿面の・・・(6/15編集)

作者: 狂言巡

軽めですが、猟奇表現が登場します。

「耳かっぽじって聞きなさいよねェ。むかーし昔、あるところにいた女の話をしてあげる」


朝野光梨(あさのひかり)曰く、その女はとんでもなく自意識過剰な人物だった。『自分が世界で一番美しく、そして一番偉い』と思いこんでいた。


「え、目の前の誰かさんみたいですって? ……後で覚えてなさいよ」


 確かにその女はそう自惚れるくらいの美人で、財力もあり、とても頭の切れる女だった。その上国の王やお偉い方とも仲良くしていて……まあ世界に敵なしと言ったような状況だったのだが。でもある時女は気づいた。自分に対して唯一であり、敵わない敵に……それは『老いること』。


 ここで一旦言葉を切ってみる。周りを見渡せば案の定「はてな」といった雰囲気になっている。

 今まで立て続けに『怖い』話を聞いてたもんだから、鼻が鈍くなったのだろう。光梨の話がどうすれば怖くなるのかわからないようだ。

 ……さて続けるか。


「そこで女は考えた……どうすれば永遠に今の姿のままを保っていられるのか……そしてある日女は思いついた……」


 ごくり――複数の息をのむ音がきこえた。


「……薬を使おうってね」


 途端につまらなそうな、がっかりしたような空気が流れる。全く、怖い話というのは最後まで聞いてナンボだろうに。


「もちろん、どこかに売ってるような普通の薬じゃあないわよ? 原料は……『人間の血液』。それも一人、二人の血じゃあない。彼女は辺鄙な土地を買い取り、身寄りのない使用人を雇ったり孤児を引き取ったりして、新鮮な血を搾り取って秘薬を作った」

「……その作り方? 詳しいことは解ってないわ。第一誰もそんなの知りたくはないだろうし? あとね、殺された人数もわかってないの。行方不明者及び被害者があまりにも多すぎて警察は666体見つけたところで匙を投げたらしいから」

「……ただわかってるのは、彼女が生まれたと確認できた年から四〇〇年がたち、『大量殺人犯』として捕まった時も二十代そこそこにしか見えない容貌をしていたことと、その『秘薬』を飲めなくなってから三日後にはこの世のイキモノとは思えない様相であっという間に衰弱死したこと……一体何人の血を定期的に飲んでたんでしょうね……」


 ふふふと小さく笑い、光梨は話を終わらせた。血の気が引いた顔になっている者がちらほら見える。

 次に誰かがいちゃもんつけてきたら言ってみようか。


「薬にするわよ」


 ってね。

 手元のジュースを飲みほした光梨は、血のように赤い唇を似たような色の舌で一舐めした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ