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巻き込まれ少女  作者: 小鳩雨
第一部
8/21

第6話 脚と少年

お気に入り登録30件、本当にありがとうございます。

引き続き宜しくお願い致します。

柔らかな日の光を顔に受け、目を開けてみれば見知らぬ天井が広がる。


まだよく回らない頭が徐々に覚醒していくにつれ、ユハイエルは現在の状況を思い出してきた。




夢では、なかった。



知らない世界にやって来て、

ある意味いつも通りである揉め事とこんにちはをしたのち疲れ果てて寝た。



思い出されてきた昨日の記憶は、夢であるには余りにも鮮明過ぎた。

だから頭の何処かではこれが現実であることがわかっていた。


わかっていたのだが。



(もうちょっと現実逃避していたかったな~…なんて、はは)


ひとつ、溜め息をもらす。

階下では既に人が動きまわっている気配がする。

きっとアウラさんだろう。



まだまだ考えなくてはいけないことがたくさんある、そう思うだけで頭とお腹がずっしりと重くなった様に感じた。


…ん?お腹?




朝から仕事帰りのように虚ろになった目を自分の腹部に向ける。



脚がある。




…いや、自分の脚ではないのだ。

私は間違っても自分の腹から横方向に脚が生えている様な人間ではない。

むしろそれは人間ではない。

それだけはわかって欲しい、はい。



腹筋に力を溜め一気に起き上がると当時に自らの左脚を持ち上げ、謎の脚を引っ掛けて右方向に払いのける。

ドサッ、いやゴキッ、かな?

とにかく嫌~な音を立てて落ちたそれをベッドの上から覗き込むと



半袖に短丈の服を着ている、ふわふわな茶色い髪の毛の少年が、頭を抱えて蹲っていた。






すまぬ。許せ。



ていうか君だれ?







------------






「ごめんねエルくん、でも少し重たかったよ。」



「いや、全然気にしてないぞ!ていうかお前誰だ?」




腹に乗っていた脚の正体である彼、エルくんはアウラさんの息子だった。

下に降りて行った際会った時、おや帰ってたんかい、と事も無げに告げたアウラさんに、彼はおう!ただいま!と返していた。


昨日も思ってたんですけど、アウラさんって放任修主義ですよね。

エルくんだってまだ私より下だろうに、帰ってたのって!!




アウラさんに促され、お借りした服に着替えた私と彼がテーブルを囲んで席に着く。

朝食をものすごい勢いでかき込みながらもニカニカと眩しい笑顔を見せて私に問い掛けてくる彼 (頭、本当に大丈夫だったのだろうか)をじぃっと見詰めていると、それに気付いたアウラさんが笑いながら説明してくれた。



「エルはこの街の警備隊に参加しているんだよ。帰りが遅くなったのは当番だったせいさ。

エル、この人はユハって名だよ。昨日ヘルがお世話になったんだ。仲良くしてやんな。」



なんとエルくんは警備隊に所属しているらしい (まだ若いのに!いや、そういったら私も人の事言えないか…)。

まだ見習いだがね、とアウラさんは付け足していたが、その表情は誇らしげだ。



「ああ!そういえば昨日見た気がするぞ!赤髪の兄ちゃんと一緒にウチに来てた目が虚ろな奴!!」


「え?あの場にいたの?っていうか何その覚え方!??」

いくらなんでも失礼ですよ!

私が半眼になるのは何か面倒事に巻き込まれた時だけなんだから!

⇒つまり一日の大半が虚ろな目をしているということだ。


・・・だめじゃん!


結局自分で自分を打ちのめす結果となった思考回路を止めようと頭を振っていると、アウラさんがたしなめるような口調で告げた。


「お前、兄ちゃんなんて軽々しくいっちゃあいけないよ。あの方は帝国の中でも随一の軍人さんなんだから。」

分かっていると思うがエルくん曰く赤髪の兄ちゃんは、昨日お世話になったソルさんのことだ。

昨日居酒屋でお偉いさんだということを傍にいた人から聞いたが本当に凄い人だったとは。

あ、そういえば今日此処を発つって言ってたよね・・・

もう一回お話したかったなあ・・・



昨日はなんとも微妙な受け答えをして別れてしまったものだからもう一度会って話したかったのだ。

自分が、これからどうするのかを。



その思考を読んだかのように「ユハ、あんたはこれからどうするんだい」と問いかけられ、自分の決心を告げた。


「私も此処を発つつもりです。

 私の元いた北のほうへ行こうと考えているんですけど、あまりにもここら辺の事を知らないのでもう少し滞在したいんです。

 お金・・・はちょっと今持っていないんですけど何でもお手伝いするのでここに置いてもらえませんか?」



快く承諾してくれた彼女にありがとうと礼を言って私は二人に笑顔を見せた。

(良かった。とりあえずここで生きていく力を身につけないと。)



「よし、じゃあ今日は忙しくなるよ!!大きな祭りも近いからね!できる限りのことを準備しなくちゃ」


「はい!宜しくお願いしますね、アウラさん!」




こうして少しの間、やがて「厄介事引受人」と呼ばれるようになる少女がアウラさんの後ろについてまわる光景を、街の人々は多々目撃することになる。






大きく事が動いたのはそれから数日経った日の事であった。






誤字・脱字がございましたらお教え願います。

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