第4話 ある騎士の昼時
他者視点になります。
大ユーリウス帝国南部、オルジダ領の農業に特化しているカーダ。
辺り四方を山で囲まれ、自然に溢れるこの街は、小さいながらも物資が豊富であり、人々の生活を潤している。
( 栄えてるねぇ~…しっかし、職業柄だかわかんねぇが皆おっとりしてやがる )
そう呟くのは帝国騎士団第二副隊長ソルオン・リザイア。
少し癖のある見事な赤毛を肩のあたりで結んでいる、見事な体躯をした青年である。
スラリとした脚をテーブルの下に窮屈そうに投げ出し食事を取っているその姿は、威圧感があり近寄り難く感じるが実際は部下にも気さくな兄貴タイプの人間である。
もともと南部の人間出身である彼はこうして、北部にある帝都から遠い視察にも進んで行くという非常にありがたい人材だ。
そんな彼はカーダへ視察にやって来たものの、先程漏らした通り大きな事件もない。
デズヴィルからの干渉がある可能性もあると考えたが取り越し苦労だったようだ。
そして全ての視察を終え、手持ち無沙汰になった彼が呑気に昼食を取っている、というわけだ。
(ああ、でもまあ、たまにはこういうのも悪くない)
何とも言えないのんびりとした空間が彼を取り巻いていたが、思わぬ形で邪魔が入る。
「かえしてっ!それはおばさんにあげるものなんだっ!」
「あんだあ!?こっちは何もしちゃいねぇだろうが、イチャモンつけてんじゃねぇ!!」
どうやら子どもに酔っ払った男共が絡んでいるらしい。
(…争いごとっつったらこんなもんか…平和っちゃあ平和だが…)
だが実際は考えていたより重いものだった。
予想外に酔っ払い共のタチが悪かったのか、今では子どもに掴みかからん勢いである。
非番のため、軍服を抜いではいるものの彼は騎士団の人間。
直ちに事態収集を図るべく腰をあげようとした。
その時、
「ね、ほんと、…やめましょう、うん。これは良くないですよ。」
そこには心底疲れたような、目を半眼にさせた少女が立っていた。
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