第3話 なるほど、隣から来たか。
こんにちは。ユハイエル・ミードです。皆さんお元気ですか?私?私は頗る元気ですよ!なんたって知り合いができたわけですからね!
あのあと、「変な人ではあるが、悪い人ではなさそうだね」と言って、母親…アウラさんが街に連れていってくれた。この活気溢れる街はカーダという名前で、大ユーリウス帝国の南に位置する…らしい。
そして更に南下するとデズヴィル王国に行く…らしい。
なんで「らしい」かって?そんな地名知らないからだよ!!
どうやら移動魔術式で連れてこられた此処はただの違う街じゃなくて違う世界中だったらしい。その後やはり出身を聞かれたけど曖昧に北にある、ちょっと閉鎖的な所から来たと言っておいた。
嘘を吐くのはあまり良くはないけど、これ以上厄介な事にしたくないからしょうがないです。
これ、生きる為の常識です。
街の中に入ると鮮やかに見えた色彩が一層増してくる。たくさんの果物や野菜を並べた市場、可愛らしいワンピースを着た花売りの女の子。
それらが十路地になっている道の至る所に存在して人々で賑わっている。時々聴こえてくる動物の咆哮は、先程見たドラゴンのものだろう。
初めて此処へやって来たユハイエルにも、カーダが栄えている街であることがわかった。
アウラさんはこの街で薬屋を営んでいるらしい。
大事だよね、薬って。
薬というものは、魔法を使えない人達だけじゃなく、魔術師も使うものだ。
基本的に魔法というものは術者の体に干渉しない。
だから火魔法を起こしたところで自分は燃えたりしないし、回復魔法で自分の身体が癒えることはない。それだからしょっちゅう怪我をしてた私は薬屋さんにかなりお世話になっていたのだ。
そんなアウラさんが経営している薬屋、「ベルへ」で私、ユハイエルはお茶を頂いています。木の実を取ってくれたお礼だそうな。
ちなみにアウラさんの子ども、ヘルくんは隣の店に木の実をお裾分けしに行ったらしい。
1人で大丈夫なのかと聞くと、「あの子は言っても聞きゃしないからねぇ」と言っていた。なるほど。
隣が居酒屋だからなのだろうか、賑やかな通りに面しているこの店の中で、アウラさんが木の実を粉々にすり潰している音を聞きながら私はある決断をしていた。
――――大人しくしていよう。そうしていればきっと事件なんか起きないはず。おおっぴらにはできないけどこの本を読めば帰る魔方陣もあるだろうし…!!
この本というのは回復・防御魔法の教本、『モテる!ヒア・ディール(回復・防御魔法)の全て』のことである。(お忘れかもしれないが、異世界に飛ばされてからもずっと片手に握りしめていた)
コソコソとアウラさんの作業場から離れ、テーブルの下で本を開こうとしたその時。
バンッという音を立てて扉が開かれ、エプロンを付けた細身の女性が入ってきてアウラさんに咳き込むように告げた。
「アウラ!アンタのとこの坊や、隣でガラ悪い連中に絡まれてるよ!」
「何だって!?」
…何ですってぇぇぇ!!!?