第1話 プロローグ
今回が初投稿です。
お見苦しい点もあると思われますがどうぞよろしくお願い致します。
巻き込まれ体質、というのをご存じだろうか?
自分がどんな事をしていようと、例えば立っているだけであろうと厄介事が舞い込んでくる。
避けようと思えば思うほどドツボに嵌まり、避けなければ見事に大惨事という、見ている人にとっては面白くとも本人にとっては全くと言っていい
程面白くもない性分である。
数は少なくとも、そんな可哀想な体質を持つ人々がいる中で
またここにも一人、その不条理さを嘆く者が。
こんにちは。私はユハイエル・ミードと申します。特技は魔法剣技、かなりの腕前だと自分でも思っています。
身寄りのない私を、今では我が子同然のように扱って下さっている師匠の下に弟子入りしてから早6年、私の住んでいる
リカウェル島では私と張り合える剣士はほとんどいない、はず。
師匠に従事するきっかけとなったのは簡単、私がかなりの確率で犯罪現場に遭遇してしまうから。
初めて遭遇したのは7歳の頃。
散歩でもしようと孤児院を出た直後に隊商を襲っている強盗グループに遭遇。
子どもならではのすばしこさをフルに使って警備隊に通報のちに逮捕。
次は道を歩いていた時、たまたま転んで転倒した途端に背後で地雷式魔術式が発動、そして爆発。
他の地雷魔術式の検知にも大いに役立ちました。
その後に違法魔術札密売のおじさんに幼児誘拐疑惑のおねえさん、はては反乱組織の人。
次々とそれはそれは個性豊かな人に出逢っては巻き込まれ出逢っては巻き込まれ、と持ち前の巻き込まれスキルで実地経験をほぼ済ませた私に魔法
警備部隊の師匠からの声がかかるのはそう遅くはなかった。
「こいつは使える!これで犯罪撲滅運動だ!!」なんて・・・・ねえ・・・。
当時10歳だった私は瞬く間に実際使える魔法を契約させられ、張り込み捜査のごとく島のあらゆるところに派遣される始末。
長かった・・・。いや、長いようで短かったかもしれないですけど。
そういうわけで私、こうも勇ましく育てられ、そして育ってしまったのでその鍛え上げられ方は半端なく、覚えてる魔法だって攻撃的なものばかり
になってしまっていて・・・。
師匠も元々攻撃魔法の魔術師出身だったので、女の子に人気の回復・防御魔法ってなかなか覚える時間がないっていうか・・・。とにかく得意では
ないんですよね。
それでもやはり私は女。約1週間の合宿の如き警備ツアーから帰ってきてへろっへろになった私に、これっくらいの回復系統魔法位叩きこんどけー
って師匠に教本を叩きつけられ、(そのときに本が頭に当たりそうになったのを避けて肘をしこたま机に打ちつけたのはまた別の話だけど)それを
読んでたんです。
そう、読んでたんです。
読んでただけなのに、
「・・・えーっと、・・・えぇー・・・あれ・・? 知らない道・・・?」
いやいやいや。そんなはずないよ。しっかりしなよユハイエルよ。
いくらこの分野が苦手だからといって現実逃避はいけないよ、うん。
ほら、元気を出して、ね?
それでも、視界全体に広がる緑。舗装されていないのか、幾分でこぼことしている細い道に立ち止まっているのは
間違いなく、自分で。
鬱蒼と茂る木の葉のお陰できついであろう日差しも十分な程和らいでいる。
ふと足元を見ると此処には場違いな程の、いつも履いている厚めの革のブーツ。
その下に浮かび上がっている何とも見覚えのある術式。
そう、まさに今教本で読んでいた・・・
急いでもと来た道を振り返ってみてもやはり知らない景色。
何処かで巣を作っているのだろう、鳥のさえずりを耳にしながら彼女は背中に冷たいものが流れた気がした。
まぎれもない、これは
「移転魔術式・・・発動し・・ました・・・?」
神様、あんまりでしょう。