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巻き込まれ少女  作者: 小鳩雨
第一部
12/21

第10話 巻き込まれるということ

投稿12話目です。評価・お気に入り登録など、本当に嬉しい限りです。

引き続き、お楽しみいただければと思います。

「そうか。嬢ちゃん、この街に来てまだ日が浅いのか。そりゃあ知らないのも無理はないわな!」


はい。そうですね。おじ・・・いえ隊長さん。




場所は変わって街の中である「ベルヘ」。

その後再び警備隊の所へ行って状況を報告してからの彼らの動きは早かった。

それは帝国でも指折りの軍人である憧れのグレオ、そしてソルオンがいるからなのかは分からないが、気を失っている侵入者たちは引きずられるようにして尋問所に連れていかれていった。

その後詳しく話を聞こうとソルオンに誘われ入った居酒屋(ベルヘの隣の居酒屋ではない)では、賃金向上のためのストライキが突如起こって罵声が飛び交う中に座るはめになったので場所を移させてもらったのだ。

すみません。ソルさん、おじ・・・隊長さん。


事件の噂を聞いたのだろう、アウラさんは私達をみるなり髪を振り乱して飛び出してきた。

シュンッとなってユハイエルの隣にいたヘルを引っ掴み、おでこを思いっきり地面につけさせて二人に謝っていた。

痛そう。でも、ヘルくんは頭固そうだからきっと大丈夫だ。

そんな失礼な事を考えていたユハイエルにもアウラは感謝の言葉を述べ、快く話し合いの場を提供してくれた。



そして今に至るのである。

ユハイエルが森の中で遭遇したおじさんはなんと、帝国騎士団の偉い人であった。

聞けば彼の出自は帝国北部、キーデルジア領を治めるシルギール公爵の弟だそうだ。

ソルオンも由緒ある軍人家系、リザイア伯爵の第三子であるという。

貴族の中でも皇族に近い最上階層の二人がこんな中ほどの街に視察に来たのは一重に二人が南部に縁があるかららしい。

ソルオンはこちらのほうで幼少時代を過ごし、グレオは放浪中に南部の風潮が気に入ったと話してくれた。

立場上ソルオンがこちらへ来る回数は少ないがグレオはしょっちゅう顔を出すので最早第二隊隊長の存在は街中に知れ渡っているのだ。

双方、貴族であることに囚われず街人に接するため、最初は戸惑っていた街民も次第に打ち解けていったそうな。



(やばい、どうしよう。そんな人達に気安くソルさん、とかおじさんとか言っちゃったよ・・・!

 打ち首・・とか?不敬罪とかになっちゃうとか!!!?)

一方こっち、ユハイエル・ミードは冷や汗だらだらものである。

闘いの最中とは違う緊張感で顔がいつになく強張っている彼女を見てソルオンは「そんなの気にしなくていい、自分から言ったんだから」と笑って言ってくれた。



「そうだぜ嬢ちゃん、そんな細かいこと気にすんなって!」

片手に酒をなみなみと注いだグラスを持ちながらグレオ隊長も笑う。


・・・苦労、してそうだな。ソルさん。

ソルさんは分かるんだけど、本当に貴族なの~・・・?やっぱ、普通のおじさんにしか見えな・・・


「お前、失礼な事考えてるだろ。」

・・ぎくっ。



「・・あ~・・!!そうだ!あの犯人達のことなんですけど!!質問いいですか!?

 あの人達の不穏な動きというのはどうやってわかったんですか??」

気にしなくていいと言われた事に安堵して、

じとりと見つめてくる隊長さんを視界に入れないようにしながら、ユハイエルは少し大きな声で質問を投げかけた。


「元から王国の動きが怪しいという報告が帝都にも入ってきていたんだ。だが前々からそんな情報が流れては、誤報だったりしたから今回もただの確認だけだと考えていた。

怪しいと判断したのは隊長の独断だ。」

「今回の奴らは総じて使い捨ての駒だな。王国側が否定をすれば非公式な視察であるこちらとしてもなかなか覆すのは難しい。」


「使い捨ての駒・・・ですか。確かにあれじゃああまりにも警戒心無さ過ぎですもんね。

それで、ここを狙うのは古代魔法が残る都市だから、とリーダーらしき人が言ってたんですが・・・詳しくご存じだったりしませんか?」

古代魔法が残る街カーダ。それが彼女がこの話題を選んだ理由だった。



「なんだ、嬢ちゃん古代魔法オタクか?若いのに珍しいもんだ。」

そんな彼女を面白そうに見つめてそう問いかけてきた。


(オ、オタク・・・違うんだけどなあ・・・)

妙な勘違いに少し落ち込みながらも「そんなところです」と返すとグレオが興味深い話をしてきた。


「なんというか変わった趣味だな。年寄り臭いってーか・・いや、別にけなしているわけじゃあないが。

 俺は詳しくは知らないが、古代魔法や魔術に関しては北部のほうが史料も豊富なはずだぞ。

 なんたって魔法魔術発祥の地の帝都があるんだからな。」


「え!!?そうなんです!??帝都で初めて生まれたんですか!??」


「そうだな、今から約500年前ってところか・・・って、これは常識だろう?」

街の人間でさえ知ってるぜ?とでも言いたげな隊長に、慌ててソルさんに話したことと同じ事を繰り返す。


「ほう・・そうか。常識が常識じゃない所から来たということだな。」

・・・上手くごまかせただろうか?


一つ目の区切りとして、あと一話を予定しています。

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