Combat・with・The・unknown〜英雄の帰還〜
アンコニュとの戦いから5年。
戦いを終え退役した俺は今日も今日とて聖樹の家でのんびり過ごしていた。
そんな俺の下にある人が訪ねてきた。
「久しぶりだな、エル」
アンコニュとの戦いに置いて様々な作戦を立案しゲネシス連合を勝利へと導いた連合軍の総司令、クランクさんだ。
「久しぶりって昨日来たじゃん」
暇なのか?
いや、確かにアンコニュとの争いは終わったが神血教会との争いは未だに続いている。
軍は退役したがそれは俺にも分かる。
だから決して暇では無いだろうに結構な頻度で来るんだよなこの人。
「いやなに、昨日話し忘れてた事があってな」
「ほん?」
本当は昨日話すつもりだった要件があったが忘れていたのか。
まぁクランクさんも多忙だから仕方ないか……。
「我々ゲネシス連合は他大陸に逃げた神血教会の残党……今はエオニア連合だったか……そいつらと戦争中なのは知っているだろう?」
「うん」
「現在我々のいる大陸はアンコニュとの戦いでの復興中だ、その隙を付いて海からエオニア連合が侵攻を開始した。それに伴いエルには一次的に復隊して貰いたい」
滅茶苦茶大事な話を忘れてるじゃん……。
「分かりました、クランクさんには世話になりましたし」
クランクさんに即返答をし、キューちゃんを抱えて直ぐに準備に取り掛かる。
オリヴィアさんの転移魔法の掛けられた扉を抜けて格納庫へ。
格納庫内に置かれている試作機のエンジンを起動し通信機を繋ぐ。
crank 《聞こえるか?》
「感度良好、問題無い」
crank 《良し、エオニア連合との接敵予定時間は明日正午頃だ、それまでに準備を頼む》
「了解」
crank 《それとエルの参戦は秘密とする、セシリアは勿論クーデリア達にも秘密だ》
「了解」
恐らく奇襲攻撃を仕掛けたいんだろうな。
この日は通信を終え、俺はセシリア達にバレないように試作機の整備を終えて1日を過ごした。
とは言えエオニア連合の件もありセシリア達は最近忙しいらしく会えて無い。帰ってきてないからね。
そして翌日。
セレーネに見送られながら俺はキューちゃんと共に約5年ぶりの試作機に乗り聖樹の麓から飛び立ち空を飛ぶ。
指定された高高度まで上がりそのまま東部へ向かって飛び続ける。
crank《あれから腕も鈍ってないようで安心だ》
「まだ戦闘に入ってないから何とも言えないが……」
俺とクランクさんだけの秘密の回線で通信を繋ぐ。
今回の俺の参戦は極秘、その為セシリア達にもバレないように特別の回線を設けた。
crank《さて、バナール1には敵エオニア連合の迎撃に出てもらいたい》
「バナール1……懐かしいね」
crank 《約5年ぶりのコールサインだな……話を戻すぞ。まずバナール1にはこのまま指定空域まで飛び、空域到達後即座に加速し敵艦を沈めて欲しい》
「奇襲による敵艦の撃破、それによる敵軍の混乱を誘発させその隙に敵軍を可能な限り蹴散らしていく感じ?」
crank 《そうだ、またバナール1の参戦は味方の士気を大幅に向上させる》
「そんなに効果的じゃないと思うけど?」
crank 《まぁそれは実際見れば分かるだろう……観測は此方で行う、バナール1はそのまま指定空域まで飛行してくれ》
「了解、行こ、キュー」
「キュ!」
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フィーニス国東部沿岸部。
そこでエオニアの強襲揚陸艇による上陸作戦が行われ、それを阻止せんとゲネシス連合軍が迎撃が行われていた。
空はフィーユ・リュミエール率いるリュミエール隊、クーデリア・オルドリッジ率いるバナール隊、ウィリアム・スミス率いるゴッズハウンド隊が。
地上はセシリア・フォン・セレスティア率いるエルフの部隊、ステラ・グラディウス率いるプリュフォール隊、アルティナ及びレスティナ・ヴァルドリン率いる人型戦闘機隊が主軸として迎撃に出る。
「絶対に上陸させてはいけないわっ!」
迫りくる揚陸艇に向けて魔法を放ち上陸を拒むステラ達。
Kudelia《数が多いッ!》
William《慌てるな!1つずつ確実に始末していけっ!》
ステラの持つ通信機から流れる声。
海から延々と飛来する敵戦闘機、その対処に追われるクーデリア達の声だ。
またセシリア達も揚陸艇を迎撃する為に魔法を放ち続けている。
そんな中、幾つかの浮遊する巨大な影が奥からゆっくりと姿を現した。
fille《うわ……ディヴィニティ級戦艦……》
Cecilia《偵察隊の報告で向かってるとは聞いていましたが本当に量産しているとは……っ!ディヴィニティ級の主砲が此方を向きましたよっ!》
fille《戦闘機隊!急いで私達の後ろへ!》
ディヴィニティ級の攻撃に備え魔法使い達が前に出て防壁を張り、その後ろに戦闘機隊が逃げ込む。
《来るぞ!!!》
誰かが叫ぶ、それと同時にディヴィニティ級の主砲が火を噴いた。
轟音と共に放たれた砲弾は空、地上の双方の防壁に着弾し爆発した。
《被害報告っ!》
《地上の固定砲台が3つ損傷!負傷者はな━━━》
続く報告は爆音によってかき消された。
主砲の他にもミサイルが放たれ、それが通信者の付近に着弾したのだ。
ディヴィニティ級は主砲に続き戦闘機隊に向けて機銃を掃射、一機、また一機と戦闘機が墜落する。
Kudelia《不味い……空にも被害が出始めましたっ!》
William《ディヴィニティ級から飛竜隊が飛び立ったのを確認したっ!》
Katrina《不味いですね……空も地上も押され始めました……このままでは上陸されるのも時間の問題ですよっ!》
「最悪の場合は後方の防御陣地に撤退っ!防御陣地にて体勢を立て直すわよっ!」
ステラ達が劣勢の状況を立て直そうという時、連絡機に重要連絡が入った。
ステラは手に持つ連絡機を見て確認をする、その内容は迎撃機が一機空に上がったと言うこと。
「味方迎撃機が一機参戦……?こんな不利な状況で一体誰が……」
Cecilia《たった一機……?この状況では無意味では……》
Sarine《クーデリア達以外に腕の良い戦闘機隊は居ないからね……僕ら地上部隊や上空の魔術師隊、バナール隊やゴッズハウンド隊の邪魔にならなきゃ良いけど》
セシリアやサリーネの通信を聞きながらステラは携帯連絡機を開き、新たに参戦した味方を見る。
連絡機から浮かび上がるマップ、そこに展開する部隊名が複数ある中、先程参戦したと連絡のあった迎撃機の一機が猛スピードで敵艦隊に向かっているのが見て取れた。
そしてその迎撃機に表示された名前を見てステラ達は驚く事となる。
「《《《banal1っ?!》》》」
それは滅びゆく世界を救った英雄、そのコールサイン。
彼が考えた部隊であり、彼が率いた部隊。
彼以外がその部隊を率いる事はその部隊のメンバー全員から許されず、また彼の象徴ともなったコールサインは彼の退役と共に永久欠番となった。
つまりそのコールサインを表す事は。
《彼だ!彼が帰ってきたんだ!》
英雄の帰還である。
それに伴いゲネシス連合兵の士気が上がる。
Sarine《エルが帰ってきたの?!》
Cecilia《まさか、夫は退役したんですよ?!》
「英雄の名を借りて空に上がったのなら許さない、だけど本当にエルなら……」
Kudelia《ええ、この戦いは私達の勝ちです》
そんな時通信機から声が聞こえた。
banal1《バナール1、戦闘空域に到着、これより作戦行動に移る》
Crank《バナール1、交戦を許可する》
それは彼女達がよく知る者の声であった。
海に浮かぶ敵艦隊に突っ込んだ一機の戦闘機が急上昇を始め高度を取り、その後直ぐに急降下を始め、それによって生じる風切り音が戦場に響く。
━━━━━月女神の警笛。
「帰ってきたのよっ!エルが!」
エルの駆る試作機が魔力砲を連続で放ちディヴィニティ級を一隻沈めた。
撃破された敵艦、そして戦場に鳴り響く【月女神の警笛】が敵に確かに混乱を招いた。
その瞬間を逃す事なくエルは敵艦に魔力砲を数発放ち、これを沈めた。
Kudelia《なんですかあの武器、知らないんですけど……》
fille《魔力砲って一発ずつチャージが必要じゃなかったっけ……?連続で発射してるんだけど……》
Cecilia《まさかエルったらまた試作品積んで来てません……?》
Sarine《エルの悪い癖がでちゃったかぁ……》
クーデリア達がそうこう言ってる間にもエルは一隻、また一隻と艦隊を沈めて行った。
William《ゴッズハウンド隊!バナール1を援護するぞ!一機足りとも近付かせるな!》
Kudelia《バナール隊!私達もエルの援護に行きますよ!》
ゴッズハウンド隊、バナール隊の両隊がエルを撃墜しようと試みる敵戦闘機隊への向かいそれを阻止。
両隊が援護に回ったことを即座に理解したエルは一人淡々と敵艦の排除に動く。
連射式の魔力砲、時には両翼に装備されたミサイルを放ち敵艦隊を沈めていく。
《駄目だっ!被害が大きすぎるっ!》
《撤退せよ!》
予定には無かった英雄の帰還、それも奇襲という形で攻撃を受けたエオニア連合は甚大な被害を被った。
英雄の帰還による士気の低下もあり、エオニア連合は終に撤退を開始した。
crank 《敵性勢力の撤退を確認。よくやった。全軍帰還せよ》
Eru《了解、帰還します》
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また本編 【Combat ・with・The・unknown】もよろしくお願いします!
もしかしたらだけどこんな感じの続編を書くかも。
余り期待せずにお待ち下さい。




