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第1話 硝子の瞳が見つけた光

初めましての方は初めまして、うちのうみです。

今作は僕の一番最初に考えついた作品になります!

オリジンです。

あまり期待はせず、へぇ〜って感じで読んでいけると嬉しいです!

「……お腹、空いてる?」


 湿り気を帯びた地下牢の静寂を、場違いなほど平坦な声が打った。

 鉄格子の向こう側。膝を抱えて丸まっていた少女――ステラは、弾かれたように顔を上げた。そこに立っていたのは、夜の闇をそのまま縫い合わせたような黒い外套を纏う女だった。

 ガチャンという音がして歩み寄ってくる足音。

 女の指先は、つい数秒前まで複雑な魔導錠を無機質に弄んでいた。だが、今はその「人を壊すための手」を迷いなく懐へ差し込み、銀紙に包まれた塊を取り出した。


「……これ、食べて。甘いし。……力が、出るよ」


 差し出されたのは、無骨な軍用チョコレートだった。

 それは、この邸宅に潜入するまでの道すがら、なぜか街角のゴミ箱に被された綺麗な布の上に「山盛りで」捨てられていたものだ。

 『休暇中の糖分補給は国民の義務よ!』という、耳の奥で今も響く親友リゼの無茶苦茶な理屈を思い出し、レイはわずかに眉を寄せた。


「……あ、あの……あなたは……?」


 ステラの震える声。レイは無表情のまま、感情を去勢された軍人時代の癖で、周囲の警戒クリアリングを済ませる。


「……。私は、通りすがりの泥棒。……休暇中だから、趣味で、この屋敷の『お宝』を盗みに来たの」


 レイは、ステラの頬に付いた汚れを自分の指先でそっと拭った。鉄のように冷たい指。けれど、触れたステラの肌は、驚くほど熱かった。


「……あなた、温かい。……お日様みたいにポカポカ。離したくない」


 レイの指は氷か鉄かのように、ビクッとしてしまいそうなほど冷たかった。ステラはその鉄のように冷たい手を自分へと引き寄せ頰に当てた。

 そして恐怖を忘れたように小さく微笑んだ。


「……気持ちいい。お姉さんの手、ひんやりしてて……とっても、気分が楽になりますっ」


 ドクン、と。

 レイの胸の奥で、異質な『バグ』が生じた。


「……。……気持ちいい。……この手が?」


 その様子を、数百キロ離れた帝都の帝国軍中央軍事基地の特務作戦部隊長執務室で、最高機密の技術の粋を集めて作られた盗聴器越しに聴いていた女――リゼは、飲んでいた高級葡萄酒を盛大に吹き出した。


「……っ、げほっ……げほっげほっ! ちょっとレイ⁉︎ 何その天然タラシなセリフ! バルトっ、聞こえた⁉︎ 今すぐ二人の逃走路に、最高級の脱出用の軍用バイクと、お祝いのケーキを「不法投棄」してきなさい‼︎』


 現場に行けないもどかしさを、過剰な物資()に変えて叫ぶリゼ。

 そんな喧騒を知る由もないレイは、不器用にステラを抱き上げた。


「……あなた、重くない。……行こう。……私の拠点に、チョコがいっぱいあるの。……一緒に、食べる?」


 痩せこけてはいるがそれでも35〜40kgはあるはず子供を易々と抱き、軽い足取りで走り出しながらも元気付けようとしているのか話し掛けてくれる泥棒さん。

 気が付けばコクっと自然と頷いていた。


「……じゃあ、早く行こう」


 タッタッタッと軽い足取りで螺旋構造の階段を一瞬で駆け上がっていく。

 建物の外へ行くために玄関へ向けて廊下を走る。先ほどまでいた地下牢はもう遠くにあった。

 このままならとステラが思っていると、


「居たぞー‼︎」


 貴族の私兵にバレてしまった。

 泥棒さんが立ち止まって目の前の私兵の数を確認、ステラをゆっくり降ろして一歩前に出ては、太もものナイフホルダーからナイフを取り出した。

 窓から差し込んでくる月夜の光を反射し煌めくは漆黒の刀身。


(……初めて、自分の意思。……誰かのために―――)


 襲い掛かってくる私兵達の攻撃を受け止め、泥棒とは思えない技で私兵を次々に倒していく。

 頸椎を叩き折り、足を引っ掛け転ばし背骨を粉砕、攻撃を避けガラ空きの懐に膝蹴りを入れ、顎に蹴りをかましたり。

 ステラの目には物凄くカッコよく映っていた。

 だがその様子を数百キロ離れた帝都の帝国軍軍事基地の特務作戦部隊長執務室で、最高機密の技術の粋を集めて作られた盗聴器越しに聴いていたリゼは、ダンダンダンッと作戦盤が折れんばかりに叩いて悶絶していた。


「かっこいい! かっこいいよレイ‼︎ もうヒーローだよぉ‼︎ バルト! レイの通る道に帝国軍名誉勲章を置いておいて‼︎」

「……閣下、それ盗聴器ですよね?」


 その場の様子、レイの戦いは見れないはずなのにどんちゃん騒ぎするリゼに疑問を投げかけるのは―――帝国軍特務作戦部隊一番隊副隊長であり、リゼの部下のアルマだった。

 愚問だよ、とリゼは鼻で笑いアルマの問いに親切に答えた。


「あの子の戦闘音だけで、どんな戦いが起こってるか妄想するのなんて、私に掛かれば余裕なのよ」

「はぁ……」


 アルマの冷たい目には反応せずにキャーっと黄色い声援を飛ばすのだった。

 そんな黄色い声援が自分に向けられているなんて知らないレイは、次々にやってくる私兵を黙々と処理していった。

 長い長い廊下を抜けると両階段がありその先に階段がある、この世界の邸宅ではよくある構造の玄関ホールに着いた。


「……行こ」


 レイは手を取り早くしつつもステラが転んだりしないように階段を降りていく。

 タタタっと二人が階段を降り目の前の玄関扉へ真っ直ぐと走り出したその時だった。


「っ」


 とっさにレイがステラのことを抱きしめた。次の瞬間、ピカッと光がしたと思えば鼓膜を劈くような爆発音が轟いた。

 ゴッ、ドゴッ、ガンッとレイは何度か身体を床に打ち付けながら転がり、柱に背中を強打してやっと止まった。


「ど、泥棒さん!」

「……っ、無事」


 腕の中で抱きしめていたステラに外傷はなかった。

 だがステラからしたら、レイは外傷まみれだった。額から血を流し、抱き締めてくれる腕は折れていていたりと。

 涙が滲み表情(かお)を歪ませるが、レイの初めての微笑みにそれらは引っ込んでしまった。


「……ここに居て」


 痛みに顔を歪ませることなくレイは起き上がる。振り返って追っ手のことを見据えた。


「―――貴様か、このワシの屋敷を散らかしおったのは。その上ッ! 色々壊したみたいだな⁉︎」


 二十は居るフルプレートメイル装備の私兵達の中心に、小太りの中年男性が見下すような目でレイとステラのことを見る。

 特にレイを見る目はいやらしく、舐め回すかのようだった。


「ふっ、賊如きが奴隷を助けるとはな。正義感とやらが芽生えでもしたか?」

「……」


 相手を煽る口調とセリフで挑発する貴族だが、感情を去勢されたレイには意味がなく、そんなレイの警戒は別の存在に向けられていた。

 先ほど爆発する攻撃を放ってきた、


「……暗殺者」


 黒ずくめの男。


「おっと、旦那ぁ! こいつに何言っても無駄だぜ、こいつぁ臭え。人の血がこべりついてやがる、鼻がひん曲がりそうだ」


 札がついたクナイをクルクルと手元で回しながらも警戒を強くしながら、適切な距離を保つ男。

 場の緊張が膨れ上がっていく。


「どうだ、悪足掻きはやめて降伏すれば命はまでは取らん、ただし損害分は稼いでもらわないとなぁ」


 ぐぅえへへと下卑た笑みと笑い声を出す貴族。

 レイがその提案に対して、ナイフホルダーからナイフを取り出し、


「……それは嫌。……あなたの宝物庫にあったもの全部貰う。この子も」


 後ろで怯えているステラを一瞥し威圧するように口にすると、怒筋を浮かべた貴族は目を血走らせて叫んだ。


「奴を殺せぇ‼︎」


 煽ることが得意な人間は煽られるとすぐに爆発する。これはリゼ(戦友)の言葉だ。

 私兵が走り出し、暗殺者が姿を消した。

 死が迫ってくるがレイは気にせずに、潜在能力(ステータス)を発動。

 発動ステータス『虚無(ヴォイド)』。何も持たず何も感じないという『レイ(帝国軍の正体兵器)』だったが故に顕現したステータス。


「―――っ‼︎ 消えた⁉︎」


 暗殺者は驚いた。

 今の今まで目の前にいたはずの少女が音もなく消えたのだ。暗殺歴20年の彼が獲物から目を離すことは決してない、それなのにだ。


「ぐぁっ⁉︎」

「がぁッ⁉︎」

「な、なにが……ぁうが⁉︎」


 周囲から聞こえてくる私兵たちの悲鳴。

 目に見えない攻撃が次々に私兵たちを地面に伏せさせている。

 バッバッと悲鳴が聞こえる方に目を配りまくるが、姿はおろか少女の着ていた外套(マント)の一片すら視界に入らなかった。


(一体何が⁉︎)


 今までで経験したことのない状況、危機、恐怖に暗殺者は最適な判断ができなくなっていた。

 そんな場の混乱をリゼはモニター(ホログラム投影魔導具)で冷静に見ていた。

 サーマルモードに変え、誰がどこにいるか分かるように。だが一人だけはどうしても映っていなかった。


「やっぱり厄介ね、レイの能力」

「……『虚無(ヴォイド)』」


 レイの持つ異能。先の大戦にてその異能は大変重宝された。

 何せ、レイ一人を敵地のど真ん中に空挺降下させ異能頼りの殲滅作戦がなされるほどだったのだから。


「殺気、体温、心音、さらには「存在感」そのものをゼロにする潜入術」

「たは〜何度聞いても強〜ッ!」


 本来ならば軍事作戦において多いに活躍するステータスだが、どうやら盗賊にはピッタシのものだったらしい。

 レイに無期限休暇を―――上層部のイチャモンを受け流し―――勝手に与えた結果、命令でしか動くことしかしらないレイはほんの微かに残っていた『正義感』から盗賊になり、悪徳貴族や悪事を働く冒険者などから金品を盗み、それを適当なところに捨てるということを繰り返すようになってしまったのだ。

 最初のうちは「判断ミスだったかも」と頭を抱えていたが、今となってはどうでも良くなった。(が昔からの性分であるお節介が発動して、ほぼ毎日監視、盗聴し動向を伺うようになったが)


「盗賊の方が天職だったのかも?」

「『死神』が盗賊とか、どんな悪夢ですか? 街の衛兵じゃ太刀打ちできませんよ……」


 とぼけ顔で馬鹿なことを口にするリゼに、アルマはまたまたため息を吐いた。

 正体兵器コード00。

 帝国軍の誇る最強の兵器。

 それがレイ。


『閣下‼︎ やっちゃってよろしいので⁉︎』


 静かな隊長室に馬鹿でかい男の声が魔導通信機越しから聞こえてきた。

 咄嗟に耳を塞ぎ二人は通信機に目を向けた。


「あー、いいよ。やっちゃって〜……やっぱ癌は早期発見早期『切除』がいいよ」

「治療ですよ」


 冷たい冷徹な声でリゼがそういうと、通信機の向こうからはバルトの声が聞こえてきた。

 そして二人はモニターに目を移した。今度はレイではなく、リゼの部下達。

 特務作戦部隊の最精鋭達。軍上層部より命令される特務作戦で動く最も信頼されている部隊だ。

 そして此度の作戦は『魔王軍と裏で繋がっている貴族の捕縛後尋問し抹殺』だ。

 そんなことは知らないレイは戦闘を続けていた。

 存在を感知することができない私兵達は次々に倒れていった。

 意識外からの攻撃を防げるわけがなく、ドタバタと。

 次々に倒れていく私兵達から距離を置き、レイの姿を必死に探す暗殺者。

 暗い玄関ホールだとしてもおかしいと、レイのステータスを知らない暗殺者からしたら恐怖でしかなかった。

 盗賊、暗殺者のステータスにも似たようなものはあるが、レイのステータスは異質。

 軍で生まれながら殺戮兵器として育てられなければいけない上に、発現する確率は低い。

 つまり、勝ち目はないのだ。


「こ、こうなったら‼︎」


 目線を別の少女へ向けた。少女は「ヒッ……」と怯え身を縮こませていた。

 凶悪な顔を浮かべ人質にしようと襲い掛かった次の瞬間、パッと駆け出した暗殺者の真隣に盗賊の少女は立っていた。

 ドッ、そんな衝撃を最後に暗殺者は動かなくなる。

 ドサッと脳天をナイフで貫かれた暗殺者は顔から床に倒れ血溜まりを作った。

 ナイフに付着した血を拭い、レイは少女に手を差し伸べ口にした。


「……大丈夫?」


 怯えている少女を慰めれるような言葉は思い浮かぶことすらなかったが。


「……う、は、はい」


 レイの後ろに広がる光景に少女が顔を真っ青にさせた。そんな少女の姿にレイも後ろを見て、あっと呟きサッと少女の目を手で覆った。


「……見ちゃ、ダメ」


 少女の目を覆いつつ背中に手を添えて、レイは一緒に歩き始めた。

 目の前の玄関を開けると、


「邪魔だァ‼︎」


 そんな馬鹿でかい声の後、突き出された拳がフルプレートメイルの私兵の兜を凹ませ、そのまま頭蓋を陥没させた。

 他所にも目を向けると、軍服を着た男女の軍人達が私兵達を次々に無力化させていたのだ。


「……」

「あ、あの、お姉さん。これ……」

「……世界には、すごいお節介焼きが、いるの」


 困惑してレイの手を強く握ってくるステラに、今までの都合のいいこと全てに合点が言ったレイは、戦友の顔を思い浮かべるのだった。


「特尉殿! 真っ直ぐお行きください‼︎」


 隠す気のないバルトはレイのことを呼び、指で方向を指し示した。

 その先には屋敷を出る門と、そこに用意された一台のバイク。


「……ありがとう、バルト」


 ステラを抱えてレイは走り出した。

 バルトはレイが名を呼んでくれたことに涙を流して天を仰ぐのだった。

 レイの走りで100メートルはあった門までの距離が2秒ほどで消え失せ、バイクの置いてある場所へ辿り着くのだった。

 ステラをバイクの前に座らせレイがその後ろに乗りって、手慣れた手でエンジンを掛けスタンドをしまい、ハンドルのグリップをひねり走り出した。

 夜の舗装された街の道路を轟音を轟かし、魔導石の倍もの明るさで道を照らし風を切って走っていく。

 サイドミラーに目を落とせば後ろに馬に乗った私兵達が追いかけてきていたが、レイがさらにグリップを捻ると、バイクは加速した。

 50を超え60、70、80と速度を上げていった。


「お、お姉さんっ‼︎ なんですかこれ⁉︎」

「……舌を噛む、喋らないで」


 バイクなんてものを乗ることも、存在すらも知らないステラにはバイクはとんでも無い乗り物だった。

 馬を一瞬で引き離す速度は恐怖を駆り立てるものだった。


「……撒けた、よかった」


 サイドミラーに追ってくる私兵達は映っていない。

 レイとステラはそのままバイクで走り続けるのだった。

 しばらく走り続け屋敷から何十メートルも離れた丘の所で二人は一休みしていた。

 目線の先では夜が開ける直前で、地平線から陽の光が顔を出していた。


「きれい……」


 空を見上げるステラがボソッと呟いた。

 ステラの横顔を一瞥し同様に空を見上げた。

 次第に青くなっていく空だがまだ残っている星空を、ステラはキラキラした目で見ていたのだ。

 感情を持たないレイからしたらこの行為に何か意味があるのかと、ステラの横顔を一瞥した時だった。

 いつのまにかこちらに向いていてステラが、じーっとレイの瞳を見つめて。


「きれい。お姉さんの目、お星様みたいですっごくきれい……」


 レイの思考が、一瞬だけ停止した。『星』それは、かつてリゼが訓練の合間に見上げていた、遠く、手の届かない場所にある高潔な光だ。

 自分とは対極にある血で汚れてはいない高潔な輝き、それが『星』だ。


「……星? ……違う、私の目は。……ただの、レンズ」

「いいえ! お姉さんは暗い暗い地下にいた私を、見つけてくれた。お空のお星様も、きっと、さっきの私みたいに、本当のお姉さんのことを見つけてくれますよ」


 レイにはその意味が分からなかった。それでも確かにレイは、自分の硝子の瞳の中に、確かに宿った熱い光を感じた

 ステラが微笑むと、彼女の背中の紋様から【無垢なる熱(ピュア・ヒート)】の優しい光が溢れ出した。

 暁の地上は少し寒かったが陽だまりのような微熱がステラを中心に広がる。

 ステラがガッとレイの手を取り優しく手を包み込んでくれた。

 その熱はレイの指先を通じて、彼女が捨ててきたはずの「人としての痛み」を、強引に、けれど愛おしく呼び覚ましていく。

 背中がとても熱くなった気がした。

 レイは気が付いた、ステラの瞳の中に映る自分の姿を見た。

 そこには殺戮兵器でも、泥棒でもない。

 ただ一人の少女の放つ熱に戸惑い、戸惑いながらもその手を離せないでいる「元殺戮兵器」の女の姿が映っていた。


「……。……ステラ。……眩しい。……でも、悪くない」


 レイはその温もりが逃げぬように大切に包み込んだ。

 それを数百キロ離れたリゼが盗聴機を抱きしめて泣きじゃくることや、アルマが胃を抑えて溜息を吐いていることは、レイは当然だが知る由もなかった。


「……お返し、したい。……なんでも、言って」


 この身体を温めてくれたステラにお礼がしたいと、レイは初めてのことを試し始めた。

 ステラが唖然とするが、すぐに目端から涙をこぼし答えた。


「じゃ、じゃあっ……私の『未来(明日)』を盗んで下さいっ」

「……分かった」

「えっ……? 何も聞かないんです……か?」


 ほぼ即答だったレイにステラは驚きを隠せなかった。

 抽象的にでどういう意味か瞬時にわかることではないと、自分でも思っていたからだ。


「……行こう。……私の拠点に。……あなたの『明日』を、私が盗んで、あげる」


 詳しい話は拠点で、とステラを抱き上げ、またバイクに座らせるのだった。




 特務隊長室にてリゼはふぅと息を吐いた。

 今さっきまで盗聴器を抱きしめて泣いていたが、今は真顔で椅子に座っていた。

 アルマはそんなリゼの情緒の変わりように恐怖すら覚えていた。


「閣下、私は色々な偽装をしてきますので、失礼します」

「あいよー」


 椅子を反転させ窓の外を眺めるリゼは、アルマの言葉に適当に返した。アルマはそんなリゼに一礼してから部屋を退室するのだった。

 部屋の中で一人になったリゼは椅子から立ち上がり、軍服をスルスルと脱ぎ始めた。

 一枚、二枚脱いでいき、そして最後の一枚の下着も脱いで姿見の前に立った。

 抜群のスタイルに、色白の肌、形も大きさも良い乳房。だがそんな身体には不釣り合いな、血管が破裂し、内側から焼け爛れたような、鎖骨から腰までにかけてある火傷みたいな古傷。

 その古傷をそっとなぞり顔を引き締めるのだった。

TS作品とは別のガールミーツガール作品始動です!

前にも別作品書き始めたことはありましたね……。でも! 今回は続けていくつもりではあります!

投稿頻度に関しては月一の不定期更新です。

一話あたり5000文字以上を心掛けて書いていくつもりです!

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