盗賊でも世界が救いたい!
最新エピソード掲載日:2026/03/03
帝国が生んだ最高傑作にして、感情を去勢された元殺戮兵器、コードネーム「00(レイ)」。魔王軍との戦いが泥沼化する中、心を摩耗させた彼女に、親友であり上官の女将校は「長い長い休暇」を言い渡した。それは、兵器としてしか生きられなかったレイを戦場から遠ざけ、「人間」に戻すための切符だった。休暇中、レイは「掃除」と称して盗賊稼業に身を置いていた。自らの手を、人を壊し、奪い、大切な人を失わせるためだけの「冷たい鉄」だと信じたまま。ある夜、レイが趣味の略奪のために潜入した悪徳貴族の邸宅。その地下深く、カビ臭い牢獄の隅で、彼女は魔王への献上品とされる奴隷少女・ステラと出会う。「……お腹、空いてる? ……これ、食べて」レイが差し出したのは、潜入ルートになぜか山積みで落ちていた軍用チョコ。不自然なほど「お節介」な誰かの気配を感じつつも、レイは淡々と少女を救い出す。追っ手を振り切り、夜明け前の静寂に包まれた森。レイは、自分の「死神のような瞳」を見て怯えるはずの少女が、不思議そうに微笑むのを見た。「……きれい。お姉さんの目、お星様みたいで……とっても、あたたかいです」その一言が、レイの凍りついた心臓を震わせる。レイは気づく。自分は「休暇」を過ごしているのではない。魔王が世界から横取りした、この子(世界)の『明日(平和)』を盗み返すために、ここにいるのだと。遠く離れた場所から「度を越したお節介」で自分を支え続ける見えない戦友たち。その影を感じながらも、レイはただ、目の前の小さな存在を守ることを決意する。悪徳貴族の私兵達から逃げ切った二人。冷え切ったレイの指先を、ステラが両手で包み込んだ。その瞬間、暁の地上に立ちこめる冷気が一変し、陽だまりのような微熱がレイの腕を伝い、魂の奥底までを溶かしていく。ステラのステータス画面に刻まれた、真の特性。 ———【無垢なる熱(ピュア・ヒート)】。鉄の兵器が、初めて「自分自身の体温」を知った。これは冷たい指先を持つ大盗賊が、一人の少女の熱に救われ、やがて世界を救いに行く物語。
第1話 硝子の瞳が見つけた光
2026/03/03 09:35