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第08話『死ぬ程、興味ないです』

《異世界生活四日目》


「はい。『配送』のクエストですね。今回が初めて、と。なるほど。では、この封筒書類をセントラル(ギルド中央塔)まで配送をお願いします。場所は当ギルド支部の裏手の大通りを真っ直ぐ進めばわかります。又よほどの汚れや見た目の変化でなければ配送品の状態は問いませんが、心象は下がるとお思い下さい。勿論、開封は厳禁です」

 はい。了解しました。

 受け取った封筒をシンプルな革製のメッセンジャーバッグ(マインボックスの中にあった素材で生成)に入れる振りをしてマインボックスに収納、っと。

 よし。じゃあ出発するか。

 いざ行かん。はじめてのお使いへ〜。

「(ね、ねぇ……アレ、何の素材で出来てると思う?)」

「(あんな綺麗に鞣されてる革製のバッグなんだから相当高級な素材が使われてるんじゃないの?あれ?待って。さっきあんた今回が初めてのクエストって言ってたわよね?って事は登録したての新人でしょ?なんであんなモノ(高級品)を普段使いしてるわけ?」

「(それが分からないから聞いてるんでしょー!)」

「んん゙、ぅ゙ん゙。貴方達……いくら相手が新人だとはいえ、そういった詮索はマナー違反ではないですか?」

「いや、でも支部長〜」

「(はぁ……)仮にあのバッグの販売元が分かったとして買えるだけのお金は?」

「「……ない、です」」

「……ならこの話は終わりです。早く仕事に戻りなさい」

「「はい……」」

「(とはいえ、たしかに気にはなるわね。どこかの商会の御曹司であれば事前に通達が来てる筈だし……一応セントラルに通信用魔道具で報告だけはしておこうかしら)」


ーーーー


「おお〜!」

 すげぇ。

 まるで国会議事堂みたいな大きさの建物が見えてきた。

 あれがセントラル……ギルド中央塔……この国の元締めがいる場所……

「城(王様が住んでます!って感じ)じゃない所がまたおもむきを出してるねぇ……」

 ギルド(支部)から此処までで徒歩30分くらいか。

 残りは遠くに見える建物の大きさから錦糸町駅からスカイツリーまで歩くぐらいの距離感かな?つまり、もう30分程歩かなければいけない計算だ。

 一応ズボンの中に着込んだ簡易電動?アシストパンツ(生成)のお蔭で脚は全く疲れてはいないが、徒歩片道1時間の距離で銅貨10枚(日本円にして約1000円)か。

 約4kmの距離で1配達約1000円……

 移動手段が徒歩じゃなければウーバーよりは割りがいいか?

 まぁ基本的に徒歩しかない文明ではせいぜい出来て1日3配達(小サイズ)が限界な気がする……

 何の補助もなかったらこんなん小サイズ2配達でも足パンパンになるでホンマ……


ーーーー


 『配送』のクエストで来ました。こちらがお届け物です。

「はい。確かに。では、ただいま中身を確認いたしますのでギルドカードを出してお待ち下さい」

 は〜い。

「はい。確認いたしました。こちらが報酬の銅貨10枚になります。ただいまギルドカードにクエスト完了の処理を致しますので金額を確認してお待ち下さい」

 あ〜い。

 1、2、3、4……うん。ちゃんとある。

「お待たせ致しました。これにて『配送』のクエストは完了です。お疲れ様でした」

 いえ、ありがとうございます。

「(じー)……」

 ……?何か?

「いえ(ニコリ)」

 はぁ……そうですか……

 あ、この近くに銀貨1枚くらいで泊まれる宿屋はありますでしょうか?

「それでしたら東ギルド支部へと続く大通りに『べあべあ亭』という獣人が経営している宿屋がございますよ。ガルーン獣国から卸されたワスプビーのミツを使った料理が絶品だそうです」

 (絶品だそうです……絶品だそうで……絶品だそう……)

 (じゅるり)……ありがとうございます!行ってみます!


ーーーー


「どうだった?」

「どうだも何も、少なくとも帝国出身ではないわね。獣人(亜人種)に偏見を微塵も持ってない様だし、物腰も非常に穏やか。所作から貴族でない事は明らかなんだけど、かと言ってどこかの商会の御曹司かと問われると疑問が残るわね」

「なんで?」

「私達が見た事もない商会(新興)にあんなの、いると思う?」

「…………」

「態度はまるっきり市民のそれ。なのに上から下まで着用してるものはぜ〜んぶ見た事もない素材で精巧に作られていて、その価値をまるで理解してないかの様に普段使いしてるのよ?そんな馬鹿を子に持つ親(商会)なんて見た事ないわ。それに……」

「それに?」

「あのバッグ、あまりに綺麗に鞣されてるから分かりにくいけどアレ……『トライホーンブル』の革よ。リスラーブの」

「はぁ!?ぁ……し、失礼しました……」

「(だからあり得ないんだって絶対。あんな超高級品を普段使いさせる商会なんてあるわけないでしょ?)」

「(か、会長の隠し子ならワンチャン……?)」

「(……あんた、フラン会長秘書に殺されたかったのならそう言いなさいよ。私が聞いてあげるから)」

「(わー!待って待って、お願い、待って!冗談!冗談だってば!団長にその手の話、通じないのあんたも知ってるでしょ!)」

「(今は『会長秘書』でしょ。雇われだけど、そのお蔭で私達みたいな団員もこうして良い暮らし出来てるんだから聞かれてまずい冗談と良い冗談の区別くらいつけときなさいよ全く……)」

「そうですね……貴方達にはどうやらよ〜〜く言い聞かせないといけない事がたくさんあるようですね(ニッコリ)?」

「「(ヒュ……)……」」

「だ、団長!違うんです!こ、コイツが!」

「だ、団長!違うんです!こ、コイツが!」

「『団長』……?『コイツ』……?」

「「…………」」

「列にお並びの皆様、お騒がせ致しました。ただいま別の者を来させますので少々お待ちいただけますでしょうか?」

「「「「(コクコク、コクコク)」」」」

「「だっ……!」」

「だ?」

「「…………」」

「では皆様、失礼致します(ニコリ)」


ーーーー


「はっちみつ、ハチミツ〜♪」

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