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第07話『おっお〜、異世界生活。ま〜だまだです。忙しいです』

【常駐クエスト(ランクG~):汲み取り槽で増えたスライムの間引き】

 報酬:件数に応じる。1槽につき銅貨10枚。


【常駐クエスト(ランクD~):採取。リスラーブ大森林(浅層)にて薬草の採取】

 報酬:本数と状態に応じる。薬草一束につき金貨1枚。

 ※パーティ推奨


【常駐クエスト(ランクG~):配送(壁内)】

 報酬:件数と配送するモノの大きさに応じる。1件につき銅貨10枚+サイズ費(小:0、中:銅貨+10、大:銀貨+1枚~)

 ※配送事故(紛失や破損)を起こした場合、配送物の金銭的な弁償を科す。


【鍛冶クエスト(ランクG~):鍛冶ギルドでの作業補助】

 報酬:銅貨50枚/1日


 ……etc.

 ん~、さすがに初心者向けのクエストに危険な獣の討伐云々はないか。

 てかあの森、リスラーブ大森林なんて呼ばれ方してるのか……

 ランクD相当の実力が最低限必要で且つパーティ単位で浅層までってことはマジでやばい場所だったんだな。


【常駐クエスト(ランク問わず):リスラーブ大森林の魔物討伐】

 報酬:素材の種類と鮮度、部位に応じる。


 こんな報酬も何も書いてないざっくりとした『ランク問わず』のクエストが常駐であるくらいだ。

 マインボックスの中身を出したらさぞ大事になるに違いない。

「……う~ん」

 ぶっちゃけスライムの間引きは場所がキツい。

 要は異世界ボットン便所の集積場所へ入るって事だろ?おそらく病原菌満載の。

 無理、無理、無理、無理。

 この世界の汚れは超ド級♪軽い気持ちで受けたらダメージ、ダメージ!

 今高鳴る胸冷静に。俺の心に囁け、メッセージ(悪魔の声)!

「(通貨偽造出来るんなら別に働かなくていんじゃね?)」

 SO、SO、SOUDATTA!SO、SO、SOUDATTA!

 カーモン、ベイビー銀貨♪

 俺、働かなくてもOK?

 …………いやいやいやいや。駄目だろ(セルフツッコミ)!

 危ない、危ない……うっかりデンジャラスシンキング……

 まぁマインボックスもあるし、配送が一番無難だな。

 よし。

「先に泊まるとこ探しに行こ」

 すいませーん。冒険者にお勧めでそこそこの値段くらいの宿を紹介して欲しいんですけどー?

 受付のお姉さん(さっきとは別の人)には素泊まりでいいなら1泊25銅貨でギルドの休憩所の様な場所を貸しますよ?と案内されたが、フェリーの二等船室ならまだしも異世界の大部屋で雑魚寝はちょっと……と思ったので普通に1泊2食付で75銅貨〜1銀貨程度の宿を紹介してもらった。

 1泊2食付で50銅貨ぐらいの宿もあるそうだが俺みたいな登録したての新人にはオススメしないそうだ。

 それ以下の安宿もあるにはあるが、ほとんどが壁外にある為、割愛。

 ついでに壁外に行かなくちゃいけないクエストを受けた場合はギルドカードを提示すれば無料で行き来出来るとの事だった。

「すまん、こっちにエールを頼む!」

「は〜い、ただいま!」

 夕飯時。

 着いた時には見かけなかったが、こうして宿屋の食堂(1Fの広間)に降りてみると宿泊客がそこそこいたんだという事に気づく。

 その殆どがパーティーの様で、俺みたいにソロの人間は珍しいみたいだ。

 さすがにいくらボッチでも知らない人と相席にさせられるのは勘弁して欲しかったのでカウンター席に座り、静かに宿屋の食事の配膳を待った。

 木のコップに入れられた生温い水が口内を潤す。

 ピッチャーみたいなものも見当たらないのでこれ以降(コップ1杯の生温い水)は有料という事なのだろう。

 俺は誰にもバレない様にコップの上に手を置き、今しがた減った水分をキンキンに冷やしたミネラルウォーターで満たす。

 ……ふふ。美味い。

 親に隠れて初めて酒を買って飲んだ時の様なワクワクがここにある。

「あいよ。パンとスープお待ち」

 きたきた。パンとスープ……

 え?パンとスープ?

 思わずパンとスープの間で視線を5往復くらい反復横跳びした。

 いや確かに具沢山なスープに見えるけど、普通に丼ぶり茶碗くらいの量しかないし、パンもパンでファミマのコッペパンみたいに小っちゃくてしかも硬い。

 え?ホントにこれだけ?

 あまりの現実に急いで周囲を見渡す。

「…………」

 嘘だろ……

 誰もこの異常事態を異常だと思っていない……だと……?

 思わずカウンターから転げ落ちそうになった。

「ちょ、ちょっとお客さん。大丈夫かい!?」

「あ、ああ……大丈夫……大丈夫」

 そりゃエール(酒)やツマミ(有料)が売れる訳だ……

 というか、どおりで肥満体型の人間を見かけない訳だ……

 どう足掻いてもカロリーが足りてないんじゃあ太れる筈がない。

 俺はぶつけようのない不満と怒りを歯に込めて硬いパンを噛み千切り、スープをズズズっとすすった。

「「「「…………(ええ〜)」」」」

 何だ?何故か周囲からの視線が辛くなった気が……

「あ」

 しまった……つい癖で味噌汁を啜るかの如くスープを啜ってしまった事に気がついた。

 俺は手に持っていた茶碗をそっとテーブルに下ろし、用意されていた木製のスプーンを使ってスープを掬う。

 周囲からホッとした様な空気が流れ、更に居心地は悪くなったが食事は続ける。

 冒険者の生の声を(盗み)聞ける機会を逃したくなかったからだ。


【リダ・カケダシ】

「ようやく安定して稼げるようになったな……」

【パティノ・ムドメ】

「って言ってもまだまだ宿暮らしから抜け出せない様なレベルだけどね〜」

【オーサナ・ジミー】

「それでもギルドの休憩所よりかは大分マシだろ?上等な飯も出るし」

【シンパ・イショーン】

「あの、明日からの予定なんだけど……」


 ふむふむ。


【ヒザニ・ヤオン】

「年々、古傷がしんどくなってきてな……」

【アドバイ・スン】

「わかる……俺もいつまでこの仕事続けられるか……」


 嫌だ。聞きたくない。やめてくれ、そういう話は俺(中身おっさん)に効く。


【タビショウ・ニーン】

「今回も良い取引が出来ましたな」

【タビーノ・オットモン】

「ええ。やはりエリビアルは良い。ギルド国家ということもあり、無駄な駆け引きを省ける上に私達の様な駆け出しにも等しく商売の機会を与えてくださる」

【タビショウ・ニーン】

「……南のアークランド帝国では散々だったからなぁ」


 これこれ。こういうの、こういうのよ(盗み)聞きたかったのは。

 なるほど。ここ、エリビアル(ギルド国家?商人、というかギルドが集まって出来た国家ってこと?)って言うのね。ほんで南にもアークランド帝国なる国がある、と。

 あ、すいません。こっちにもエールとオツマミ、お願いします。

「あいよ」


【タビーノ・オットモン】

「次は東のガルーン獣国に仕入れか……」

【タビショウ・ニーン】

「ここが踏ん張り時だ。頑張ろう。次の長距離クエストをクリアすればランクが上がる。そうすれば西のイミルミゼット自治領への通行も許可が降り、ドワーフとの交渉も始められる」


 おお。ドワーフ。ファンタジーの定番。

「エールとベーコン、お待ち」

 あ、どうも〜。 

 

【タビーノ・オットモン】

「イミルミゼットへ行く為にエリビアルのドワーフ地区で装備品(既製品)を仕入れてガルーンに行かなければならないのは手間だが……」

【タビショウ・ニーン】

「仕方ないさ……アークランド帝国のせいで本来、我々の様な『人間』は出禁になってるんだ。既製品以上の依頼を交渉出来る様になるだけありがたい」


 一体何したんだよアークランド帝国……

 ゔっ……これが異世界のエールか……

 常温で……炭酸の抜けた……麦の香りがするだけの……アルコール臭い水……

 酔えはするだろうが俺にはまだ水のほうがマシに思えた。

 …………ビーフジャーキー並みに薄くて硬いが、ベーコンはベーコンだな。

 焼きすぎだろバカ、なんてカスハラはしない。

 え〜っと、まとめると。

 ここはエリビアルという国?で。北にはリスラーブ大森林という危険なアマゾンがあって、東には獣人の国っぽいの。西にドワーフ、南にヤバそうな人間の国、って感じの位置関係か。

 ごちそさん(大収穫だな)。

 グイッとエールを飲み干し、残ったジャーキー……違った。ベーコンを齧りながら俺は自分の部屋に戻った。

「明日からは配送クエストこなしながらこの街のマッピングでも開始するかぁ〜……zzz」

 久しぶりにアルコールを入れたからなのか、ほぼ公園のベンチみたいな硬さのベッドでもすぐに眠りにつくことが出来た。

 オツマミとエールのお釣りで銅貨サンプルも手に入れたし、銀貨と銅貨の心配がなくなった事も安眠の一つの材料だったのかもしれない。

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