第05話『異世界スコフィールド』
前回までの異世界24……
何故か異世界っぽい場所で目覚めた俺は、自身に備わった力を試すべくテンションをバーサークして森に挑む。
だが不運にもそこで遭遇した巨大なオオカミ?達から逃げる為、全力ダッシュ(涙)を決行。
なんとか奴らを撒いた先に見えたのは松明(火)という名の原始的な文明の光であった。
「…………」
明けて三日目。
昨日はそのまま暗闇に乗じてプレハブ小屋を出して就寝。翌日、未明に再度収納。朝日が昇る前から俺は木の陰からその防壁の大きさからは不釣り合いなほど小さい門の周りにいる現地人の行動を頭にナレーションを流しながら遠目で観察していた。
何故すぐに彼等のもとに駆け寄らなかったのかと問われれば第一に言語の問題。第二に金銭の問題。そして第三に常識の問題を考えたからだ。
ファンタジーにありがちな異世界翻訳蒟蒻機能は物語を読む上ではありがたいが、実際にそんな他世界を生きる上で最も重要な力が他の力のオマケかの如く授けられるというご都合主義すぎる現実はオッサンには考えられなかった。
「$%↔?」
「⊗↹!」
うん。ほら、カクテルパーティー効果も真っ青なくらいの集音能力を発揮してる自分の耳がその事実を告げてくる。
そしてやはりと言うべきか。
門を通って中に入るには金がいるっぽい。
当然そんなモノは持ち合わせていないし、言葉の通じない文無しの不審者があんな時間帯に駆け寄って行っていたら間違いなく捕まっていたであろう。
奴隷制度が存在しているのかは不明だが、そこに異世界ならではの不思議な法則(魔法)なんて絡められては対処のしようがない。
ハンターハンターの蟻編を履修していてつくづく良かったと思える判断と結果である。
しかし、どうしたものか……
壁外バザー?とでも呼んだらいいのか、進◯の巨人ほどではないが見張り要員が上を巡回しているそこそこの高さの壁の下にはずら~っと夜店の屋台みたいなものが連なっている。
そこで働いている奴等の見た目から察するに、まぁそういう住人なんだろう。
言葉が通じるならあそこから壁の中へ入る糸口を掴んでも良さそうだが、たぶんどう溶け込もうとしても浮く。
主に使ってる道具と言葉、所作で盛大に浮く。
そんで田舎に転校してきた都会の可愛い子ばりに浮いて疎まれる。
行きつく先は迫害からの通報エンド。Q.E.D。
「……え〜、っと?それで通行料はなんぼほどなんだ?」
Zoom、zoom……
「くすみがかった銀色のウ◯トラマンメダルみたいな大きさの硬貨が……いち、にい、さん、しい……ご?」
俗に言う銀貨5枚ってやつか……
アレが日本円にして五千円ぐらいの価値ならまあ理解は出来るが、五万円ぐらいの価値だとすると目ん玉が飛び出るぞ俺は。
あ、いや……でも地球でいう飛行機代と考えれば妥当かも知れん。
それに五千円だとしたらよほどインフレでもしてない限り、壁外にいる人間はもっと少ない気がする。
……まぁ何れにせよそんな金は無いんだが。
無いんだが……マインボックス!
[→→→→→(チャリーン♪)]
両面の模様は視認出来たから偽造は出来る、と。
うう、なんという罪悪感……
今、俺は自分の都合の為に偽金を生成してしまった……
これがファンタジーならワンチャンマインボックスの中にある素材でいけたかもしれない。
これがファンタジーなら都合良く困っている人(善人)が現れてその人を助ける事でなんとかなったかもしれない。
これがファンタジーなら……
これがファンタジーなら……
どれ程良かっただろうか……!
実際、当事者になってみるとあんな風に素直に(頭お花畑で)見ず知らずの言葉も通じない場所になんてほいほい近寄れはしないって……
「はぁ……」
でも行かなきゃ何も始まらないし、ずっと外(近くに人がいるのに)で隠れてキャンプしててもそれはそれでツラい。
よし……問題はどういうプランで行くか、だな。
言葉が通じないんだからありがちな「商人に成りたてなんですぅ(えへへ……)」は×。
「コトバ、ヨク、ワカラナイ。オカネ?OK、OK。ハイ、ドウゾ」は良さそう。
コミュニケーションなんかせず、さも分かってるよ感をだして無言で通行料置いてスッと入る。も良いな。
……そうと決まれば入門の列にしれっと並びますか。(もちろん門兵?からは見えなさそうな距離の最後尾に)
----そして黙って待つこと数時間。
「&mい!」
ん?今、なんか言葉の意味がちょっとだけ分かったような……
「oい、#こÑ!おm㋽D@、お前!」
うっそ……
「(俺?)」
とボディーランゲージ。
「そうだ。通行料は5銀貨。なければ入れん」
おおお、なんか自動翻訳イヤホンでも搭載したかの様に意味が分かる。
よくわからんが、耳のAIが勝手に周囲の言葉を聞いて学習したのか?
(いや、耳のAIとはなんぞ?※セルフツッコミ)
困惑しつつも俺は銀貨(偽造。綺麗すぎたのでちょっと汚した)を5枚、受け付けに置いて門をくぐる。
こうして異世界初の通関は何ともあっけないくらいに通ってしまったのであった。