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第04話『Bad guy』

 わけのわからない状況から明けて二日目。

 取り敢えずマインボックス(某◯インクラフト風のアイテムボックスみたいなもんなので命名)に入っていた硬そうな鉱石素材を使って水族館のアクリルガラス並みの厚さを持ったプレハブ小屋みたいな家を生成した俺は、特に移動する事なく一晩をそこで過ごした。

「く……っ、ぁああ……」

 ……うん。未だ受け入れるには難しい現実ではあるが、やはり安心出来る寝床があるというだけで心に生まれる余裕がまるで違う。

 特に衣食住の心配がなくなったのは本当にありがたかった。

「(ジュゥゥゥゥ……)」

 朝からステーキ(ワイバーン)かよ……と思われるかも知れないが、これはマインボックスの生成能力の確認と未知なる食材の試食を兼ねているので避けられないのだ。

「ギコギコはしません……」

 ギコギコ。

「お、けっこう美味いな」

 寄生虫とか色々と怖かったのでウェルダンで生成してみたが、硬いどころか厚切りの二郎系チャーシューを頬張った時みたいな柔らかさと味にめっちゃ幸福味を感じる。

「う〜ん、便利……」

 生成した食器やカトラリーも特に問題はないし、再度生成してるのか自動で洗ってくれてるのか分からないが使用後はマインボックスに収納すれば新品同様で取り出せるみたいだ。

 そんなこんなで食事を終えたら次は外壁に設置した360度カメラの映像を早送りで確認する。

「…………空からも地上からも近づいてくる何かはいない、か」

 で、コレが寝る前に上空に飛ばした空撮の映像。

「…………」

 を見る限り、ここを中心に半径3㎞ぐらいほどの距離の緑が綺麗さっぱり消失してて境目からまた森が続いてる様だ……

「ん〜……」

 ん?

「『照度:高』➜」

 それは空撮映像をしても遥か彼方に見える地平線の一部。

 確かに月明かりにしては明るくなっている箇所があった。

「ここを目指せ、と?」

「『…………』」

 だんまりか。

 まぁ目指すにしてもかなりの距離がある。

 なんか良さげな装備を生成したとて、ただの人間が一人で猛獣がひしめいているであろう森を切り開いてまで移動するのはリスクが高いもんな……

 だが、かと言ってこのまま此処に留まるのも無しだ。

 マインボックスの中には数年は暮らせそうな量のアイテムがスタックされているが、それはつまりいずれは尽きるという事。

「やはり移動せねばなるまいか……」

 アマゾン並みの未開地を進むのなら完全気密且つフルプレートぐらいの防御力の装備が欲しい所だが、それはそれで機動性に欠けるだろう。

 ならばコスプレ……ではないが着るタイプの駆動型モバイルスーツ(※モビルではない)を生成してはどうか?

 足裏にはハイパワーなタイヤローラーを内蔵。

 関節部以外にはこれでもかというほど分厚いメカニカルな装甲を用い、腕部や脚部にはパワーアシスト機能を搭載。

 頭部分はバイクのフルフェイスヘルメットを参考に外観をちょっと尖らせたり角ばらせたりして赤外線付バックミラーカメラを載せて空撮ドローンの様に脳内に映像をリンクさせ、防護性を保ちつつも360°の視界を確保。

 勿論、カラーリングはガンメタリックブラックオンリー!

 出来たのがこちらぁ!

「うぉぉぉぉぉお(涙)!」

 僕の考えたカッコイイ装備ぃぃ!

 良いじゃん……

 良い……

 失われていた筈の童心がムクムクと屹立する。

「ヒュィィィィィィ……!(タイヤは電気?モーター駆動なので回転は比較的静かめ)」

 居ても立ってもいられず、俺はプレハブ小屋(防御力高め)をマインボックスに仕舞ってボト◯ズよろしくな高速機動で森に向かう。

「「「「!?」」」」

 突然現れた得体のしれない小動物に困惑の目を向ける森の住人(巨大なオオカミ?)達。

「デッ……!?」

 思っていた以上に早く、それも大型の獣達に遭遇して正気に戻る俺。

「ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい……」

 無我夢中で右手に持ったロマンマチェットを前方に振り回し、突っ切る為の活路を開く。

 マチェットによって切り拓かれた枝葉や草花はマインボックスが回収してるのか一定の距離まで近づくと自動で消えていった。そんな機能まで付いているとはマジでありがたい。

 一呼吸置いたあたりの距離で後ろから獣達が追って来ているのが目に見えた。

 畜生め……これだから群れで狩りをするタイプの獣は……

 こんな、食いでのない、小動物なぞ早々に諦めてくれたらいいものの!

「(ヒュン)……(ヒュ、ヒュン)……!」 

 駄目だ。こんな『お行儀良く』進むんじゃ追いつかれちまう!

 俺は振り回していたマチェットを収納してなりふり構わない逃走スタイルに変更した。

 どれくらい出力を出せるか謎(未検証)のパワーアシストに期待しつつ足に力を込める。

「お?お?おぉぉ!ぉぉ!?」

 一歩!一歩が!デケェ゙ェ゙ェ゙ェ゙!

「ほ……!ぼ……!ほ……!ぼ……!(ジャンプみたいな)スキ……!ップ……!」

 今までの速度は何だったのかと言われそうな程、移動距離がアップする。

 これはアレだ。電動キックボード使ってみたはいいけど、意外と乗り心地悪くて移動距離も速度もあんま出ないから徒歩の方がいいやパターンに似たガッカリ感!

「せっかくロボみたいな移動方法を実現出来たのにぃぃぃい(涙)!」

 あぁんまぁりだぁぁぁぁ(ヘ〜イィィィィ)!

 しかも夢中で駆けてたら日が暮れる頃にはアッサリと森を抜け、ランデブーポイントに到着。

 涙で滲んだ視界の先には文明の光があった。

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