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第03話『異世界(サバイバル)』

 最初に気付いた異変は視力だった。

 眼鏡もかけてないのに自分の眼があんな遠くの空を飛ぶワイバーンらしき飛行生物の姿をまるでマクロレンズの倍率を画質の劣化無しに捉えているかの様に映しているのだ。

「裸眼でこんなにはっきりとした視界なんて何年ぶりだ……?」

 思わず心の声が出た。

 だが悲しきかな……眼鏡が当たり前の生活をしていた俺は、そこに眼鏡が在るかの様に縁を持ち、位置を直す動作をしてしまう。

 もう必要がない?のかも知れないが、身に付いた習慣は容易には修正出来ない。

 幾ばくかの気恥ずかしさを抱えながら今度はふと目に入った自分の手を確認する。

「なるほど……」

 明らかに肌が若い。

 剃り跡や産毛すらない綺麗な手の甲に見惚れつつ、自分がおそらく元の年齢の見た目ではない事に気づく。

 ……コレは俗に言う異世界転生なるものなのだろうか?

 だとしたらやはり自分は死んだ……のか?

 ちぎれはしなかったものの上半身に大穴があいたのは夢じゃなかった?

「ス、ステータス……」

 俺は試しにこういう状況での定番の呪文を唱える。

「…………」

 しかし、なにもおこらなかった!

「…………」

 つまりはそういう事(神様的な存在に会った記憶もないし当然か……)らしい。

 俺は思わずその場にへたり込んだ。

「キャンプすらしたこと無いおっさんにいきなりサバイバルは無理だろJK(常識的に考えて)……」

 …………だが嘆いていても仕方ない。

 例え腹を壊そうとも先ずは飲める水場を確保しなければ早々に死ぬという事くらいは理解している。

「或いは猛獣に出くわして殺されるのが先か……?」

 ふっ。と自虐混じりに起き上がり、俺はサンシェードよろしくと言わんばかりに両の手のひらを水平に保ち異様に視力の上がった目を凝らす。

 どの方向も等しく森に囲まれていて正直何方へ行けばいいかも分からない……

 こんな時、せめて空撮ドローンでもあれば進む方向ぐらい選択出来るんだが……

「(ジ……ジジ……)」

 そんな事を考えていたら目の前の空間がノイズの走った画面の様にブレ、魚眼レンズの様なモノが付いたドローンが顕現した。

「はぁ……?」

 そして脳内にまるで360°カメラの様な映像が流れる。

「なんだこれ……」

 まるで第三の眼が出来たかの様な感覚。

 そんな状況なのに自分の身体が全く違和感を覚えていない事への違和感に驚愕した。

 視野が広がるどころでは無い。

 画面越しならともかく、現実のFPS(目線)にTPS(脳内映像)が加わるなど異常でしかない筈なのに自分の脳はそれを違和感なく処理している。

 いったい俺はナニに成った……?

 そんで目の前のドローンは何がどうなって出現した?

「……(→)……(←)」

 しかも完全思考操作型ドローン……

 脳がニューラリンク的な進化でもしたとでもいうのか?

 だとしてもどうやってコレは生み出されたんだ?

 見た目はスタンダードなドローンだが元の世界より全然オーバーテクノロジーっちっくなスペックだぞ。

 思い、求めただけでこんなモノが産み出せてしまうのなら例えば身を守る為の近接武器且つ森の中を掻き分けて進めそうなカッコいいマチェットなんかも……

「(ジ……ジジ……ジ)」

 ……出てきちゃうんだ?

 うん。カッコいいよ?スゲーカッコいい。鎬の部分はシンプルな黒で(日本人である)俺に配慮してくれたのか日本刀チックな拵えの直刀。柄を握るとどういう仕組みなのか分からないが刃の部分が薄っすら光るし、振るとなんか斬撃のエネルギー波みたいなのが出て深めの剣戟が大地に刻まれたけど……

 ま、まぁあんな猛獣ワイバーンが滑空してる世界に飛び道具なしは駄目……だよな。うん。ありがとう。

[…………]

 自分でもいったい何に感謝しているのか分からないが、その空間からはほんの少しだがこちらを慈しむかの様な感情が漂った気がした。

「え?」

 思わずその空間ノイズ部分に触れる。

「んがががが!?」

 え、ちょ……なん……!?

 シビ……脳……!!

 記、憶……を……覗……いて(る)?!

「……(ヴン)」

 っ、はぁ……はぁ……

 強制ビリビリペンみたいな電気ショックが収まると、そのノイズに見えていた空間は現代人なら万人が見慣れているであろうウィンドウに酷似した何かになった。

「はは。いや、確かにすげぇ分かりやすいけどさ……影MODならぬ異世界MODかよ」

 そこにはおびただしい程の種類と数の何らかの素材がスタックされ表示されている。

 レシピみたいな項目は無いが、某画像生成AIの様な入力欄?がある。

 まるで先程までの出現物はこうやって生成しました、と言わんばかりの展開だ。

「あ〜……」

 うん。分かった。

 いや、よく分かってはいないが取り敢えず何かが自分の記憶から一番俺が理解しやすい様にノイズに見えていた箇所のUIを変更して表示してくれたって事だけは理解した。

 正直、途方に暮れそうだったがコレなら異世界(見ず知らずの土地)でもなんとかやっていけそうだ。

※尚、スキン変更みたいな事は出来なかったが大学生くらいの頃の見た目まで若返っておりニキビ痕やクレーターも無くなっていた為、個人的には文句は無かった。

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