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ひねくれカルメはログの溺愛が怖い……はずだったのに! 寂寥と勇気  作者: 宙色紅葉


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20/22

幸せな結婚式

 その日は晴天だった。


 太陽の光は包み込むようで、幸せな二人のこれからを優しく照らしているようだ。


 結婚式は村長の家の前で行われて、式後に村長宅で宴会をするのが通例になっている。


 今回もそれに則って、村長の家の前で行われた。


 多くの村人たちが見守る中、純白のウェディングドレスに身を包んだカルメが、真直ぐにログを見つめている。


 ログも真っ白な婚礼衣装に身を包んで、真直ぐにカルメを見つめ返した。


『ログ、髪も、服も、雰囲気も、いつもとなんだか違うな』


 結婚式当日、カルメはサラとメリッサに、ログはカールとジャックのもとで衣装を整えてから、この時初めて顔を合わせた。


 オールバックにしたログの雰囲気はいつもよりも大人っぽく、目が合った瞬間にカルメは頬を染めた。


 白いタキシードを着るログは絵本の王子様のようで、ログにくぎ付けになった。


『絵本の王子に惚れたことは一度もないけれど、ログを見ていると王子とやらの魅力が分からないでもないな』


 心の内で惚気ると、深く頷いた。


 いつもと違う恋人の雰囲気に戸惑っているのはログも同じようで、彼もまたほんのりと赤くなってカルメを見つめていた。


 猫背をしゃんと伸ばしたカルメは、いつもは下ろしている髪を結って首筋を露出させており、可愛らしさよりも大人っぽさや美しさが強調されている。


『カルメさん、今日は可愛いよりも綺麗って感じだ』


 ボーッとして互いを見つめ合う甘い雰囲気を中断させたのは、サニーの咳払いだった。


 結婚式を取り仕切るのは、村の中では比較的二人と仲が良く次期村長であるサニーだ。


 サニーとて、別に二人の邪魔をしてやろうなどとは思っていないが、このまま二人に任せていたら夕方になってしまう。


 それを避けるためにもサニーは咳払いをして、二人の視線を自分のもとへ寄こした。


「んんっ、それではお二人とも、相手に自分の宝を渡してください」


 サニーがそう言うと、カルメはログの胸ポケットに「カルメ」の装飾具を取り付け、


「よく似合ってる」


 と微笑んだ。


 それに対し、ログはカルメの髪に「ログ」のヘアピンを付けた。


「カルメさんの方こそ、よくお似合いです」


 甘く微笑む。


 メリッサの「せっかくカルメちゃんの髪を整えたのに!」という声は無視することにした。


「カルメ、貴方はログに愛を誓いますか?」


 二人が宝物を渡し終えたのを見て、サニーは厳かに問うた。


「はい」


 凛とした美しい声でそう返事をすると、カルメはじっとログを見つめた。


「ログ、貴方もカルメに愛を誓いますか?」


 一拍おいて、ログにも問うた。


「はい、誓います」


 ログもカルメをじっと見つめ、真剣な声で返事した。


 二人は真直ぐに見つめ合い、どちらからともなく近寄った。


「ログ、少しだけ屈んでくれ」


「はい」


 弾けるような笑顔を浮かべ、ログは少し屈むとカルメと目線を合わせた。


 カルメは短く深呼吸をすると、いつかの自棄になった勢いのあるキスとは違って穏やかにログの唇を奪った。


 時間にして精々、二、三秒。


 短い時間が永遠に感じて、どうしようもない幸せを抱きながら二人は唇を離すと、微笑み合った。


 カルメの顔は案の定、人前でキスをした羞恥とログへの愛情で燃えるような赤くなって、瞳は潤んで蕩けている。


「わぁっ!」


 掠れた驚きがカルメの唇から漏れた。


 ログが自分の胸にカルメの顔を隠したからだ。


 びっくりして手足をばたつかせるカルメの頭をポン、ポンと撫でてやると、カルメは少し落ち着いたようで暴れるのをやめた。


「その可愛い顔を、俺以外には見せないで」


 執着の潜んだ柔らかな声がカルメの耳に直接に届いて、カルメは耳まで真っ赤にしてログの衣服を掴んだ。


 せっかくの婚礼衣装に皺が付いてしまうが、ログはそんなことも気にせずに笑っている。


 どんな時でも甘い二人に、サニーは呆れて溜息を吐いた。


「はいはい、収拾がつかないのでそのくらいにしておきましょうね。続きは家とかでお願いします。これで式は終わりですから、後は宴会ですよ。会場に行きましょう……あら?」


 呆れて笑うサニーの手元に一枚、黄金の花びらが落ちてきた。


「お二人とも、見てください。凄いですよ、素敵な異常気象です」


 サニーの弾んだ声にカルメはソロリと顔を上げると、わぁ、と感嘆の声を漏らした。


 赤、白、黄色、様々な色の花びらが空から降って来る。


 見覚えのあるそれらはいずれもカルメが育てたことのある花たちで、メグの頭やドレスに生えていた花々と同じものだ。


「メグ、こんなに力を使って。またしばらく出てこれなくなっちゃうぞ」


 それでも祝福が嬉しくて、カルメは素直に笑った。


 花の雨が降る中、二人はゆっくりと村長の家に入って行く。


 その二人を追うように村人たちも家に入って行き、楽しい宴会が始まった。


 みんなで笑い合って美味しいものをたくさん食べた宴会は、確かにカルメとログを村の一員にしてくれた。


 もう、カルメを化け物だと忌避する人間はいない。

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