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合戦




冒険7日目。

あと1~2日で冒険が終わるという頃合いで敵軍は、西岡城に到達した。


「なんだ、この数は…。」


そう言って結城が城壁から乗り出した。


西岡城の城壁。

これも丸太を立てて巡らせた壁で石造りの立派な城壁ではない。

───だが街を囲む()()であることに変わりない。


今、西岡城の周りにざっと1千人ほどの人馬が姿を見せた。

シャディザールの軍旗を掲げている。


「シャディザールのアガの軍隊でしょ?」


ルンルがいった。


確かに城に迫る敵軍は、冒険者ではない。

アラビア風の装束、捩れた青黒い髭、褐色の肌の男女。

トゥーレ大陸の人間だ。


彼らは、傭兵軍(アッシューリ)である。


Asshuri(アッシューリ)

シェム系遊牧民の傭兵部隊のこと。

ロバート・E・ハワードの造語。


日本の戦国時代でいう足軽のような身分。

諸国を渡り、特定の主君を持たない戦士階級だ。

武器を調達する財力や扱う技術を持つ自由騎士である。


自由騎士―――王族や貴族の子弟で当主に就く権利のない者。

ただし自由騎士は通常、他家、他国の軍隊に加わることはない。

アッシューリは、その点で異なっている。


「じゃあ、徳川クランだけが敵じゃないってこと!?」


結城が大声で叫ぶと皆の表情も暗くなる。

緊張の面持ちでジョーは、自分の唇を指で触った。


「……徳川には、金がある。」


オイオイ、金の話かよ…。

城壁に登った全員が呆れる。


ジョーの話は、続いていた。


「だから傭兵軍を集めて自分の先駆けにしてるんじゃない?

 冒険者なんかより信用できるし。

 経験も豊富だろうし。」


なるほど。

徳川は、以前にも奴隷を大量に買って来た。

金目的の()()と違って、彼女にとってこれは遊びなんだろう。


「差し当たって…。」


皆が暗い表情の中、上杉涙歩が口を開く。


「相手は、戦闘のプロってことね。

 ………ああっ。」


そう言って涙歩は、恐怖に震え上がった。

負けたら悲惨だ。




しかしこちらには、空飛ぶガレオン船がある。

瑠偉たちは、新たに手に入れたガレー船団も操り、戦場に現れた。


10隻も三段櫂船が並ぶと立派な海軍に見える。

空の艦隊だ。


「大金をかけた!」


瑠偉が女海兵たちを前に演説をつ。


船上には、新入りの女子たちが、ズラーッと並ぶ。

操船要員の海兵セーラー(クラス)

そして攻撃要員である魔法、弓兵アーチャー銃兵ガンナー系職だ。


今回の冒険から加わった葉月の友達もいる。


「分かってるな!?

 お前らが惨めにゴブリンと遊んでるのが可哀想だと十太郎が仲間に入れたんだ!


 私らは、ペットの犬じゃない!

 十分な働きをしなきゃ、新入りは、認められないよ!

 金をかけた甲斐があったと思わせる働きをしな!!」


「はいッ!」

「はいッ!」

「はいッ!」


瑠偉が仕切っているグループは、運動部特有の団結力を見せる。

十太郎やジョーたちのグループ、地上組と全く違う。

ピリピリした空気と有無を言わせぬ序列を重視する気骨があった。


演説が終わると行動が開始された。

11隻の船がゆっくりと敵軍に向かう。


「………といっても。

 実際に戦うのは、初めてだし…。」


瑠偉は、難しい顔で地上のシャディザール軍を見下ろした。

彼女自身、何の確証もない。


「………来ますね。」


瑠偉の隣で渡辺が双眼鏡を覗きながらいった。

ブラジル系の彼女の黒いねじれた髪が風で靡いている。


彼女が見ている先には、敵の《P(フェニックス)ライダー》が見える。

敵飛行部隊は、一斉にこちらの船団に襲い掛かった。


「ほあーっ!」

「いやあああ!!」

「かかれー!!」


真紅の翼を羽搏かせ、大鷹が船上の瑠偉たちの頭上に舞い降りる。

騎上の戦士たちの振り上げた剣が銀色に輝いた。

死の直線を描いて剣が向かってくる。


「射落とせーッ!!」


対する船上からは、矢が撃ち返され、空を覆った。


「撃ち方始めーッ!!

 それぞれの判断で撃ち続けろッ!!」


船倉には、十二分に矢を準備している。

肘が悲鳴をあげるまで弓兵たちは、休まずに応戦できるはずだ。


「落せ!」


甲板に転がる敵兵を西岡クランの《セーラー》がガレオン船から落した。

サバンナの赤茶けた大地に敵兵が大の字になって倒れる。


騎士剣とカトラスがぶつかり、飛矢が大鷹を追う。

10分ほど冒険者と傭兵軍の戦いが空で繰り広げられた。


「終わりか?」


瑠偉がサーベルを払って血飛沫を落す。

注意深く周囲を見渡す。


戦闘は、あっという間に終わった。

嘘のようだった。


船上には、敵に混じって新入りたちの死体が転がっている。

被害は、予想通りだが戦闘自体は、呆気ないほど短い。


「もう終わりか?

 もう敵は、来ないのか?」


瑠偉が渡辺に訊く。

向こうも拍子抜けしたように答えた。


「終わり終わり!」


船尾甲板クォーターデッキで双眼鏡を覗く渡辺が答える。

瑠偉は、その返事を聞くと息を吸い込んだ。


「地上軍への攻撃に切り替えろ!!」


瑠偉が号令を出す。

頭上でサーベルを振り回した。


すぐさま全てのガレー船が動き出した。


手当たり次第に石を落し、縄で地上に降りて白兵戦を挑む。

弩弓砲バリスタや投石機にも落石攻撃が加えられた。

攻城兵器などの目立つ物は、ガレー船の衝角で破壊した。


「うわー!」

「倒れるー!」

「ぎゃあああ!!」


シャディザール軍の兵士たちが叫んだ。

運んで来た攻城塔が三段櫂船に潰される。


「ブリザードフォール!!」


北村先生が広範囲に攻撃魔法をかける。

他の魔法職も次々に大技を繰り出した。


敵軍は、大損害だ。




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