スマホ会議
十太郎が家に帰ると義姉が友達が家の前で話していた。
「こんにちわー…。」
十太郎が挨拶すると甲高い悲鳴みたいな声が帰ってくる。
「キャー、これが義理の弟くん!?」
「可愛い!!」
「美形ぇッ!!」
女子大生たちの手が十太郎の顔を撫でる。
あっという間に囲まれてしまった。
義姉の友達の目が座っている。
メスが激しく発情したトロけた顔。
すっかりこの場にいる彼女たちの頭の中は、スケベな事しかなくなった。
「………。」
十太郎は、欲望に晒されるのは、好きではなかった。
ただ他に他人に与えられる愛情の形を知らないのだ。
しかも彼にとってそれは、容易く与えることができ、しかも大いに喜ばれる。
「そういえば…。」
友達を帰した後、義姉がふと十太郎に言った。
「鬼山剛三郎って知ってる?」
「ウチの先生だけど?」
十太郎が答えると義姉は、何か考えていた。
冷蔵庫から出した麦茶をコップに注ぎながらエアコンを着ける。
「………鬼山。
珍しい苗字だし、そうそういないよねえ。」
十太郎は、嫌な予感がした。
あの鬼山先生のことだ。
学校の外でも女を次々に食いまくってるに違いない。
まさか義姉も?
じゃあ、先生と自分は、同じ女を…。
(うえっ。)
夜桜が込み上げてくるものを抑えた。
十太郎も同意見だ。
「ねえ。
まさか鬼山先生とエッチした友達がいるの?」
十太郎がそう訊くと義姉は、肩をすくめた。
「さあ?
でも友達のバイト先で女食いまくってるヤリチンが居て。
そいつが鬼山っていうらしいの。」
「鬼山………。」
先生の兄弟とか親戚だろうか。
「いくつぐらい?」
十太郎が義姉に訊くが向こうも要領を得ない。
あくまで友達からの又聞きなのだ。
「さあ?
でも高校生ぐらいなんじゃないかな。」
「高校…。」
鬼山先生は、確か30代。
幾ら何でも高校生の息子や弟がいるような年齢じゃない。
だが夜桜の見解は、違った。
(テメー、あの体育教師を舐めてるんじゃねえの?
そのまさかってことよ。)
(高校生の息子ォ?
仮に先生が35歳でも二十の子供だよ。)
大学に通っている真っ最中じゃないか。
もちろん先生は、男だから妊娠するのは、彼女か奥さんだろうけど。
そんなことをやっているとスマホにメッセージが入る。
綾瀬からだ。
「うん?」
十太郎は、スマホを開いた。
綾瀬からのメッセージの内容は、こうだ。
「話を聞いた。
ノルドヘイムから手を引けって?」
そこに龍外が割り込んでくる。
「おーほっほっほっほっほ。
シャディザールの王様が何を言おうと関係ありませんわ。
小銭を稼ぐために下らぬやり取りを…。」
と今回の議題に反対していた。
「断固、無視して探索を進めなさいな。」
だが綾瀬は、龍外の意見を突っぱねる。
「はっはっはっは。
俺は、そう思わん。」
「何ですって?」
「退くのは、金目当てじゃない。
現地民と戦争になるようなことはしたくない。
王様の指示に従って戦えというのならそうするさ。」
アフギル公の依頼は、ノルドヘイムへの攻撃だった。
だが状況次第では、逆に敵を刺激するなということもあるだろう。
「反対!」
綾瀬クランの高橋だ。
「ここまで来て下がれない!」
「そうだ!」
「ヤダヤダブー!」
綾瀬クランの他のメンバーも否定的だ。
この件に関して綾瀬とクランの意見は、真っ向から割れていた。
「あらら…。」
十太郎も困った。
流石に他所のクランに口出しはできない。
「もっと大局的に物事を見てみろ。」
ジョーがそういった。
「戦争になるのは嫌!」
「慎重に。」
「やめろって。」
西岡クランのメンバーたちのメッセージが並ぶ。
こちらは、ノルドヘイムから綾瀬たちに手を引くよう主張する。
だが綾瀬クランにしてみれば自分たちの妨害をされた訳だ。
引き下がるという決断は、引き出し難い。
「はあ?
私らがノルドヘイムを探索してるの。
あんたらの意見は、関係ないね!!」
綾瀬クランの高本がいった。
高橋もそれに続く。
「お前らだって拠点を捨てろって言われたら。
はい~わかりました~って答える?
バーカじゃないの。」
反論の余地はない。
しかしこれでは、綾瀬が困るのは、目に見えていた。
「西岡ボーイ。
まったくお手上げだ。」
「う~ん。
俺からは、何とも言えないなァ。」
十太郎も困ってしまう。
「久我は?」
そう十太郎がメッセージを打つ。
しばらくして久我のメッセージが返って来た。
「ちょっと会話を止めて貰ってええ?
余は、耳で全部、聞いとるでなァ。」
久我の注文により皆のメッセージが途絶える。
ややあって久我のメッセージが送られて来た。
「アホちゃうか!
王様のいう通りにしたらそれだけで金も貰えてええやんか。
相手に敵視されてまで我を通すメリットあるんか!?
何も全面的に冒険者を服従させるところまで行ってへんやん。
ちょっと一度、いう事聞いてやりいな。」
久我の意見に各クランのメンバーは、沈黙した。
ここは、各リーダーの判断を見るべきと感じ取ったのだろう。
「徳川も雌伏の時期を耐えて雄飛の機を待った家柄…。
一度の譲歩もやむを得ない場合もありますわね。」
と綾瀬。
当然、龍外が怒った。
「ちょっと!
それは、予のつもり!?
何勝手に徳川の家柄を語っていますの!?」
「はっはっはっはっは!
きっと徳川ガールは、そう言ってくれると思ったが?」
綾瀬がそう言って揶揄った。
だがその主張は、明らかだ。
まだ些細なやり取りだが現地民の有力者と争いたくない。
それを皆にも納得して欲しかったのだろう。
「でも綾瀬クランの皆の意見も無視できない。
ここまで探索してシャディザールの公の介入を認める?」
十太郎がそうメッセージを送る。
綾瀬の答えは、シンプルだった。
「どうしても不服があればお前と一緒にパランディスに回るよ。
西岡ボーイは、俺たちを追い返したりしないだろ?」




