表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第3話「出て行け!西岡十太郎!!」
9/213

再合流




十太郎は、スマホを確認する。

朝の7時だ。


高本がぐずり出したところまで覚えている。

宿の主がチェックアウトと言っていたから朝9時ぐらい。

それから20時間以上、経っている…。


二人の顔を見られそうにない。

十太郎は、メモだけ残して退散することにした。

いっそ嫌われて距離を置かれた方がマシだ。


(ひゃっひゃっ、心配すんなよ。

 10代の女の子の性欲舐めてるな?)


(お前は一度、自分以外の人間の物差しを持て!)


十太郎は、肩を怒らせて部屋を出た。

もう何も食べずに外に出る。


しかしこれからどうしよう。

今更だがノープランで仲間を探すのは、厳しい。

そんなこと悩むまでもなく20分もすれば向こうから接触があった。


「岩戸クランの西岡十太郎(とおたろう)だな?」


学ランとブレザーの男女が8人。

全員、無手───武器は、持っていない。

が、魔法を使えば非武装とはいえない。


十太郎じゅうたろうだけど。」


十太郎が訂正すると声をかけた男子が頭を下げた。


「失礼。

 情報に誤りがあったようで。」


「当ててやろうか?

 PKヘヴン。」


十太郎が人差し指を上に立てて言った。

相手の反応は、鈍い。


「Lv14の《プリースト》。

 大きな戦力を前に手を出さない理由がないんでね。」


最初の男子とは、別の男子がそう言った。

その包み隠さない物言い。

如才ある態度が気に食わない。


「断る。

 いくら所属してるクランがない状態でもお前らの誘いは受けない。」


十太郎が即答した。


「じゃあ、死ね。」


交渉は決裂した。

PKヘヴンの女子が前に飛び出し、ナイフを突き出した。


それを十太郎は、まともに受け、肩から血が溢れた。

敵は、一斉に襲い掛かって来る。


「速いッ!!」


この動き、《ニンジャ》だ。

多くのクランは、《ニンジャ》を仲間にしていない。


《ニンジャ》の機動力は、優れているが攻撃力が低い。

火力不足になると自然と戦闘に時間がかかる。

砂嵐や水補給など時間的制約のあるサバンナの移動に、これは致命的だ。


岩戸は、広い範囲を調べさせるのに《ニンジャ》が有用と考えたこともあった。

しかし結局、どれだけ速く移動しても敵に出くわすと時間を食ってしまう。

それで《ニンジャ》の起用を見送った。


だが対人ということなら《ニンジャ》で十分だ。

しかも8対1で圧倒的に有利。


「はははは!

 やれ、やれ!!」


PVヘヴンの8人は、十太郎で遊んでいる。

こいつらは、別に求道者でも戦闘狂でもない。

単なる嫌がらせ中毒患者ジャンキーだ。


「カッコつけるから強いかと思ったじゃねえか!

 死んでくれよぉ~!!」


PKヘヴンの連中は、十太郎を細切れにしていく。

素早い動きで翻弄し、四方からズタズタにした。


(よお、十太郎。

 これは、私が代わった方が良いか?)


夜桜は、楽しそうに声をかけて来た。

トラブルが大好きな奴だ。


(ああ、頼む!!)


切羽詰まって十太郎が答えると夜桜は、大笑いする。


(ひゃっひゃっひゃっひゃ!

 少しは、出来るようになったと思えば情けねえなァ!

 最初ハナから私頼みでカッコだけ着けやがって!!)


まったく言われたい放題だ。

やられたい放題で返す言葉もない。


だが夜桜の返事は、十太郎の予想と違った。


(別に私が正体を明かすまでのこともないだろ。)


(え!?)


ここで死ねっていうのか?

十太郎の背筋が凍り付いた。


(お、俺は、平気でも…。

 お前は、こっちで死んだらどうなるか分からないぞ!?)


必死になる十太郎に益々、夜桜は、楽しそうに笑った。


(ひゃっひゃっ、違う。

 違うんだ。)


夜桜が笑う間に事態が急変した。

矢が飛んできてPKヘヴンの連中を追い払う。


「ぐえ!?

 ………矢だと…!!」


「し、しまった!

 岩戸クランを追放されたというのは、デマか!!」


「俺たちを罠に!?」


「うう…!!

 に、逃げろー!!」


PKヘヴンの連中は、散り散りに逃げた。

全員が同じ方向に逃げ、一網打尽になる事を避けるためだ。

こいつらも考えているらしい。


「た、助かった……。」


大急ぎで傷を回復魔法で塞ぐ。

こういう時、《プリースト》で良かったと思う。


「探したよ。」


そう言って現れたのは、藤田だ。

今、敵を射貫いた弓を肩に背負って歩いてくる。


「ふ、藤田さん…?」


十太郎は、驚いて自分の目を疑った。


岩戸クランのメンバー、藤田がここにいることも驚きだ。

しかしジョーも一緒にいる。


「ジョー?」


「間に合って良かった。

 日頃の行いだな。」


ジョーは、そう言って笑う。


一度別れた仲間がピンチにやってくる。

普通なら感動のシーンだが十太郎は、困惑した。


「あの…。」


恐れながらとジョーに声をかける。

しかし十太郎の質問を遮って二人が先にネタばらしを始めた。


「細川クランが教えてくれた。

 西岡君は、タナスルという街に向かったって。」


と藤田。


「私がシャディザールで岩戸クランに会いに行った。

 お前を探しにね。」


とジョー。


「まあ、色々あったけどお前と一緒にまたやりたいと思ってね。

 岩戸クランにいるって聞いたのに除籍されたって聞かされて。」


なるほど。

1日遅れて追って来た彼女たちは、今、到着した訳だ。


ジョーの後ろには、知らない顔がある。

一人は、よく見ればゾンビだ。


「ぱああああああああああああああ!!!」


十太郎は、朝の街で絶叫した。


「ごめんなさい。

 私、《ゾンビ》だけど人間なんです。」


ゾンビの女子がそう言って十太郎を落ち着かせようとした。

しかし青紫の顔、崩れた身体は、どう見ても怖い。


「あ、ご、ゴメン!!

 に、人間っていうか職業クラスなんだ…。」


混乱する十太郎にジョーが仲間を紹介する。


「《ゾンビ》の牧野まきのルンル。」


やや小柄な女子でボレロの制服の下にビキニアーマーを来ている。


「《ソードマン》の高坂こうさか天村あまむら。」


がっしりした物理職らしい体型で如何にもといった気の強い顔をしている。

背中に大剣を背負っていて、これが得物か。


「《ホプリタイ》の浦島うらしま月愛ルナ

 《ナイト》の晴海はるみ綺羅羅きらら。」


ギャル二人が手を振る。

大きな丸い盾(ホプロン)を持っているのが浦島。

幅広い盾(カイトシールド)を持っているのが晴海。


「あれ?

 結城ゆうきは…?」


十太郎は、結城壮馬(そうま)が居ないことに気付いた。

ジョーが苦笑いして手を振る。


「あいつは、死んだよ。

 ここに来るまでに。」


ここで死んでも現実世界で死ぬ訳じゃない。

次にこっちに来るまで”お休み(デス・ペナルティ)”を貰うだけだ。


「じゃあ、西岡君。

 新しい仲間とこれからも頑張って。」


藤田がそう言って6人から離れる。


「一人で帰れるの?」


十太郎が声をかけると藤田が少し驚いた様子で


「じゃあ、送ってくれる?」


と訊いて来た。

しかしそこでジョーが口を挟む。


「ちょっと待って。

 十太郎、私らには、行くところがあるんだ。」


「ああ、別に目的地があるんだ。」


確かにそうなるだろうと十太郎も気が付く。


でも藤田も心配だ。

自分を追い出したクランのメンバーだが、やはり元仲間だ。


「藤田さんが気になるけど…。」


「お人よしだね。

 私のことは、もう良いから。」


藤田は、それだけ言って十太郎と別れた。

彼女一人でシャディザールに戻れるんだろうか?


「心配だな。」


十太郎が呟くとジョーが呆れたように肩に手を置いて言った。


「あんたね。

 自分を追い出した連中の心配するとか、見栄張り過ぎだよ。」


他の皆にも諭され、十太郎は、納得させられた。

もう彼女とは、仲間じゃない。

これを区切りにしないと。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ