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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第5話『祈れ!苦しめ!朽ちて滅びろ!忘れられた月の秘密!!』
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還御




約2時間後。

十太郎が夜桜たちと合流する。


「………。」


十太郎は、赤面し、こっそりと壁から姿を現した。

3人は、詰まらない授業に懸命に耐えていたような顔を一斉に向ける。


「長いぞ。

 殺されたかと思ったぜ。」


前田が恐ろしいモノを見る目で十太郎を見た。


「まさか本当に悪魔と契約できたんですの?」


徳川は、侮蔑を隠そうともしない。


「済んだんなら、ちゃっちゃと帰ろうぜ。

 2時間も楽しみやがって。」


夜桜がそう言っておっぱいの裏側を手で掻いた。

前田は、初々しい表情で恥ずかしそうに目を逸らした。


「とりあえず夜桜は、戻って来いよ。」


十太郎がそう言うと夜桜は、彼の口の中に吸い込まれて行った。

まるで煙を掃除機が吸い込むように一直線に夜桜が飲み込まれる。


意外なことに前田も徳川も驚きはしなかった。

既に十太郎がごく普通の高校生とは、若干違うと認めているからだ。

何が起ころうと驚くに値しない。


少なくとも二人が一体化していることは、前田と徳川にとって合点がいった。

常に感じていた違和感は、そこから生じていたのだと。


「では、お前たち3人を地上に連れ帰ろう。

 私の手を取るが良い。」


ニッサがそう言って両手を伸ばした。

前田と徳川が、その手を取る。

十太郎は、別のサッキュバスたちが運ぶ。


どこから集まったのか。

30人ほどのサッキュバスが姿を見せ、十太郎にかしずいている。

まるで王様に家来が従うように。


「西岡十太郎。

 伯も爵位を得たようね。

 きみの臣民は、厭らしい夜の民のようですけど。」


といって徳川がせせら笑う。


「はあ。

 じゃあ、これからは、龍外と呼んでも良いのかな?」


十太郎が龍外にそう言うと彼女は、


「淫魔の王配、西岡十太郎に徳川龍外が拝謁の栄誉を賜りますわ。」


といってうやうやしい礼を返した。


「……ふん!」


最後に不愉快そうに鼻を鳴らすのを忘れなかったが。


「なあ。」


前田が十太郎に声をかけた。


「これって《弥終いやはて》に行けるんじゃないか?」


「《弥終》?」


十太郎が目を丸くした。

これまで聞いたことのない言葉だ。


「アグィーッパスの連中が話していたらしい。

 平らな大地の終わりがあるとな。」


「それがこの《いど》のゴールってこと?」


そう十太郎が訊くとサッキュバスから手を放し、前田が腕組みした。


「ゴールになるのかは、分らん。

 だが月から地上に戻るにしろだ。

 どうせなら、自由な場所を選んでも良いんじゃないか?」


「馬鹿なことを仰らないで。

 誰も知らない、仲間もいない場所に降りるですって?

 そんなの死にますわよ。」


龍外がそう言って睨んだ。

確かに馬鹿げた提案ではある。


「でも、興味深い。」


十太郎は、夜桜と相談する。


(どう思う?)


(ああ~。

 私は、反対だな。)


意外にも夜桜は、消極的だ。

というより、これまでも積極的に十太郎に協力することはなかった。

彼女としては、あまり十太郎に手を貸すつもりはないらしい。


(その気になれば私が地の果てまでジャンプで行けるかも知れない。

 けど、それで皆の遊びを邪魔するのはねえ?

 ………テメーの実力でやりくりするなら私も賛成するけど。)


「そうだね。

 でも、それは、他に手がない時にするのはどうだろう?」


そう十太郎が前田に提案した。


もちろんこの提案に前田が従う必要はない。

彼もサッキュバスと契約し、黄金の蜂蜜酒を準備すればいい。


「まあ、そうだな。

 ここは、じゅーたるーの意見が正しい。」


そう前田は、答えた。


「だがいつか俺たち以外も、この方法を見つけるだろうぜ。

 きっと誰かが使うだろう。

 それは、どう思う?」


「う~ん、良いんじゃない?

 俺たちの目的は、《弥終》だとしても途中の冒険なんだしさ。」


十太郎がそう言うとこれ以上の議論は、差し止められた。


詰まるところ、この方法は、あまりに面白くない。

前田も龍外も興味深いが試す気にならなかった。

それにこれほど簡単に大きな成果が得られるとも思えない。


ただ何か事態に急変があれば解決策として覚えておく。

その程度の手段だと3人は、考えたのだ。


「もう良いだろう?

 このまま待っていても月は、《弥終》に着くがな。」


そうニッサが再び手を伸ばした。

彼女の言う通り月は、信じられない速さで平らな大地の上を西に進んでいる。

約12時間で数十万kmを横断し、大地の裏を通って東に出るのだ。


3人は、サッキュバスたちに掴まる。

するとサッキュバスの身体に変質が始まった。

彼女らのコウモリの翼が幅200mほどの大きさに広がる。


「うわ!?」


十太郎をはじめ、前田と龍外も驚いた。

だが考えてみれば不思議なことでもない。

星々の世界を渡るのだから強力な翼が必要だ。


「これらの翼は、宇宙空間でしか働かない。

 エーテルを掴むことに特化した翼なのでな。

 何より惑星上には、重力や大気があって、これほど大きな翼は使えぬ。」


そうニッサが鬱陶しそうに言った。

まだ月の引力圏だからだろう。

翼がとんでもなく重いのだ。


しかし一度ひとたび、月から飛び立つとサッキュバスは、閃光の速さを見せた。

あっという間に地上が目の前に近づき、3人は目を丸くした。


ふわりと空中で停止し、サッキュバスたちが翼を縮める。

そして地上に全員が降り立った。


「も、漏らしそうですわ……。」


龍外がサバンナの乾いた土の上で四つん這いになった。

膝がガクガクと震えている。


「お、俺も…!!!」


前田も尻餅をついた。


「………ここは?」


十太郎がニッサに訊ねた。


「シャディザールだ。

 ほら。」


ニッサがそう言ってシャディザールの方角を指差した。

くしてあの猥雑で巨大な犯罪都市がそこにあった。


「……あの街に降りると面倒だろうと思った。

 今、お前の仲間を呼びに行かせている。」


ニッサは、そう言って翼を畳んだ。

他のサッキュバスたちも酒場の踊り子に姿を変えていた。


「二人は、どうする?」


「予は、帰りますわ。

 ………ある意味で貴重な情報を手に入れましたし。」


龍外は、そう言って背を向けた。

そのまま、テクテクと歩いて二人と別れた。


前田は、ずっと最初の場所で座っていた。


「俺は、別に仲間とここで合流するぞ。」


「うん。

 じゃあ、一緒に待とうか。」


十太郎は、前田の隣に座り込んだ。


西の空に月がまだぼんやりと浮かんでいる。

さっきまであそこに居て、今はここにいるのが信じられなかった。




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