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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第5話『祈れ!苦しめ!朽ちて滅びろ!忘れられた月の秘密!!』
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浮上




さっきまで登って来たゲルガ宮殿にもう一回、挑戦するのは、面倒だった。

その上、月のゲルガ宮殿は、地上の物と同じではなかった。


まず中の構造は、異なっている。

住み着いているサッキュバスも強力な物に入れ替わっていた。


しかし夜桜にとってそんなことは関係ない。


「ちッ。

 面倒だから…。」


夜桜は、重力操作で全員を浮かせる。

ダンジョンを律儀に攻略する必要はない。

一気に宮殿の最上部までまとめて移動してしまうつもりだ。


「………ッ!」


これには、徳川も流石に青褪めた。

地面から浮き上がると不安そうに足を動かす。


「うおおお!!!

 これ、空を飛ぶ魔法か!?」


前田が空中を泳ぎながら叫んだ。

もう何度も宙返りしている。


「………まあね。」


夜桜は、面倒くさそうに答えてから怒った。


「あのさっ!

 動かれるとコントロールが乱れるんだよね!!」


「ハイ、ゴメンナサイ…。」


前田がそう言って直立不動の態勢を取る。




一同は、宮殿の塔から突き出した露台バルコニーに着地する。


「うおおお……。

 ここまで一気に飛んで来たのか。」


前田が露台から周りの景色を見渡した。


とにかく今、夜桜について質問するのは、禁止だ。

でなければあれやこれやと前に進めない。


「………あ、ああ…。」


徳川の様子がおかしい。


「………え?」


十太郎が近づくと異臭が漂っていた。


「………。」


あの夜桜も目を丸くして言葉を失う。

前田は、見たこともない表情を作った。


この場に険悪な空気が流れる。

しばらく誰もが言葉を失った。


「わ………ぐ。

 徳川は、三方ヶ原の戦いで浜松城に退しりぞく神君家康公がく………。」


徳川が何か言いそうになったのを十太郎が慌てて制した。


「うわああ!!

 言わなくて良いから!!」


徳川が言いたかったのは、


「家康が糞を漏らして凶事より逃れた家柄。」


といった所だろう。

夜桜と前田は、複雑な表情で徳川から目線を逸らしている。


「にし…おか君。

 さっきから何を見てますの?」


徳川が涙を堪えながらいった。

十太郎は、魔法の袋から水筒やら何やらを準備している。


「えっ!?

 だって手を貸した方が良いかと思って……。」


そう言われて徳川は、目を回した。

このような恥辱を味わったことがかつてないのだ。


だが神君家康がこの恥辱に耐えたのだと自分に言い聞かせる。

※家康が糞を漏らしたのは、後世の創作と言われるが。


「お下がりなさい!!

 予は、これぐらい一人で始末を着けます!!」


徳川は、そう言って喚いた。

仕方なく3人は、徳川から離れる。




ややあって徳川が皆に合流する。

その顔は、まだ怒りと恥ずかしさで震えていた。


「予ともあろう者が…。

 伯等あなたがたの前で粗相をしたことを深く詫びますわ。」


やっとのことで徳川は、そう言った。

3人が一斉に彼女を慰める。


「ひゃひゃひゃ…。

 まあ、空飛ぶのが初めてなら誰でもチビるって。」


そう夜桜が笑って誤魔化す。


「すべては、血の通った人間の証!!!

 気にするな!!!」


前田は、何か悟ったようなことを言ってみる。


「いー…。

 家康も漏らしたんだし、平気だよ。

 そうだよね?」


十太郎は、笑いを堪えつつ懸命に真剣な表情を保った。

しかしこの言葉は、徳川に響いたらしい。


「そそそ、そうですわっ!

 神君家康公も糞を漏らしたお人!!

 予のみならず誰にもある失敗ですわ!!」


そう言って十太郎の両手を握り締めた。

涙の後で目が血走っている。


「覚えておきますわ、西岡十太郎!!

 伯が漏らした時は、予の名誉に誓って伯を護り通して差し上げますわ!!」


「は、はいー。」


十太郎が恥ずかしそうに苦笑する。

できればそんなことには、なりたくないし徳川にフォローして欲しくもなかった。


「ちィッ。

 ああ、もう良いだろ?

 それより中に進むぜ。」


夜桜は、飽きて来たらしい。

イライラしながら足で扉を破壊した。


「うおっ!?」


前田がその破壊力に目を見張る。

金属製で両開きの窓扉そうひが壊れ、部屋の奥に散らばった。




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