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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第5話『祈れ!苦しめ!朽ちて滅びろ!忘れられた月の秘密!!』
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攀じ登る




「まず装備を整えねえか!!!」


前田がそう言って道具を取り出した。


「これがフックガン!

 チェーンフックとか他にも色々な呼び名がある。」


話ながら前田が十太郎に手渡して見せた。

細い鎖の先に鉤爪が着いていて壁や崖に張り付けそうだ。


「これで壁を?」


「ああ!!!

 《ディガー》たちが地下鉱山の縦穴を移動するのに使う!!!」


相変わらずの大声で前田が説明してくれた。

十太郎は、耳を抑えたくなるのを我慢する。


「まあ、見ての通り、分かり易い道具だ!!!

 壁や崖みたいな移動したい所を狙ってフックを発射する!!!

 後は、ウインチみたいに引っ張ってくれる!!!


 こういう道具を準備しないでダンジョンに挑むのが間違いなんだ!!!

 これだけで移動できる範囲が全く変わって来るからなァ!!!」


「偉そうに言うな、左衛門左ァ。

 お前も最近、知ったばかりだろう?」


黒神龍がそう言った。


「西岡ァ。

 左衛門左は、コイツを知ってお前に会いに来たんだ。

 こうやって自慢してやろうと思ったんだな。」


黒神龍がそういって揶揄うと前田も鼻を鳴らした。


「ふん!!!

 教えてやったんじゃないかい!!!」


十太郎も徳川も疲れた顔でそろって笑った。

本当に声がデカくて心臓に悪いな。


「次にライト妖精!!!」


前田が取り出したのは、眩しく光る使い魔だ。

羽の生えた小人の姿をしている。


「広~~~く照らすことも!!!

 遠~~~くを照らすことだって出来る!!!

 まさに冒険の必需品だな!!!」


「便利なものがあるんだね。」


十太郎は、素直に感心している。

朝田は、ちょっと困っていた。


「こんなに道具があると《ニンジャ》って何なんだろう。

 ほとんど私のスキルが代用できちゃう……。」




道具を整えて前田クランの選抜メンバーと合流する。

全員、190cm前後の巨体だ。

男女とも、レスラーとか相撲部ばかりだ。


「荒井は、知ってるな!?」


前田が十太郎に荒井ミリアを紹介する。

確か以前にも見た顔だ。


「どうも。」


十太郎が頭をぺこりと下げた。


「ハッキリ言ってデカ過ぎて邪魔かも知れんな!!!」


前田が自分で言った。

彼の仲間たちも大笑いする。


探索が始まった。


巨人たちがゲルガ宮殿を進軍する。

もはやサッキュバスが可愛そうに見えてきた。

巨大な身体から繰り出される攻撃は、ほっそりしたサッキュバスを軽々と吹き飛ばす。


「がっはははははは!!!

 いいぞ、戦えーッ!!!」


前田の振りかぶった戦斧は、細い雑草のようにサッキュバスの身体を圧し折る。

真っ赤な血を飛ばしながら死体が飛んでいった。


「続けぇぇぇ!!!」


快進撃を続ける前田は、楽しそうだ。

後ろの十太郎たちは、何もしていない。


「………これ、前田君たちだけで良かったんじゃない?」


他の皆も棒立ちしている。


「おっと!!!

 そこにトラップがあるぞ!!!」


前田は、朝田の見つけたトラップも記憶している。

スマホの地図にあったマーカーで覚えたのだ。


「すごいな、前田君…。

 あの地図を完全に覚えてるみたい。」


十太郎は、嫌そうにいった。

憎らしいほどの優秀さだ。

自分が惨めになる。


「おい!!!」


素早く前田が振り返った。

凄い勢いで十太郎の前に走って来る。


「左衛門左と呼んでくれよォ。

 親愛の証としてな!!!」


「は、はい。」


巨人を見上げて十太郎が青褪めながら答える。

すると前田は、満足そうにニヤリと笑ってみせた。


「俺もお前も十太郎って呼ぶからなァァァ!?」


「どどど…どうぞー。」


耳が千切れそうになりながら十太郎は、返事をする。

ほとんど聞き取れない。


「うん?

 ここか、ジュチ!?」


前田がそう言って吹き抜けから身を乗り出す。

黒神龍がスマホで確認した。


「ああ、ここだ左衛門左ァ。

 ここを攀じ登れば未踏破の区画に移動できるはずだ。」


「がっはっはっはっはっは!!!

 では、行こうか!!!」


そう言うと前田は、巨体を宙に放り出し、信じられない身軽さで上に登る。

十太郎たちも徳川も目を丸くした。

あっという間の出来事だ。


「あら。

 ……やっぱり運動神経は、凄いのね。」


驚いた徳川は、手を口元に当てた。


「つ、次、誰が行く……?」


宇多田が十太郎に訊く。

もちろん十太郎も徳川も目が泳いでいる。

その間に黒神龍が行き、前田クランのメンバーが次々に登って行く。


が。


「あー!!」


一人、滑落した。

あっという間に闇の中に姿を消す。

最後に湿った音が魔宮に反響した。


十太郎たちが一斉に縮み上がる。


「こ、ここ、怖いって!!」


清水が座り込む。

聖羅は、逆に自分を奮い立たせた。


「い、行くしかない!!」


聖羅が前田たちに続き、フロアの吹き抜けに飛び出した。

ブーツを履いた白い脚が十太郎たちの視界から消える。

壁を攀じ登って上のフロアに無事、上がったらしい。


「こういうのは、《ニンジャマスター》の特技なんじゃ?」


十太郎は、そういって朝田の顔を見た。

彼女は、目をパチパチさせて後ろに下がる。


「そ、それは……。

 そうですけどリーダー…。」


「何やってる!?」


前田の声がする。

早く来いと急かしているようだった。


「もう、分かりましたわ。

 お退きなさい、予が参ります。」


徳川が吹き抜けに身を乗り出そうとする。

しかし途中で止まった。


「何を見てますの!?」


振り返って徳川が言った。


「え?」


十太郎は、キョトンとしている。

なので徳川は、余計に苛立って怒鳴った。


「気が利きませんわね!

 支えなさい!!」


「ア、ハイ。」


十太郎は、恐る恐る徳川の腰を触る。


「なんですの、そのイヤらしい触り方は!?」


徳川が騒いだ。


「だいたいそんな恐る恐るで予が落ちたら助けられますの!?

 もっとしっかりと支えなさい!!」


「ア、ハイ。」


十太郎は、徳川のお尻を押し上げる。

続けて徳川が足を十太郎の肩に置いた。


十太郎が徳川を支え、その間に彼女も壁を這い登る。

やがて二本の脚が見えなくなった。


「早くなさい!!

 予をこれ以上、待たせますの!?」


自分が登った途端、徳川が大声で催促する。

十太郎たちは、困ったように顔を見合わせた。


そんなこんなで壁一つ攀じ登るのに大変な苦労をした。

だがこれは、本番の始まりに過ぎなかった。




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