再編成
放課後。
十太郎は、《窖》に移動する。
冒険は、前回の終わりシャディザールで再開された。
「ねえ。
CCした感じはどう?」
ルンルが朝田に訊いた。
朝田は、自分の身体を見渡す。
「ええ?
う~ん……。
特に今は、何も感じませんけど?」
「やっぱり?
私は、《ゾンビ》から《コープスキング》になって、こう……。
体の芯が熱くなる感じがあったんだけど?」
ルンルは、そう言って両手を握り締めた。
やはり彼女の場合は、他の職業と事情が違うんだろう。
「須山さんたちの話だとCCするためにガレオン船でこっちに来てるって。」
十太郎がスマホを見ながら言った。
《窖》では、SNSや電話は通じないがこちらに来る前のメッセージは、確認できる。
「とりあえず4人では、厳しいからあと2人追加しよう。」
「そうだね。」
シャディザールだけでも転職神殿は、135ヶ所ある。
何万人もの冒険者が押し寄せるのだからそうもなるだろう。
普段は、現地民が他の神を崇める場となっている。
そのためここでは、行儀の悪い行いは、許されない。
即時、神官の配下である警護兵の御用となる。
十太郎が指定された場所に向かうと女子たちが待っていた。
皆、大きく手を振って十太郎を呼ぶ。
「十太郎ー!!」
「じゅーたるー!!」
「リーダー!!」
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《!》Topics
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戦士・騎士系
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牧野ルンル
クラス:『キングコープス』 Lv24
高坂天村
クラス:『ソードマスター』 Lv21
田尻千奈
クラス:『ビーストマスター』 Lv12
秋上聖羅
クラス:『ヴァルキリー』 Lv14
海田円香
クラス:『フェニックスマスター』 Lv12
朝田美里
クラス:『ニンジャマスター』 Lv12
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重装系
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岸川瀬奈
クラス:『カタフラクト』 Lv12
中村セシル
クラス:『アーマーガンナー』 Lv12
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海兵系
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須山瑠偉
クラス:『パイレーツ』 Lv12
渡辺メエル
クラス:『パイレーツ』 Lv12
浜田莉理
クラス:『パイレーツ』 Lv12
井上結乃
クラス:『ヴァイキング』 Lv12
清水豊後守
クラス:『セーラー』 Lv11
宇多田夏鈴
クラス:『セーラー』 Lv10
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銃兵・弓兵系
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(15)
クラス:『ホースアーチャー』 Lv12
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魔法・僧侶系
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西岡十太郎
クラス:『ハイプリースト』 Lv17
小川恵梨香
クラス:『ハイマージ』 Lv11
清武愛瑠
クラス:『ダークプリースト』 Lv11
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「これだけレベルが上がったってことは、大変だったね。
襲撃がずっと続いたって聞いたけど。」
十太郎は、皆をねぎらった。
この場にいない者には、まだ後で声をかけることになるだろう。
「なーに。
こっちは、任せて!!」
と瑠偉は、にっこり笑って拳を作った。
カトラスと銃が彼女の腰に吊るされている。
剣と銃を扱い、操船スキルを持つ戦士。
これが《パイレーツ》だ。
「で?
ゲルガ宮殿の攻略に?
まだまだ戦力が要るって?」
瑠偉は、そう言って十太郎に話を切り出す。
それを見ていた莉理が表情を曇らせた。
「不味いな……。」
瑠偉は、上の命令には、絶対に服従する。
かなり無茶があっても口答えしない。
彼女は、それで良いが周囲には、重い仕事が回ってくる。
もちろんそれに対して彼女も責任を果たす。
その場だけ良い顔をする訳ではない。
自分にも他人にも厳しい。
だが、それでもキツイものはキツイ。
「愛瑠さんと聖羅さん?
ちょっとこっちに入って貰えるかな。」
十太郎がそう言うと二人が顔を出した。
「それに前回で死んで経験値に差がついた…。
宇多田さんと清水さん。」
こちらも呼ばれた二人が気まずそうに前に出る。
この二人は、まだ《セーラー》のままだ。
「えうえう!?
ちょっとじゅーたるーストップ、ストップ!!」
莉理が両手で×を作った。
「こんなに引き抜かれたらこっちの戦力が落ちると思うんだけど!?」
「十太郎が要るって言うんだから。
十太郎のいう通りに!」
瑠偉がそう言って莉理の尻っぺたを軽く叩いた。
でも十太郎は、困ったように苦笑いする。
「いや、そこも考えたよ。
ルンルと天村は、そちらに合流して。」
十太郎がそう言って二人を瑠偉のグループに合流させる。
これで2つのグループの戦力のバランスを取る訳だ。
瑠偉のグループは、胸をなでおろした。
「須山さん。
じゃあ、ジョーと協力して拠点を守ってね。」
「うん。」
「新しい《ディガー》と《ベアラー》に着いても考えるけど。
……ちょっと俺、今は、考え付かないかな。」
十太郎が本音の不安を吐露した。
入りたいという五月蠅は、ウンザリするほど出てくる。
だがこれといった決め手もない。
あの中から有望で信頼できる人間を選ぶのは、難しそうだった。
「別に十太郎のやりたいように。」
瑠偉は、そう言って十太郎にキスした。
他の女子も一斉に群がってくる。
「あー!」
「ちょっとー!」
「こっちも!!」
意見とメンバーを交換するだけだったのに。
キスから始まって集団セクハラ、17Pの超大乱交になった。
「愛瑠さんッ!
もも、もう回復しなくて良いからッ!!」
十太郎は、逃げるように女の子たちから離れる。
───天村は、こういう場に混ざらない。
「はあ、はあ、はあ…。
須山さん、もう終わり!!
終わりだから全員、出発!!」
十太郎が裸の女子たちに言った。
皆、まだ名残惜しそうにしている。
「良いじゃん。
朝まで付き合ってよ。」
瑠偉は、そう言って十太郎に胸を押し付けて腕を絡める。
十太郎は、その腕を振り払って指で廊下の先を差した。
「んんん!!
リーダー命令!!」
「じゃ、出発します。」
瑠偉は、残念そうに皆を連れてガレオン船に戻る。
船は、誰かにイタズラされないよう上空に隠れている。
雲の上は、空気も薄く人が乗っている状態で飛行できない。
あくまで船を敵から隠す時だけだ。
スマホの操作でガレオン船の高度を下げる。
瑠偉を先頭に皆、乗船してシャディザールを離れた。
「あーっ。
馬鹿みたい。
ダンジョンに行く前に疲れてどうするんだよ。」
十太郎は、そう言って頭を抱えた。
結局、探索に残ったメンバーは、そのまま干し肉食べて就寝する。
酷い1日目だった。
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《!》Topics
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西岡十太郎
クラス:『ハイプリースト』 Lv17
秋上聖羅
クラス:『ヴァルキリー』 Lv14
朝田美里
クラス:『ニンジャマスター』 Lv12
清武愛瑠
クラス:『ダークプリースト』 Lv11
清水豊後守
クラス:『セーラー』 Lv11
宇多田夏鈴
クラス:『セーラー』 Lv10
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戦力調整もあったが新入りと慣れるためにメンバーを入れ替えた。
十太郎は、顔と名前を一致させる。
(えーっと………。
あっちの背が高い子が秋上聖羅。
確か……バレー部かバスケ部。
背の低いピンク髪の子が愛瑠さん。
《パイレーツ》の二人…。
清水さんは、黒い髪でポニーテール。
宇多田さんが金髪のツインテールっと。)
エッチまでしてるのに顔と名前を確認するほどまだ親しくない。
「じゃあ、出発しようか。」
「あッ。
リーダー、お客さんです!」
朝田がそう言って宿屋のロビーに十太郎を引っ張って行く。
今回は、綾瀬だ。
「よお。」
「綾瀬君。」
綾瀬は、肩を揺らして苦笑いした。
「はっはっはっは…。
まるでゾウの大群だぞ?」
「ゾウの?」
十太郎は、目を丸くした。
綾瀬は、咳払いする。
「補給に戻ったんだが、すぐにお前の居場所が分かったぞ。
騒がしいからゾウの大群みたいにどこにいるかが分かる。」
「ええ?
ああ、大人数で移動してるからかな。」
「まあ、人数もあるが…。
あれだけ女の子。
それも派手な巨乳ギャルばっかりゾロゾロしてたら、そら目立つぜ。」
綾瀬は、そう言って笑った。
十太郎も頭を掻いて苦笑いするしかない。
「ははは…。
目立つつもりはなかったんだけどな。」
「なんであんなに女に手を出す?
俺が………だから分からないのか?」
綾瀬が真面目に訊いた。
言葉に出さなかった部分は、”同性愛”だったのだろう。
「いくら普通の男が女好きでも限度があるだろう。」
「………俺は、異常だ。」
短く十太郎は、ゾッとする顔でそう言った。
それは、夜桜の顔ではなかった。
十太郎自身のもの。
十太郎の内に沁みついた孤独や悲しみ、捻じ曲がった愛情への渇望。
強烈な飢えが彼の内側から噴き上がった。
孤独。
飢餓状態の人間が止め処なく食べて、吐き、悶え、苦しむ。
そういった状態に似ていた。
本人にも欲望が抑制できないのだ。
その感情は、感受性に豊かな綾瀬にも伝わった。
「心配だよ。」
綾瀬は、それ以上、何も言う事が出来なかった。
彼の十太郎への感情は、納まる先がない。
「ありがとう。
………綾瀬君は、俺の親友だ。」
「止めろ、ボーイ。
親友に親友なんていうもんじゃないぜ。」
そう言って綾瀬は、低く笑う。
それでも十太郎は、前言を取り下げなかった。
「いいや。
口にして軽々しくなるのは、分かる。
でも俺には、どれだけ他人に感情を吐き出しても足らないんだ。
ずっと………ここに抑え込んで来た分が。」
思った以上に闇が深い。
そう綾瀬も十太郎自身も驚いた。
闇は、どれだけ凝視しても見えることはない。
どんな光を照らしても闇は、決して計ることができない。
ただそこにある。
「じゃあな。
ところで、今ここで何してる?」
綾瀬が立ち去り際に訊ねた。
「ゲルガ宮殿って知ってる?
あそこを探索してるんだ。」
「………ああ。」
話を聞いて綾瀬も思い出した。
岩戸がモンスターが出るので近寄らなかった街の中心にある旧市街だ。
「とにかく敵だけ多くて成果の無さそうな場所だったぞ。
まあ、それは、西岡ボーイも知ってるだろうけど。」
当然だ。
同じ、岩戸クランだったのだから。
「うん。
でも誰も完全に探索してないからね。
何か、成果があるかも知れない。」
「そうか。
お前は、仲間に別行動させてるからか。
その間に他の活動も多面的に展開できるって訳だな。」
綾瀬は、そう言って感心したように頷いた。
「協力することは?」
「そっちの情報が欲しい。」
十太郎は、そう言って金貨の袋を出した。
何枚か金貨を出す。
もちろん二つのクランにとってこれは、形だけのモノだ。
だが何もやり取りしないのは、信が置けない。
「西岡ボーイたちが南を探索する間、俺は、北を目指した。
やはり120kmぐらい北進するとノルドヘイムという土地に出た。」
丁度、東京から日光辺りの距離だ。
「北方の丘…。
割と分かり易い名前だね。」
「そうだな。
いかにも雪ステージって感じのエリアだ。」
「砂漠地帯からたった120kmで雪か。
ははは、ちょっと滅茶苦茶だね。」
十太郎が笑うと綾瀬も困った顔をする。
「オイオイ。
嘘じゃないんだぜ。」
「いや、信じるけど。
それでもこの世界は、現実とやっぱり違うんだなって。」
十太郎もそう言って立ち上がった。
「そろそろ俺もゲルガ宮殿に行く。
まだ何も見つかってないけど。」
「じゃあ、お互いに上手くやろう。」
そう言って二人は、別れた。




