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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第5話『祈れ!苦しめ!朽ちて滅びろ!忘れられた月の秘密!!』
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方針




今回の冒険の4日目。

西岡クランのガレオン船は、シャディザールに到着した。


ガレオン船の点検・補修のため細川第20砦へ入渠。

十太郎たちも下船した。


「う~ん…!

 下船って言っても何もすることないんだよなァ。」


葉月がそう言って背を伸ばした。


「うっわ!

 あの子、お乳でっか!!」


近くで誰かの声がした。

細川クランの連中が葉月の豊満な肢体に熱い視線を送っている。

葉月だけでなく女子全員を盗み見るために人だかりができた。


「あれが西岡クラン…。」

「やっべえ、皆かわいい子しか居ねえ~。」

()っちゃ胸大きい子ばっか!」


ガレオン船の入渠作業に関係ない奴らまで集まってくる。

皆、さもしい性欲にぎらつく目を隠そうともしない。


「うおお…ヤリてえ!」

「俺なら、あんなん一発で孕ますわ。」

「へっへっへ…!」


見物に来た上、聞くに堪えない私語は、西岡クランのメンバーを不快にさせた。

誰も止めず、まるで見世物のようにされているのも気に入らない。


「ああッ!!

 なんか用か、テメーら!!」


突然、この場に雷が落ちたような怒声が響く。

夜桜だった。


一斉に見物に来た細川クランの男共が縮み上がる。

作業に関係ない連中は、あっという間に逃げ出していった。


「ったく。」


夜桜は、馬鹿どもを睨みながら両手を腰についた。

慌ててこの砦を預かっている責任者らしい男子が走って来る。


本田ほんだ和彦かずひこです。

 西岡君ですね?」


といって本田は、結城に声をかけた。


西岡クランのリーダーは、男。

これしか聞いていなければ二択で十太郎を選ぶ人間は、少ない。

何も知らない初対面なら結城がリーダーだと誰もが思う。


結城は、少年漫画の主人公っぽい見た目をしている。

対する十太郎は、どう見ても集合イラストの端っこに立っている僧侶キャラだ。

小柄だし、身体が薄い。


「ええっ?

 ああ、違う違う。

 西岡君は、あっち。」


といって結城は、十太郎を指差した。


「ご、ごめんなさい。

 ………貴方が西岡君でしたか。

 俺がこの砦の責任者です。」


本田は、慌てて十太郎に挨拶した。


「ははは…。

 どうも、お世話になります。」


十太郎は、極めてにこやかに挨拶した。

しかしすぐに夜桜が出てくる。


「関係ない男共がウチのクランの女共を見物に来てるぞ。

 咎めないのは、お前も容認してるからか?」


「ああ…ッ。

 ず、すぐにィッ!

 すぐに注意します!!

 二度と、ここ…こんなことがないようにィ…ッ!!」


凄まじい威圧感に本田は、震え上がる。

今すぐにこの場を逃げ出そうと十太郎に背を向けた。


「また怖がらせちゃった…。」


十太郎は、肩を落とす。

結城が適当に慰めた。


「まあまあ…。

 注意しただけなんだし、当然だよ。」


「そうだよ。

 悪いのは、あっちじゃん!」


葉月がそういって十太郎にしがみついた。




岩戸クランが明確な方針を定めぬ今、他のクランは、初めて独自に動く時が来た。

これまでは、岩戸を真似て追従していれば良かったからだ。


「色々意見があるけど…。

 ………クランを3つに分けて活動しようと思う。」


十太郎は、方針を発表する。


27人も居ればそういう事も出来るだろう。

あるいは、まだまだ加入者を募ることも考えられる。


「まずシャディザールの探索。」


「シャディザールの?」


ジョーが訊いた。

十太郎は、少し自信なさそうに答える。


「岩戸がずっと言ってたことがあるんだ。

 シャディザール自体がレガシーダンジョンなんじゃないかって。」


「レガシーダンジョン?」


と瑠偉。

彼女の周りに座っている《セーラー》たちも顔を見合わせた。

答えを与えたのは、北村先生だ。


()()()のダンジョンってことね。」


「じゅーらいがた?」


「要するに《スケロスの窖》自体が大きな一つのダンジョン。

 開放型の冒険の舞台(オープンワールド)だとすれば。

 密閉された立体型の舞台ステージってことじゃない?


 上のフロアか下のフロアにあるゴールを目指すステージ。

 いわゆる迷宮ダンジョンなんじゃない?」


北村先生がそう解説するとあちこちでざわめきが広がった。


「はあ…。

 精鋭だけを送り込むってこと?」


「じゃあ、十太郎とジョーと葉月ぐらい?」

天村あまむらさんも入るんじゃないかな?」


「物理職だけで固まり過ぎてるでしょ。

 アリス先生も当然、入ってるんじゃない?」


「トイレしたら臭そー。」

「やっとダンジョンって言葉が出たよ。」

「お前、メタ発言すんな。」


「他の子たちはー?」

「皆でそろってお留守番。」

「全員で突っ込もうぜー!」


特に円香だけが他人事という顔をしていた。

《Pライダー》が密閉された迷宮に呼ばれることはない。


「絶対、私には関係ないな。」


「ははは…。」


隣にいたルンルが苦笑いする。

だが十太郎の発言は、ルンルにとって悪い発表だった。


「岩戸は、シャディザールにモンスターが出没する地区があることを知ってた。

 この中心の旧市街がダンジョンになってると考えてたみたいだ。

 あいつは、西進すること以外に関心がなかったから手を出さなかった。


 ここに俺とルンル、朝田さん、天村に行って貰おうと思う。」


「ええ…っ!?」


ルンルが驚いてカエルのように目を剥いて口を開けた。

頭の上の《コープスキング》の王冠がずり落ちている。


「ルンルは、ゾンビだしトラップがあっても死なない。

 朝田さんは、《ニンジャ》だからこういう場所の探索に向いてると思う。

 天村は、単純に戦闘力からいって一番強いと思う。


 そこに俺も回復役として着いて行く。

 外に残った皆は、北村先生とジョーと須山さんに任せます。」


この決定に悲喜こもごもの反応が起こる。

大半は、罠の死に役を押し付けられたルンルへの同情だ。


「ううー!

 こんな役、嫌ぁ。」


「だってあんただけ死なないし…。」

「そうそう死なないし。」

「まあ、死なないから…。」


「うえええ…!?」


ルンルは、項垂うなだれるがこれも不死者アンデット系の役目と諦めた。

《キングコープス》Lv24で戦力的にも十分に主力と言える。

これも死んでもすぐに参戦できるからだ。


「あの…っ。

 理由は分かりますけど私、まだLv8ですよ?」


当然、朝田が難色を示した。

シャディザールのレベル帯は、Lv12~15だろう。

きっとシャディザールのダンジョンもそれを下回ることはない。


「安心しろ。

 守ってやる。」


そう天村が即答した。

彼女は、常に簡明かつ端的である。


「えーっと。

 話を先に進めます。」


十太郎が場を静めた。

まだ2つ方針を発表する前だ。

ここでダレていてはいけない。


「次にパランディスの探索です。」


シャディザールから西に100km。

そこにダイナリック山系がそびえている。

要するに行き止まりだ。


8千mを超えるエヴェレスト級の山々が連なり、白く凍て付く世界だ。

到底、高校生が突破できるようなものではない。


それこそ平地の何倍もの人と時を費やし、ルート探索することになる。

第一、乗り越えたとしても先にまだ山がある可能性も(ゼロ)ではない。


またタクラマカン砂漠のような不毛の地が広がっていることもありうる。

タリム盆地は、ヒマラヤ造山運動に伴って形成された地形である。


いど》がスケロスの作った世界だとしても自然現象があっても不思議はない。

ダイナリック山系が出来た時、付近に荒涼とした砂漠が形成される。

それは、むしろ予想される最悪の結末だ。


つまりダイナリック山系を越えることは、ほとんど実りのない選択肢である。


そこで取り得る選択肢は、二つしかない。

端的に言えば北か南に進路を取ることである。


十太郎たちが手に入れたガレオン船。

その船内に残されたスマホには、パランディスという地域が示されていた。

これは、ダイナリック山系を避けて南に下る進路である。


岩戸クランを追放された十太郎は、この至パランディス路を求めた。

スマホで場所は、示されていたが途中に補給地点はない。


シャディザール、カズラク、ペシュカネル。

これら以外にも小さな農村は、点々としている。

しかしこれらには、冒険者を受け入れる余裕がない。


彼ら自身が食べていくだけの農地と家畜しかいないからだ。

幾ら金貨を積んでもとても売るだけの備蓄がない。

そもそも近づくことも嫌がられる始末だ。


結果、こういった集落と戦闘に入る愚かなクランも出現している。


ある意味では、ペレ=アッコンを破壊した十太郎もそれに近い。

しかしその行為が持つ目的が雲泥の差だ。


「パランディスに至る道を探すことは、目下として先に進む唯一の手立てです。

 ダイナリック山系を越えることは、非現実的に過ぎる選択だと思います。」


十太郎の言葉に古参組が納得した。

というかあの巨大な氷の世界に突入しなくて済んだと喜んでいる。

内心、とてもじゃないが嫌だったのだ。


「うひーっ。

 良かったー。」


葉月が苦笑いする。

結城も同じ顔だ。


「あんな山ん中に行ったら死んじまうぞ。」


「………まあ、ないよね。」


と月愛も綺羅羅にいった。

向こうも同じように大きく頷く。


「ああ。

 ああ…。

 ああっ。」


綺羅羅は、あの氷の世界に関する記憶を葬り去りたい気持ちでいっぱいだ。

二度とごめんだ。

見たくもない。


十太郎が話を進める。


「同時に俺たちも拠点の建設に乗り出そうと思ってます。」


これは、意外な反応を引き出した。

誰もが賛同することはできない。


「はあ?

 細川クランに頼ればいいじゃない!」


と瑠偉。

他の《セーラー》5人も追従する。


「いや、細川クランを過信したら危険だと思う。」


そう答えたのは、綺羅羅だ。

ただここで十太郎と北村先生が割って入って仲裁する。


「待って!

 言い争いしないで。」


「はーい!

 十太郎に注目、注目!!」


と北村先生が手を叩いた。

一斉に騒ぎが鎮まる。


「まず問題は、食べ物です!

 細川クランも目下、この問題に着手しました。

 干し肉や干し果物だけでは、お腹を壊します!


 栄養バランスとかは、考えなくても良いと思うんだけど。

 今後、ストレス緩和とか食料の購入費用を抑える意味でも自給自足。

 これは、無視して通れないと思います。」


地域経済への影響までは、十太郎は、責任を感じなかった。

冒険者が食べ物を買い占めてどうこうなっても自分たちには関係ない。

そこまで面倒を見られない。


実際、細川頼母も自分の政策の妥当性を主張するためでしかないだろう。


「サバイバル要素、カットして良くなぁい?」


間延びする声で田尻たしりが言った。

瑠偉も賛成する。


「ホント。

 農業したきゃ、家の畑でも手伝えって。」


「まあ、良いじゃん。

 私らは、操船要員だから関係ないよ。」


と渡辺が肩を揺する。


「とりあえず街の商人は、かなりぼったくってるしさ。

 武器や道具を自作できればかなり楽だよ。」


《アルケミスト》の赤城あかぎレネ。

ほぼフリーの冒険者でポーションなどの作製に携わっていた。


異世界での冒険に否定的ではなかったが戦闘に向かない性格だと自認。

他の高校生と取引していたのだがSNSでの呼びかけで西岡クランに参加した。


「といっても私は、《アルケミスト》だからね。

 武器を実際に作るのは、《スミス》―――鍛冶屋なんだけど。」


「なにそれ?」


葉月が目を丸くして訊いた。


「非戦闘系の職業クラスは、おおまかに3つの役割ごとに別れてる。


 鉱石を掘ったり建物を建設ビルドする《ディガー》。

 ポーションと金属の製錬までを担当する《アルケミスト》。

 武器の専門職である《スミス》。」


「それ、一つで良くない?」


と葉月。

しかしレネは、静かに答える。


「そんなことしたら私らが過労死する。

 それはできませ~んって断わるには、都合がいいの。

 やらされる身としては、ね。」


それは、確かに切なる本音だろう。

なんでもできる万能屋でもてはやされるのはなろう主人公だけだ。

ただの高校生に背負い切れる仕事量ではない。


「それは、私も同感…。」


門脇かどわき美波みなみ

《ディガー》Lv8で細川クランの下請けみたいなクランから離脱した。


「えーっと。

 《アルケミスト》と《ディガー》は、いるから。

 あとは、《スミス》を見つけないとダメーか。」


葉月がレネと門脇の顔を順に見て言った。

ジョーも顎を撫でながら目を細める。


「《スミス》か…。

 装備を安く手に入れられるのなら是非に仲間に欲しいな。

 特に銃弾は……いや、私だけの問題じゃないか。」


と言って捕らぬ狸の皮算用を始める。


「はい、そこまで。」


再び北村先生が仕切る。

一同、正面の十太郎に向き直った。


「パランディス方面は、皆に任せます。

 これは、今後の冒険の基礎となることなので。

 割と真剣に取り組んで欲しいんですけど…。」


と十太郎は、だんだん声が小さくなっていった。

ややこしい仕事を皆に押し付けた自覚があるからだ。


「ここで、あんたが畏まってどうするの。」


月愛が言った。

他の声も続く。


「そうそう。」

「十太郎がリーダーなんだよ。」

「チンポデカいぞー。」


ミーティングは、解散となった。

この後、皆でめちゃくちゃセックスした。




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