未来の横綱
十太郎が目を覚ました。
教室には、葉月と北村先生がいる。
「………心配だな。」
十太郎が呟く。
天龍寺の言ったように8日目で冒険が終了した。
前田の暴走を紳士同盟は、どう対処すべきだろう。
「先生と葉月の方は?」
二人は、綾瀬クランと共に探索に出ていた。
「何かあったの?」
葉月は、十太郎の方が気になる。
北村先生が十太郎の問いに答えた。
「小ダンジョンっていう神殿や祠について分かって来た。
私たちがガレオン船を見つけたカラトン神殿みたいな場所。
ああいうのがあちこちにあるみたい。」
「ねえ!!」
葉月が十太郎に抱き着く。
目一杯甘え、媚びを浮かべて身体を摺り寄せる。
「葉月…ちょっと待ってて。
じゃあ、先生たちは、収穫があったんですね。」
「ええ。
魔法の剣とか呪文とか。
店では手に入らない戦力が結構…。」
そこまで話したところで北村先生も気になる。
例の戦争のことだ。
何か進展があったのだろうか。
「十太郎。
私も戦争の話題が知りたいんだけど。」
そういって北村先生が抜け駆けに十太郎にキスした。
葉月がカエルみたいに目を丸くして口を開けている。
「前田左衛門左ってデカい男子のクランが勝手に戦い始めた。
……岩戸は、怒ってたけど、このまま流れで全面戦争だろうね。」
十太郎が話す隙に北村先生の手がズボンに向かう。
それを素早く十太郎が払い除けた。
「おっとォ!」
「ああんっ!」
翌日。
まるで社長秘書のように鳩巣が葉月と一緒に十太郎を迎える。
愛人2号、3号だな。
「おはよー!」
「おはようごぜーまーす。」
十太郎は、葉月にキスした。
鳩巣は、恒例のように報告に移る。
コイツも何が楽しいんだが…。
「前田左衛門左。
開山高校の男子相撲部に所属。
小学校時代から頭角を見せ、あの筋では、未来の横綱と…。」
「スポーツ推薦か。」
「いいえ。
開山高校には、普通に入ってます。」
鳩巣の報告に十太郎は、思わず噴き出した。
「ええ!?
開山高校は、日本一の進学校だろォ!?」
「前田の両親は、大学教授。
兄も優秀な柔道選手で今は、学者だそうです。
親族には、オリンピアンも……。」
鳩巣のスマホには、個人情報がズラッと並ぶ。
どれも他人が羨むようなモノばかりだ。
輝かしい前田の家族の経歴には、目がくらむ。
「スポーツ医学の研究者…。
じゃあ、エリート中のエリートってこと?」
「前田弾正教授と未来教授の研究成果。
………ということでしょうね。」
鳩巣がスマホをスクロールする。
息子と同じく強気そうな両親が笑顔で並んでいる。
だがそんなことより十太郎は、ただ羨ましく思った。
十太郎にとって二親が強烈に羨ましい感情は、抑えられない。
「………そんなに親が恋しい?」
鳩巣が意外な質問を投げて来た。
十太郎も驚く。
「そりゃ。
子供を殴るような親もいるけど…。」
十太郎は、鳩巣の問いかけにそれなりの含みを察した。
家族が普遍的な価値を持たないことは分かる。
これは、誰もが正直に言わないが否定できない事実だ。
家族を誇りに思う者もいるが憎む者もいる。
当然だ。
「私は、好き!!」
葉月がいった。
「葉月ちゃんは、普通だねえ。」
鳩巣がそう言って肘で葉月の超爆乳を突いた。




