前田クラン
その頃、シャディザール近郊。
「げはははははは!!!
いいぞ、戦え!!!」
220cmの巨漢、前田左衛門左が暴れる。
彼にとってレベルも能力値も問題ではない。
腕の長さが、リーチが違い過ぎる。
「げう!?」
「ぎゃん!」
「うわあッ!!」
まるで大人と子供の戦いだった。
PKヘヴンのメンバーは、次々に挽肉にされる。
「前田左衛門左。
将来の横綱と謳われる大器。
………お前らに勝てるわけがないねえ。」
前田に劣らぬ巨女が彼の戦いぶりを観戦しながら言った。
荒井ミリア。
前田クランのメンバーで彼の右腕と称せる戦士である。
「な、なんだ…。
この化け物共は…!!」
前田、荒井の両名が鋼鉄の壁となってPKヘヴンを蹴散らす。
その後ろには、3人の《プリースト》が控えている。
万全の回復体勢だ。
《バーサーカー》2名、《プリースト》3名、《ベアラー》2名。
これが前田クランの構成だ。
しかも《ベアラー》2名も単なる荷物運びではない。
「うっし、うっし、うっし…。」
190cmの大台に登る長身の男女。
しかも戦闘に加わる。
「《ベアラー》は、荷運びではないのかァ!?」
PKヘヴンたちは、その威容に圧倒される。
今彼らは、たったLv9の《ベアラー》にさえ蹂躙を許していた。
そもそも《ベアラー》は、持久が極端に伸びる職。
これによって大量の荷物を運ぶことができる。
反面、他の能力値を切り捨てる形に設定された。
だが素早さに偏重し、火力不足の《ニンジャ》が対人で有効なのと同じく。
《ベアラー》の攻撃力は、全く歯が立たないものでもない。
まして前田クランの《ベアラー》は、彼が鍛えた。
「レスラー軍団って訳か。」
前田クランに逆に襲撃されたPKヘヴンの小集団のリーダーが呟く。
彼の手には、宝石を鏤めた宝剣が握られている。
「だが、この魔剣スティングに叶うかな!?」
「ほう!!!
糞PKで集めた糞レアアイテムという奴だな!!?」
前田が目を輝かせた。
難敵との衝突こそを彼は、望んでいる。
「馬鹿め!
魔剣のいりょ…ぷぎゃッッ!?」
敵の《ホワイトナイト》Lv18は、一瞬で破砕された。
その威力を生み出したのは、前田の俊足にある。
「大相撲を見ろ!!!
力士は、脚が早えんだ!!!
早え上にデカい奴が負けるかァァァッッッ!!!」
「そ、そんな…。」
敵は、血塗れの顔で立ち上がる。
一発で空き缶のように飛ばされていたことに今、気が付いた。
全身を恐怖が包む。
「あ、ああ……。
あひ!?」
「光栄に思え!!!
未来の横綱の手にかかることを!!!」
前田がリーダーを倒す頃、敵は、壊滅していた。
地面には、血塗れの学生たちが転がっている。
「げはははははは!!!
荒井ィィ、これが開戦の戦よ!!!」
巨大な拳を空に突き上げ、前田が叫んだ。
荒井もその腕に自分の腕を絡める。
「あああ!!
楽しもうぞ!!!」




